もずのわくわく劇場日記 No.19


1998年 5月31日(日) わらびミニ

金蘭嬢に何が起きたのか?! [ステージ編]


次から次へ進んで行くステージを見ながら、私は完全に落ち込んでいた…
今日の香盤では、6人の踊り子さんが出ているのだが、結論から言ってしまえば、そのうちの2人しか、踊りを踊らなかった。一人はトップステージを飾ってくれた某嬢(名前が最後まで分からなかった…)

そしてもう一人は、言わずと知れた金蘭嬢。今までに私が見てきたステージと呼べる物とは明らかにカテゴリーが違っていた。やはり私が来る劇場ではなかった…

金蘭さんはここのステージで踊るのかぁ…しかもよりによって、長らく待ち望んでいた「新作」で…金蘭ファンの私としては、とてもやりきれない思いで、金蘭さんの登場を待つ。

私はステージでのショー?に参加するつもりなど、毛頭無い。ロビーでもあるならそこで時間を潰したかったが、それも出来ない。後はもう目を閉じて仮眠を取る意外にする事はなかった。

夢を見ていたのだろうか…目隠しをされ、四つんばいになり、出口を這いずり回りながら、真っ暗な中で悶絶している。足元はどうやら砂地の様で思うように進めない。それでも必死になって、手探りで出口を探す…起伏に富んだその砂地は、見事に私の足を滑らせ、奈落の底へ転げ落とす。もんどりうって転げた私はヨタヨタと立ち上がり、口の中に入り込んだ砂を吐き出そうとすると、奥歯の間で「ジャリッ!」と音を立てながら、苦い砂の味がした…「もう限界だ!」心の中で強く叫んだ時、天の岩戸は押し開かれた!

「金蘭!」そう場内のアナウンスが聞こえた!私は「ハッ!」と目を開けると、ステージの壁に貼られている鏡に、「アラビアの女」が今、まさに登場する所だった! 「金蘭さんだ!」思わず口に出して言いそうになってしまった。こんなに切ない気持ちで金蘭さんの出番を待っていた事は、かつて無かった事だ。

ただ、ただ嬉しかった。今日は無事に入り口の壁に頭をぶつける事無く、ステージに上がれたようだ。私は「よし、よし!」とうなずきながら手拍子を打つ。そして、金蘭さんは舞台左手の幕からヒヨイ!と頭を出した。私は踊り子さんの登場する袖のすぐ近くにいたので、およそ1mくらいの至近距離で金蘭さんの顔を目の当たりにする事が出来た。

しかし、ひょっこり顔を出した金蘭さんを見た私は、「ふっ!」と息をのみ、固まってしまった…金蘭さんのメーキャップがいつもと感じが違う!そう感じた私は、舞台の中央へ進んで行く金蘭さんの顔をじーっと、見つめてしまった。いつに無く金蘭さんが、美しいのだ!どうしてしまったのだろう…今回の衣裳は、「アラビアの踊り子風」と言えば、おおよそどのような出でたちなのかは、想像出来ると思う。紫のベールを頭から被り、マスクをするように、同じベールで、目の部分だけを出して、鼻と口を隠している。もちろん透けて見える。そして、水色のアラビアンダンシィングウエアー(何じゃそりゃ?)に、金銀の装飾が施されており、靴は履いておらず素足のままだ。マニキュアさえも塗っていない。何とも言い様の無い不思議な感じだったのだが、これがまた良く似合っていた。

BGMの方は取りたててアラビアン風ではなかったが、曲にのせて柔らかくシナを作り、良い感じだ。腕のそよそよとした泳がせ方は、中々堂に入っていて、見ごたえがある。顔の表情がいつもに比べると柔らかく、大袈裟な表情は今日は影をひそめていて、新しい演出なのかと思う。と、書くつもりでいたが、やっぱり二度、三度あの笑い顔がこぼれた(笑い)

割とおとなしめのステージが続いた後は、前回の出し物と似た感じの、タイトでリズミックな激しいダンスを踊る。手拍子にも力がこもる。いつもの生き生きとした金蘭スマイルが爆裂する。踊りを見る事が目的ではないお客達も、ニコニコしながら、手拍子を打つ。これこそ金蘭嬢の本領発揮!と言ったところであろう。

金蘭さんは、お客を乗せるのが、実に上手い。あの手この手のこわざを上手に使いながら、どんなタイプのお客も、金蘭ランドの住人に仕立てあげてしまう。踊りの基本動作がどうのこうのと言うよりも、ライヴな踊り子さんと言った方が、的を得ている。その場その場のお客の雰囲気を上手くつかんで、すぐにそれをレスポンスする。金蘭さん本人は、「私は踊りはあんまり上手くないから…」と、テレ隠しに言って居るのだが、私からすれば、練習で覚えた振り付けを、覚えたまま踊るのでは、何回見ても、いつも同じだからつまらない。舞台は生き物であり、ライヴなのだ。今日見たステージはもう、明日では見られない。出し物が云々ではなく、その人が演じたその時の会場の雰囲気は、その時にしか存在しないのだ…だからこそ私はレポートを書いている意義があるのだと、そんな風に思っているのだが…

おや?話がそれてしまった(不覚!)

そんな事よりも、金蘭さんのステージを見ながら気が付いたのだが、ホントに今日の金蘭さんは、何かが違う…一体何なんだろう…何と言うか、「演じている」と言った気負いが無いと言ったら良いのだろうか、とても自然な感じで、伸び伸びと踊っている。動きがとてもニュートラルな感じなのだ。少なくとも今まで私が見てきた金蘭さんのステージの中でも、こんなにリラックスして踊っている金蘭さんは、見たことがない。とても不思議だ…

ショー自体の構成やまとまりは、3月のシアターラブームの方が、遥かに優れていた。しかし、今日の金蘭さんは、踊る事を本人が一番楽しんでいるように思えてならない。どうした心境の変化だろう。踊り手本人があんなに楽しんでいるのだから、見ているお客が楽しくない筈はない。盛り上がるのも当然の事だろう。そんな事を考えながら見ているうちに、ダンスの時間は終わってしまった。

そしていつものようにポラショーが始る。今日はポラをやるのは金蘭さんだけである。「はーい!こんにちは、金蘭でーす!」と言う声もいつに無くおしとやか?な感じがした。

何だか分からないが、やたらに綺麗になった金蘭さんの姿を、撮らずにはいられない。最初のひとが撮っているうちに、財布から100円玉を5個取り出し、頃合いを見計らって、「他にはいませんか?」の声に合わせて、「はーーーい!」と元気な声で手をあげ、金蘭さんが近づいてくるのを待つ。

なんかドキドキしてしまう…(色々な意味で)早速私の前でしゃがみ込んだ金蘭さんは、カメラを私に渡しながら、不思議そうな顔をして私の事を見つめている…・うぅ!ばれたかな?と思いながらも、何食わぬ顔してカメラを受け取る。そして、金蘭さんは「これがシャッターですけど…」とお決まりのセリフを言う。通常はここで、「どんなポーズにしましょうか?」と言うのが通例なのだが、金蘭さんは私の顔をまじまじと見つめたまま言った。

「ねぇ、貴方とは何処かでお会いしたような気がするんですけれど…誰なんですか?」…私は「どきっ!」としながらも「そ、そうですか?」と、白を切る。すると金蘭さんが続けて言う。「えーっ…どっかで見た顔なんだけどなぁ…」

そう言いながらも、「どんなポーズが良いですか?」と、開脚しようとする。私は慌てて「そ、そのままでいいですよ!そのまま座って、右斜め45度でこっちを見て下さい」と注文をつける。何を思ったのか金蘭さんは、左斜め45度を一度向いた後、すぐに右と左を間違えた事に気づき、ドタバタと向き直そうとしたので、「あっ、そっちでもいいです…」といいながら、カメラのファインダーを覗き込んだ。

ホントを言うと、金蘭さんは右斜め45度、少しうつむいて物思いに更けるような視線をする時が、一番綺麗だったのを、私は踊っている時にチェックしていたのだった。(笑い)
そうしてやっとシャッターを切って、カメラごと金蘭さんに渡すと「ねぇ、誰だっけ…?」と、まだ言っている。もう写真を撮ったので、正体をばらしてもいいかと思ったが、ちょっとした悪戯心から、「さあ…誰なんでしょうね!」

と言い、来る時に買っておいた花束を紙袋からだし、「これどうぞ!」と差し出す。「へぇーっ、ありがとう」と言いながら握手をしてくれた。そして金蘭宛ての手紙をついでに?渡そうとしたのだが、「ねぇ…誰だっけぇ…」とまだ言っているので、「さぁ?」と言いながら、手紙を渡してしまう。すると、もう一度握手してくれて、「だぁあれぇ…?」ときりがないので、サッサと席についてしまった。(笑)

しかし、そのすぐ後に、私の他にも金蘭さんのポラを買わずに、差し入れもせずに、自分の手紙だけを渡している、人がいた。そんな人を見ながら私は、「金蘭さんにメッセージを渡すのなら、ポラぐらい買ってやれよ!」と思いながら、「なんて人だ!」といちべつして無視した。

最後にもう一人のステージがあった後、フィナーレは無いだろうな…と思いつつも、もしかしたらビール販売の時に金蘭さんが出て来るかな?と何となく席に座っていた。そうすると、金髪の人と金蘭さんが、出てきてビールの販売をしていた。ジュース類はまずまずの売れ行きだったが、ビールの方は今一つパッとしなかった。そんな時、中々売れないビールを積極的に販売しようとしている金髪の人へ、突然花束のプレゼントがあった。嬉しがる金髪の人、良く見るとプレゼントを差し出したのは、先程金蘭さんに、差し入れもせずに自分のメッセージだけを手渡した人だった。

私は、彼もまた金蘭ファンの一人だと思っていたのに、金蘭さんの目の前で別の人に花束をプレゼントするなんて、何て言う人だろうと、思った。しかし、「何か買ってよー」と言われて、渋々コーラを買わされていた。そのくらいの事は、してあげても言いんじゃないの?と私は思っていた。それで、私は何か買ってあげたのか?…私はポラ買ったし…花束もあげたし…いーじゃない。

結局、「缶ビールあんまり売れなかったね…」と金蘭さんの声を残し、ビール販売も無事終わった。もう私は2回目のショーを見る気力が全く無かったので、とっとと帰る事にし、カバンをもって席を立ち、バネの重いドアを開け、人で込み合っている踊り場へ出ようとした。その時の事だった。突然、私の事を背中越しに呼び止める者がいた。

「ずいてんさんですね…」

低い声でそう呼ばれた。私は唐突な言葉に狼狽しながら、「ビクッ!」として後ろを振り向いた。「誰だ!こんな所で私の事をずいてん呼ばわりするのは!」そう思いながら、声をかけて来た人の事を見れば、出入りする客を避けながら、必死になって入り口のドアを押さえ込んでいた。

一瞬、あっけに取られて身動きが出来なかった。この人は焦って何をやっているのだ?と不思議に思い、さらに何で私の名前を知っているのだ?と言う疑問が湧いてきた。しかし、知らない人とは関わり合いになりたくないので、無視して帰ろうかと言う考えに傾きかけた時に、中々人の出入りが多くて思うように私の方へ近寄れないその人は、さらに焦って、「話があるから階段の所で待っていて下さい!」と叫んでいた。

いよいよ話が面倒くさい事になって来そうな様子だった。私はどうしょうかなぁ?と迷ったが、彼も何か切羽詰っているような感じがしたので、一体何の話があるのかと、階段の所で言われたように待っていた。

さて、いよいよ私の所へたどり着いた彼は、私に向かって言い放った!

「こんにちは、亀千代と申します…」

私は耳を疑った。「えっ?亀千代さん?…」そう言って、しばし絶句!してしまった。今更説明する事も無いと思うが、「亀千代さん」と言えば、「KinRan's Land」の管理人さんである。私とは同期の桜だ。私は今まで亀千代さんとは、ネットの上で仲良くさせて頂いているが、会ったのは初めての事だった。

ずいてん>「亀千代さん、甲羅はどうしたの?」
亀千代>「今日はじゃまになるから家へ置いて来ました…」
ずいてん>「えっ?あれって、脱着可能なんですか?」
亀千代>「はい、あれを背負って来ると、ここみたいな劇場では、入り口に突っかかってしまって、いちいち横にならないと、中へ入れなくなってしまうんです。(笑)」

そんな会話が…ある訳はない (^^;

やっぱりいくらネットの上では、親しくしていると言っても、実際面と向かってしまうと、何をしゃべれば良いのか言葉が出てこない…イメージしていたよりも若い感じがする。何年か卒業が遅れた大学生といった風だった。(ごめんなさーい!好き勝手な事を言ってまーす!笑)

あの時の人が、亀千代さんだったのなら、理由は良く理解出来る。差し入れはすでにされていると思うし、金蘭さんの目前での他の金髪の人への花束は、本日が楽日であるので、今まで金蘭さんと仲良くしてくれた「お礼」だったのだろう…知らなかったとは言え、大変失礼な事を思ってしまったものだ…お詫びする。

そして、亀千代さんと、どうでも良いような話をしていると、ビール販売の帰りの金蘭さんが出てきた。どうやら私が「ずいてん」だと発覚したのは、私の手紙を見た金蘭さんが、亀千代さんにずいてんが来ていると、指示を出したらしい。(笑い)私はこの時、初めて自然光の中で金蘭さんを見たのだが、やっぱり楚々とした綺麗な人で、後光が差して見えた…と思ったら、金蘭さんは窓を背にして立っていたのだった(笑)

三人で、手短な会話をし、亀千代さんと私はもう帰るので、蕨の駅まで一緒に歩き別々の電車に乗り、わらびの街から立ち去った。金蘭さんはこの後もあの劇場で、今夜遅くまで元気に踊り続け、明日は博多の劇場でお客さんには疲れた顔など見せる事無く、明るく楽しく美しく踊っている事だろう。
あなたには踊り子さん達の笑顔の向こうに、一体何が見えるだろうか…

1998.5.31 わらびミニ劇場にて


【編集後記】

今回の金蘭さんの変りようについて、私なりに考えて見た。簡単な所から言って見ると、まずメーキャップ。ファンデーションの色を明るめの物に変えたのか、そうでなければ、今までよりも丁寧にパフってあるのかもしれない。眉の描き方なども穏やかな円を描くように、自然な感じで仕上がっている。眉の描き方などは、その人の精神状態や性格などが出やすいので、良く見て見ると割と楽しい。

ステージでの金蘭さんは、どんな所でも踊れる所があって、舞台に立てると言う事に感謝しているようだった。自分に与えられた条件の中で、最善の自己表現をしていこうとする前向きな想いがひしひしと伝わってきた。私などはもっと条件の良い場所で踊らせてあげたいと思ったのだが、それは金蘭さんにとっては大した問題では無いようだった。純粋に踊る事が好きで、そしてお客さんも一緒になって、楽しいひとときが過せるならば、それが一番!とでも言いたげなステージを展開していた。

金蘭さんもデビューして、今年で二年目になる。
私が勝手に考えた事だが、デビューしてから一年位は無我夢中で、がむしゃらにやって来たのでは無いだろうか。周囲を見渡せば、踊り上手なお姉さん達の中で、色々と勉強しながら自分なりの踊りのスタイルを作り上げるのに、四苦八苦していた事だと思う。そんな事でバタバタしながらも一生懸命やって来て、ふと気がつくと自分にも追っかけをしてくれるようなファンの人がついてきた。

初めての劇場でも、顔見知りのファンがいたりして、何となく恥ずかしい様な気がするが、ちょっと嬉しかったりもする。そんなファンの中の一人が、HPなどを作ると言い出し、自分には良く分からないが、ファンの熱意に負けて許可を出しては見たものの、自分では自分の事で精いっぱい。HPの事など頭が回らない…そんな目まぐるしい日々があっと言うまに過ぎ、ふと気がつくとデビュー一周年。

それなりに自分の仕事のスタイルがそろそろ出来てきて、少しは自分の周囲の状況にも視野が広がり、色々な事が見えるようになってきた。そりゃぁ苦労もしてるけど、楽しい事だってたくさんあった。そんな風に考えると、やっぱり私はステージで踊れる事が何よりも一番うれしい。ステージに立てる事に喜びを感じる。

金蘭、デビュー二年目。
心身共に充実した日々を過しているのでは無いだろうか。そうしてピュアーな踊り子「金蘭」の今回の一歩前へ進んだ素敵なステージがあったのだと、私にはそう思えてならない。

金蘭さんのホームページ「KinRan's Land」を預かっている番頭の亀千代さんの事も少し触れて見たいと思う。たまたま見た「金蘭」さんのステージでとてもお客さんを大切にする人柄の良い踊り子さんにすっかりハマってしまった亀千代さんもまた、金蘭さんの熱烈なファンのうちのたった一人にしかすぎ無い。

「私はただ金蘭と言う踊り子さんについて、色々な人に知って頂いて、一度でも劇場へ足を運んでもらえれば、もうそれだけて十分です…」

と語る。これもまた純粋な人であり、実際、金蘭さんの事をHPを通じて、PRして来たその功績は計り知れないものがあると私は思っている。この様な場所で書く事は本来良くない事かも知れないが、金蘭さんの黒子となって、影から金蘭さんをサポートする亀千代さんの努力もまた並大抵の事ではない。忙しく仕事をしながらも「金蘭」の行く先々へちゃんと出没し、花を届け、金蘭さんの色々なストレスや精神的なケアにも、親身になって金蘭さんのサポートをしている。それでいながら、亀千代さんは「金蘭」とファンの人達の橋渡しが出来ればそれで良いと語る。

亀千代さんは、金蘭さんにとっても、金蘭ファンの人達にとっても、もはやいなくてはならない存在になっているのだ。私は金蘭さんを応援する時、ほんの少しだけでいいから、亀千代さんのことも応援してあげて欲しいと思っている。是非とも金蘭さんや亀千代さんに励ましのメールを送って欲しい。