もずのわくわく劇場日記 No.24


1998年 7月26日(日) 池袋ミカド

木内雪美さんの花電車ショー


1998年7月26日(日)

新宿ニューアートから19日振りに雪美さんに再開する事が出来た。
しかし、色々あって川崎ロックから駆け付ける事になった。
池袋駅を出た私は初めて行く「池袋ミカド」のありかを探していた。
しかし、それほどの手間暇はかからなかった。
ただ「アイドル館」の看板に目をやり、それを信じて入場した。
さっそく入場料を支払い、中へ入ると上演中のステージでは「白黒ショー」を行っていた。ちょっとめげたのだが、私の知り合いのタンバリンさんがいたので少し落ち着く事が出来た。雪美さんのショーはこれからのようだった。

しばらく立ち見して雪美さんの出てくるのを待っていた。
川崎ロックからここへ来て、ちょっと場違いな所へ来たような…と思いながらステージを見つめていると、やがて雪美さんが出てきた。相変わらず研ぎ澄まされた感性の光るダンスでお客の目をくぎ付けにしている。

出し物的には新宿ニューアートで見たものとほぼ同じものだったが、何度見てももっと見たい ! もっと深く見たい ! と、そんな気持ちにさせてくれるシヨーだ。

ピンクのチャイナドレスで踊る場面が私は一番好きなところだ。
そんな中で、時々雪美さんの目が光る ! 視線がからむ…どうやら立ち見をしている私の事に気がついているらしい。

しかし、そ知らぬ振りで踊りつづける木内雪美。そう言う人なのだ。ダンシィングステージにかける彼女のプロ意識と言うか、情熱と言うものには、決して何者にも踏み込めない神聖な空間を作り出す。
一通りダンシィングステージが終わると、今までのピン ! と張り詰めた雰囲気は消え、微笑と共に気さくなトークで花電車ショーが始まった。

リズミックなBGMに乗せ、雪美さんは両足をポラで言う「M」のポーズで開きながらしゃがみ込み、吹き矢の管を大切な所に押し当てると、管の中にタバコを入れ、「ふっ !」と息むと管の中から勢いよくタバコが飛び出す。

どのくらい飛んだのかと言うと、舞台の上から客席の後ろの壁に当たるまでは軽く飛んだ。雪美さんは管のねらいを私に定め、タバコを飛ばす。

客席を飛び越えて私の顔をめがけてタバコが飛んでくる。
ねらいはまったく持って正確なものだ。

本来は折角飛ばしてくれたタバコなので、受けとって吸うのが礼儀なのだが、私はじめてのことなのでどうして良いのか分からずに、思わずよけてしまった。(苦笑)

そしてそれが終わると、雪美さんは折りたたんだペーパーナフキンに凧糸を縛り付けたものを、鮮やかな手つきでマジシャンの様に、パラパラパラと放物線を描く様に宙に投げると、それを自らの××の中へ押し込んだ。

そしてその凧糸の先に、通称百円ビールと呼ばれる小ぶりの缶ビールを取り出し、プルタブに結わき付け前の方のお客を指名し、「両手でしっかりと持っててね。」と言い2、3歩後ずさりし、凧糸をピン ! と張ると、腰をきっゅっ ! っと後ろへ引く。「プシュッ !」と言う音と共に缶ビールのフタはあいた。

お客達の「やんや」の拍手と歓声が場内に響く。
しかし、そのままでは終わらない。再びビールを持っているお客のところへ歩みより、今あけたプルタブを時計回りに半回転指でひねると、もう一度後ろへ後ずさりし、凧糸をピン ! と張る。そして先ほどと同じ腰つきで「くっ!」っと引くと、見事にプルタプは缶から引き離された。再びお客達の歓声が上がる。雪美さんは「ふふふ…」と言ったわずかな微笑を浮かべ、次の準備へと取りかかる。

赤い小さなおもちゃのバケツを取り出すと、くるりとさかさまにした。
中から現れたのは雪美さんの唇と同じ色をした真っ赤なりんごだった。
それをナフキンで丁寧によく拭き、先ほどの様に、雪美さんがお客を指名し、「人差し指を出してください。」言われるままに怪訝な顔をしながらも、人差し指を差し出すお客。すると雪美さんは、雪美さんの体とつながっている凧糸をその人差し指に4、5回ぐるぐると巻きつけた。

「しっかりと指を握っててね。」と言いながらその場へしゃがみこむと、リンゴを手に持ち凧糸を一回巻きつけ、両脇から両手でリンゴを包み込む様に持つと、それを前へ突き出す様に引っ張る。しずくを垂らしながら凧糸はリンゴの中へ食い込んで行く。

そしてパッ ! ときれいにリンゴは二つに割れた。「おーっ ! 」っとうなるお客達…そして二つに割れたリンゴの3分の1を更に同じように、凧糸を使って割る。

そこからが更に見事な花電車の技が見られる。
ピン ! と張った凧糸を使い、ちょうど一口サイズになったリンゴの片端から凧糸を食い込ませ、くうーっとスムーズに薄く皮を剥く。

その上、ちゃんと芯までも凧糸を使い、取り去る。あっけにとられているお客の口の中へ「はいどうも ! 」と言いながら、カットされたリンゴをくわえさせる。

その間、ほんの数十秒 ! なんとも夢でも見ていたかの如く、鮮やかな流れで事が進んで行く。リンゴを口にくわえさせられたお客が、ふと我に返る間に雪美さんは四角に折りたたまれたナフキンで、丁寧にステージ上を拭き清めていた。

次は更にその凧糸を使い、三角形をしたパーティー用のクラッカーの糸を、三つ束ねそれを自分の体につながっている凧糸に縛り付け、指名したお客に手渡し、客席の後方上の角度に向けて、「そのまま持っててね。」と言いながらやはり後ずさりし、凧糸の緩みを取り、くっ ! と腰を引く。

同時に「パァーン ! 」と言う音と共に、クラッカーは見事にはじけて中から紙のテープが飛び出した。
「はぁーい、どうもありがとうございました ! 」と言う雪美さんに満場の拍手が鳴り響いていた。
私は夢中になって雪美さんの花電車ショーに見入っていた。
ただただ感心するばかりだった。

やっぱり雪美さんはすごい人だった…さらに他の踊り子さんによるステージは続いていたが、私は知り合いのタンバリンさん達と、客席の後ろの壁際で小さな声で談笑していた。しばらくすると、やはり知り合いのタンバリンさんの一人から、「これ、雪美さんからの差し入れなんですが、一人それぞれ一つづつ取って下さい」との事であった。

何だろうと紙袋の中をのぞき込むと、ハンバーガーとウーロン茶が入っていた。私はちょうどお腹が空いていたので、涙を流しながら… ? ありがたく頂いた。しかし、私は踊り子さんに差し入れをした事は今まで何回もあるが、踊り子さんから差し入れを頂いた事は、初めてだった…やっぱり雪美さんはすごい人だ。

二回目の雪美さんの花電車ショーの時、私も雪美さんからご指名頂き、缶ビールとリンゴを体験させてもらったのだが、あの指に巻きつける凧糸は、雪美さんに引っ張られると、かなり指に食い込んで、痛かった。

正直言って、あそこの力って、あんなに強いものだとは思っても見なかった。

その回、「一番最後のリンゴは、やはりあの人に食べてもらいましょうね ! 」と二度目の指名を受けたのだが、二回も指名されている私の事を、他のお客さんは一体なんだと思っただろう…ちなみに雪美さんは良い銘柄のリンゴしかショーには使わないので、雪美さんの剥いてくれるリンゴはおいしい。(笑い)でも、「明日からは安物使うので、おいしいリンゴは今日までですよ」と言っていた。

タバコとリンゴとビールとクラッカーは、劇場側で用意してくれる場合と、実費で用意する場合があるらしいが、私が食べたリンゴはおいしかったので、きっと実費で用意したものであったと思う。