もずのわくわく劇場日記 No.26


1999年 9月12日(日) 浅草ロック座

浅草ロック座日記 細井架奈美・白石千鶴・桜澤まみ・吉井美希


【久しぶりの浅草】

「時間だよ ! 早く起きろ ! ドッカーン !」ケンケンの目覚まし時計が鳴る前にパッチリと目がさめた。いつもの様にメールのチェックをすると、D嬢からのメールが来ていた。レス早〜い♪ と言う事で気分良く一日が始まった。私の今日の浅草ロック座行きには二つの大変重要な意義があった。その一つは、細井架奈美嬢の誕生日のプレゼントをする事だ。日頃お世話になっている架奈美嬢へささやかな物だが、私の気持ちである。 それにもう、前回顔を合わせてから119日も会っていない。毎日写真に語りかけるだけと言うのも辛くなってきていたし・・・やっぱ実物がい〜なぁ〜と言う訳だった。 (苦笑)

そしてもう一つ。 以前、桜澤まみ嬢には 「花束持って応援に行くからね〜♪」と言いながら色々都合が悪くて未だにその約束を果たしていないのを心苦しく思っていたので、今日こそ約束を果たさなくては・・・と言う事だった。やはり約束は守るためにするのだしね。まぁ遅くなっちゃったけどね。

さてっ ! とにかく出陣だ。駅へ行き電車に乗る前に喉が渇いたので、自販機でアクエリアスを買う。紙コップの中にクラッシュアイス、そしてアクエリアスが注がれるタイプのものだった。所が・・・コップを取り出して見ると何か茶色いゴマのような物が4〜5個浮いているではないか ? なんじゃこりゃ ??良く見てみると、それはゴマではなく、茶色い小さなアリだった。 (-_-メ)「アクエリアス in 蟻 フレーバー」 そんなもんあるはずない。多分、エサを求めてジュースの注ぎ口に、たかっていたのだろう。どうしたものか・・・ ┐('〜‘;)┌

もしもそのアリが10匹だったら迷う事無く捨てただろう。がしかし・・・アリは5匹、値段は\110-. 悩んだ末、アリをカップから指で取り出しておいしくアクエリアスを飲み干したのだった。 (苦笑)

JR神田駅まで820円。キップを買い7時35分の電車に飛び乗る。ローカル線なのに、この電車は東京駅直通なのだ。乗り換えなくてすむので大助かりである。それにずっと座ったまま神田の駅まで行けるのも魅力なのだ。 付け加えて隣には綺麗系のおねーさんもいるし・・・神田駅まではしばらく時間がかかるので、バッグからMDを取りだし、B'zのアルバムを聞くことにし、ちょうどそれが聞き終わる頃、神田駅へ到着した。さすがに直通電車は速い。 (^。^)

さてさて、地下鉄へ乗り換える前に朝食を・・・行きつけの立ち食いソバ屋へ入り、山菜うどんを注文した。 350円也。そこを出て次に駅のコンビニへ入り、昼食用のアップルパイ等を買い、ようやく地下鉄の駅へ向かう。浅草までは160円。コインを投入し、キップを買うと 「おっ !」何とおつりが出て来た。160円区間で160円入れて、10円おつり・・・神様からのお恵みなのか・・・とにかくありがたい。

浅草駅へ到着。 駅の階段を登り、「あぁ〜久しぶりの浅草かぁ〜♪」 と、しばし感激にひたろうとした瞬間、後ろから声をかけられた。「人力車乗りませんか (^。^) 」 別に浅草巡りに来たわけではないので丁重にお断りした。 (汗)

ロック座到着 9時36分。さすがに行列は出来ていない。階段を上って行くと、先頭の人から数えて7番目だった。こんなに早い時間にロック座へ来たのは珍しい事だ。 それもこれも「細井架奈美嬢の顔見たさ」からなのだ・・・ピカールで階段の手すりを丹念に磨き上げる従業員さんの仕事に深く感じ入り、しばし時を忘れて見つめる私。 見事にゴールドのきらびやかな輝きが復元され、浅草ロック座にふさわしい仕上がりとなった。

【 謎の女・・・ 】

開館に向けて従業員さん達の仕事が進められていくうちに、表の通りから一人の踊子らしい女がやってくる。一体誰なのだろうか・・・ストレートな赤い髪を肩口の辺りまでなびかせ、黒いサングラスをかけている。口元はキュッと少しとがらせるように結ばれ、「何か文句あんの ?」とでも言いたげな雰囲気を漂わせていた。黒いTシャツにダボッとした感じのキュロット。その裾口からは細く長い脚がのびて、洗練され、引き締まった足首の先には、スニーカーが足先を覆っていた。そんな風貌の女が、ジワリ・ジワリと階段を上がってくる。私はその何とも言えない威圧感のようなものに身動き出来ず、ただ視線を釘付けにされていたのだった。

私に気が付いたのか、その女は黒いサングラスの中から突き刺さるような視線を私に浴びせ掛けてきた。「うっ !」声にならないウメキの様な息を立てそうになり、あわててそれを飲み込んだ。私にはその黒いサングラスの中の眼が、どのような意思を持って動いているものか知る術もなく、「見られるまま・されるまま」 その未知の女にすべてのイニシアチィブを委ねてしまった。・・・無言のまま、サイレントな時間は止まるともなく、流れるともなく、ただ女の黒いサングラスの中へ吸い込まれていた。 ・・・私にはそう思えた。

しかし客観的には、私へ無言の一瞥 (いちべつ) を投げかけたに過ぎなかった。 そして、背中を向け何事も無かったかの如く、さらに彼女は淡々と上の階へ、一歩づつスニーカーに覆われた足を沈める様に登り、やがて私の視界からは消えた。

【 驚愕の囁き 】

重苦しい瞬間の一コマ、一コマが幾重にも重なり、さらにフラッシュバックされ、蝉時雨の如き「しんしん」としたざわめきが、私の耳元にループして鬱陶しくて仕方が無かった。 それと同時に、「あの女は一体誰なんだ ?」脳みその中に出来た空間に、そんな言葉が歪んで乱反射し、出口を捜しているようだ。 その時だった。

「い、今、上へ上って行った女の人は、どなたなんでしょうね ? 」若い男の声で快活な語気は、辺りの鈍重な空気を一度に払拭するものだった。 どうやら私の何人か後ろへ並んでいる男が、この世界の事情にはそれなりに通じている仲間へ、発した問いかけのようだ。 私はその声に無条件で反応してしまった。 「あれは・・・」私は思わず後ろへ振り向いた。

「あれは、細井架奈美サンだよ。ほら、そこに写真のパネルがあるだろう。」その事情通の男が指差した方向には、確かに「細井架奈美」が黒く透き通った瞳をして、誰にでも微笑んでいるパネルが掛かっていた。 その事情通の男は更にウンチクを語る。

「最近の細井サンの人気には、目を見張る物があるな。売り出し中の踊子さんの中でも、ナンバーワンだろうね。踊りの実力もついて来ているし・・・今日の出演者の中でも、オレとしては一押しってところだろうね。」その言葉をダンボのように耳を大きくして聞いていた私は、絶句したあと、一転して込み上げるような 『苦笑』に包まれた。「細井架奈美 あれが ?」 にわかには信じられない。もう一度壁に掛かっているパネルに視線を流した。 「・・・・」 言葉も何も出なかった。

私が知っている「細井架奈美」は、顔がふっくらとして黒い髪が艶やかに揺れるコケティッシュなものだった。 だが最前、私の目の前を横切って行った彼女は、面長な輪郭に赤く染めた髪、「コケティシュ」 と言うよりも何処か「アンニュイ」な感じの仕草に、ネガティブな印象だった。多分、「黒」を基調としたサングラスやシャツの構成、そしてステージでは決して見る事の出来ない真顔であったためだろう。 いずれにせよ119日も会えずにいた時間と距離の重大さを、改めて感じざるおえなかった・・・

【開演 間際 】

とにかく開館時間になり、入場料を払い中へ入った。私は衝撃的な 「細井架奈美」 との再会を果たし、多少動揺してはいたがそんな事よりも、「細井架奈美」のステージが間もなく見られると思うと、その事の方がより、嬉しくてたまらなかった。手放しでワクワク出来るのだ。

さて、椅子取りゲームの時間だ。私の席は・・・おぉ、まだ誰にも占有されていない。盆前、右側、通路を挟んだ角の席。 思えば何年か前、この席に座り、間近で 某嬢のベットショーを初めて見る事が出来た。 まるで夢を見ているような美しい時間だった・・・それ以来、私は観劇にハマった。そして、この席が私の場所になったのだった。

開演まではまだ一時間半もあるので、ロビーへ出た。取りあえず知り合いは居ないようだ。 そして、シゲシゲと香盤表を眺め、今日の予定を組む。「白石千鶴」さんは2番目、「細井架奈美」さんは中トリ。そして「桜澤まみ」さんは後半2番目・・・「細井架奈美」さんへのバースデイプレゼントは・・・一回目の時に渡して、「桜澤まみ」さんへの花束は、取りあえずじっくりと一回目のショーを見てから、ベストタイミングをシュミレーションし、2回目の「細井架奈美」さんを見た後、休憩になるので速攻で外出許可を貰って花屋へ走る。で、愛美さん一回しか見られないのは残念だが、花束を作ってもらったら、立ち見のバーの足元に花束隠して、まみさんのショーを、立ち見しながらシュミレーション通りに、通路を歩いてベット終わりのつなぎで、「はいどうぞ !」  そしたらフィナーレでは近くで架奈美さん見たいから、本舞台の方の席へ移動して、手拍子して盛り上がり、一番最後に架奈美さんに手を振って、じゃぁ〜ねぇ〜♪ と、ロック座を後にする・・・と言うスケジュールに決定 ! 

さて、モーニングコーヒーでも頂く事にするか。と、しばし時間をつぶす事にし、12時10分コンビニで買い込んで置いたアップルパイを座席でパクつく。 すると・・・私のそばでおじさん達の会話が耳に入って来た。

「なぁ〜、もう12時過ぎたのにまだ始らねーの ? 開演遅れてんじゃん。」
「いや、ここは12時30分開演って書いてあったよ。」
「普通12時開演だろう・・・それにしても、9時頃から皆並んでんのなぁ〜オレはビックリしたよ。ヒマなのか何だかしらねーけど、そこまでして席取りたいのかね〜 ? 」

そんな会話を一列前の席に座っていた別のおじさんが会話に割り込んだ。

「みんな素適なショーを近くで見たいんですよ。その為なら何時でも早起きして劇場へ足を運ぶんです。」
「ほぅ〜じゃぁ、あんたも9時から並んでたクチかい ? もしかしてマニア ?」
「マニア・・・そうかもしれないですね。」

「マニア」と呼ばれたそのおじさんは、まんざらでもない様子だった。
開演のブザーが鳴り響いた・・・

【開演】

「吉井美希」さんの場内アナウンスから始まった。幕が開くと数人の踊子さん達が折り重なるように、しも手側に倒れ込んでいた。 そして、透明な円筒形の筒の中に、お馴染みの上下する椅子。その上に、川口真湖さんがしゃがみ込んでいた。 衣装は全員お揃いのブラックレザーのパンツから3センチ位のベルト状の紐を交差するようにからめただけの物で、トップレスになったものだ。倒れ込んでいた踊子達が音楽に合わせて、緊張感のある踊りを舞台狭しと繰り広げ、筒の中ではポーカーフェイスの川口真湖さんが、あえぐように踊っている。 やがて筒の中から抜け出して、ソロベットへと流れて行った。

2景 白石千鶴さんのショーが暗転した本舞台中央、ピンを浴びて始まる。メタリックホワイトのセパレーツの上下にセットの賑やかな冠をかぶり、ホワイトのベールのショールを持っている。相変わらず優雅な身のこなしだ。 ベットでも存分に白石千鶴の世界を作り上げている。 ホレボレしてしまう。 顔や背中に光る汗がまるで全身にオイルを塗ったように、艶やかに照明に映える。

しかし・・・ブリッジを支える左手が切ないほど細くて、思わず手を伸ばして支えてあげたくなる・・・回転する盆の上で、白石千鶴はブロンズ像の様な輝きと共に、芸術的な構図でフイックスしていた。 誰からとも無く盛大な拍手が巻き起こっていた。

余談だが、白石さんのベットの最中事だ。私はいつもの様につぶらな瞳をキラキラさせて、美しくベット演技を演じる白石さんの事を見つめていた。すると白石さんの視線が私に注がれ、思わずドキリとした。 まぁ、良くある話しだとこちらも微笑み返した。だが、2回目の時も再び白石さんから視線を浴びせられる。 今度はさっきよりもずっと長く見つめられた上に、何か私に言いたそうにしている。一体どうしたのだろうか ? 白石さんのステージは前々から良く見てはいたが、特に知り合いではないし、私の事を知っているとは考えにくい・・・うーむ。

あとで架奈美嬢に聞いてみた所、今年の浅草三社祭りの際、ロック座の前で、架奈美嬢に撮ってもらった私の写真を、楽屋でチラリっ ! と見られ、ほんのわずかな時間だったそうだが、白石さんはその「チラッ !」 だけで、かぶりつきに潜んでいた私の事を見破ったらしい。

「発見」→「確認」→「確証」まで一分間の作業だった。 (談/ 白石千鶴 )

だそうだ・・・ そう言う事だったのかと納得した。舞台は進んで5景 細井架奈美の出番だ。出し物はインディアン。 玉虫色のショートなセパレーツの上下に、同系の色の羽根をあしらった被り物。 実際、こんな派手なインディアンはいないが、舞台ならではの物である。一見の価値あり。元気よく舞台の上を跳ね回る様に踊る架奈美。靴は履かずに、はだしで足首に玉虫色の衣装と同じ布を巻いている。 やがて、男役の外人さんが酋長の徴であるひときわ大きく長い羽根の冠を付け、舞台中央の一段高くなった踊場に登場し、音楽が盛り上がった所でフィックスして場面転換ソロベットへと続く。

衣装を着替え、銀のハイヒールを履き、準備が調った所で花道から盆へと進む。 白い羽のショールを羽織り、移動盆の上にすくっ ! と勇ましく立ちポーズのまま、前盆へ到着。そこから架奈美ベットが始まる。かなりセクシーなベット演技だった。ベットが終わり、立ちあがった所でバースデープレゼントの贈呈。子供のように喜ぶ細井架奈美。あんなに喜んでくれるとプレゼントした甲斐があると言うものだ。握手をしてもらって私も大喜び♪\( ̄▽ ̄@/わ〜い♪拍手の渦巻く中、細井架奈美は本舞台へと戻って行った。

ここから2回目のステージの話しに移る。「ここでしばらく休憩のあと・・・」 アナウンスが入る。さて、私は忙しい。外出の許可を貰い、花屋へ走る。そう、「桜澤まみ」さんへお約束の花束をプレゼントしなくてはならないからだ。 

花屋の店員さんへ「○○○○円の花束を作って欲しいんですけど・・・」恥じらいながらつぶやくように言う。あっという間にできあがった。さて、そこからが問題だ。人通りの多い劇場までの道のりを意かに素早く、目立たず移動するかだ。笑わないでくれ !私は浅草では馴れていないのだ・・・ (-_-メ)

出来る限り花束を無造作に持ち、工事現場の塀にへばりつく様に出きる限り小走りに劇場へと急ぐ。幸いにも誰一人私には気が付いていないようだ。(そんな分けない・・・) ようやく劇場へ到着。ここまで来ればもう大丈夫。それにしても長く険しい道のりだった・・・

劇場内へ入ると、予定通り立ち見のバーの足元に花束を隠し、まみさんの出番をその場所で待つ。いよいよまみさんの登場だ。そしてベットが終わるのを待って、立ちあがった所へイメージしていたタイミングで花束を渡す。少女のような微笑を浮かべ 「ありがと〜♪」 と言いながら受け取ってもらい、ようやく昔 ?の約束を、遅れ馳せながら果たす事が出来た。真っ赤な口元からこぼれる、真珠のような白い歯がとても魅力的なまみさんだった。

その後、フィナーレまで気持ち良く応援の手拍子をし、赤く手を腫らして家路についたのだった。

【 あとがき 】

私は色々あって、しばらく観劇活動からは離れていたのだったが、久し振りに「細井架奈美」が浅草ロック座へ出演するので、再び入場料を手に握り締め、電車に飛び乗った。 それは特に目的も無く過ごしている鬱々としていた自分に「活 !」をいれる事にもなった。しばらく振りに再会した「細井架奈美」の変貌ぶりにも、少し驚いたが、前回見たときよりも一回りも二回りも成長した「細井架奈美」を見られた事の方がその喜びは大きかった。この先一体、何処まで「細井架奈美」が伸びていくものかずっと見届けたくなった。