もずのわくわく劇場日記 No.53


2002年 6月 14日 (金) 新宿ニューアート

「SNAシリーズ Vol.14 」

「シンデレラ even if・・・ そのZ」

 〜 葉山小姫 嬢のステージより・イメージストーリー 編 〜


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[ 第七話 PAIN ]


いつの間に降り出したものか、小雨が深夜の街を濡らしていた。
人気の無い湾岸の国道を一台のベンツが何かを振り切るように飛ばしている。
フロントガラスにまとわりついてくる雨の雫が彼を苛立たせ、彼は必要以上の
速さでワイパーを振っていた。それでも彼の視界はボヤけたまま、クリヤーに
なる事は無かった。「クソッ !」誰に言ったものか、何に対して言ったものか
あいまいなその言葉は、彼の心を抽象的に言い表した言葉なのかもしれない。

車内や彼の体には、サキの残り香が漂っている。その事もまた彼を苛立たせる
原因の一つになっているのだ。サキを裏切る事への代償として、せめてサキへ
の償いとして、いつかしたサキとの約束を果たしたつもりだった。しかし・・
それはかえってサキにとって、むごい結果を残す事になった。常識的に考えれ
ば、そのくらいの事は誰にでも想像がつく話なのだが、悲しいかな彼にはその
事を判断する事が出来ないくらい、大きく心が揺れていたのだ。

男としての野望、サキへの想い。それらが混沌として彼の頭の中で渦を巻き、
本来、シンプルなはずの選択を誤らせたと言える。ハンドルをきつく握りしめ
る彼に、不意にサキの声が聞こえたような気がして、反射的にブレーキを踏む
車は雨に濡れたアスファルトを滑走し、一回転して止まった。

彼の心臓の鼓動が車内にまで大きく響く。体中からじっとりとした冷や汗が吹
き出た。ハンドルを握りしめた手に顔を伏せ、ハアハアと肩で息をしないと、
呼吸が出来ない・・・

「ビッグ ? になれたとして ? それを誰が喜んでくれるの ? 
 誰と一緒にその喜びを分かち合えるの ! 」

彼に急ブレーキを踏ませたのは、こんなサキの言葉だった。
これまでそんな事は一度も考えた事は無かった。彼はひどく疲れていた。
車の向きを立て直し、路肩にゆっくりと停め直した。そしてシートを倒して
車の天井をぼんやりと見つめていた。

胸のポケットを探り、タバコをサキのところへ置き忘れて来た事に気がついた
あのホテルの部屋であった出来事を、ことさら思い出してしまう。
サキの事で頭が一杯になる。今頃サキはあの部屋でどうしているのだろう。
サキと別れる事がこんなにまで痛い事だとは思っていなかった。

彼は身動きが取れないでいた。今さら後悔したってどうにもならない。
もはやあのマダムの言う通りだ。明日の扉を開ける「鍵」をマダムの所へ受け
取りに行くしかないだろう。そのためにサキにむごい仕打ちをしてしまったの
だから・・・

しかし、彼は車を発進させる事が出来ずにいた。そしてそのまま夜が明けて
しまったのだった。これは彼にとって、明日への「鍵」も、サキの事も、何も
かも失う事になる。彼にとっては最悪のシナリオになってしまった。
どうしてこんな事になってしまったかと言うのは、優柔不断とか言う言葉一つ
で片付ける事は出来ない。彼の頭の中に充満していた事は、どんな顔してサキ
を迎えに行き、家まで送り届けたらいいのかと言う事だけだった。

元々、サキとの別れの夜にマダムの所へ走るなんて言うシナリオ自体、理不尽
な事なのだ。しかし彼がそうしたのは、彼の描いたシナリオでは無い。
マダムが彼に対して、彼が当初描いたサキとの別れのシナリオに上書きを
したものだった。

「午前12時ジャスト、あなたの携帯を鳴らすわ。それがあなたとあのコとの
 タイムリミットよ。フフフ・・・私って、優しいからね。後はあなた自身の
 問題だわ。うまくやれるかしら ? どう ? 」

そしてマダムのサディスティクなゲームは始まった。
彼が胸に抱いた「男の野望」を成し遂げるために、マダムから課せられた課題
だったのだ。彼はくちびるを噛んでその課題を受け入れた。しかし・・・

彼にはビッグになるための素質が無かったようだ。身の程をわきまえない行い
は、自分自身を滅ぼす元となる。過信・おごり・・・ 現実を超えたところで
彼は見果てぬ夢を見てしまったのだ。しかもサキに対して大きな傷を残して。

しどろもどろになってしまった彼が、やり残している事と言えば、もうホテル
の部屋に一人残して来たサキを、無事に家まで送り届け、すべてを清算し、
二人の女の前から消えて無くなる事だけだった。

彼は自ら引き起こした悲劇の後始末をするために、すっかり日も高くなった
国道に車を転回させ、チェックアウトの時間が迫ったホテルへとアクセルを
踏み込んだ。窓の外を見ると、雨の止んだ海が輝きを取り戻していた。
彼にはそれがせめてもの救いのように思われたのだった。


いよいよ後一回。最終回へ続くぅ〜♪

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●もずさんより

このイメージストーリーは、葉山小姫 嬢の出し物より、ダンスパートが終わ
って、ベットに入った所のシーンから、もずさんがイメージを膨らませて書
いているものであり、実際の人物・ロケーション・ましてや葉山さんの話を
書いている訳ではありません。葉山小姫さんのベットがすごく良かったので
もずさんが勝手な妄想を書いているだけの事です。あしからず・・・




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