もずのわくわく劇場日記 No.49


2002年 7月 21日 (日) 渋谷道劇

道劇チームショー 
新説・牡丹灯篭 編 花咲実優・琴葉 鈴


本日の香盤 1.愛川ユキ 2.姫月涼 3.若葉さくら 4.さくら 5.渡辺理緒(休演)
       6.道劇チームショー 7.夢野ひなた 8.フィナーレ


[ まずはじめに ]

今回の道劇チームショー「新説・牡丹灯篭」をご紹介するのに当り、元々の
「牡丹灯篭」と言う物語のあらすじについて、再確認して置く必要があるの
で、先に述べて置く。
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時は江戸時代、(1603〜1867)上野に住んでいた新三郎は、お露と
言う娘と恋仲だった。 しかし、家柄の違いで会うことができなかった。
やがてお露は重い病気になり、新三郎に会いたいと言いながらついに死んで
しまった。乳母のお米も後を追うように亡くなった。
ところがその年の8月13日、カランコロンと下駄を鳴らしながら、新三郎
の家にお露とお米がやって来た。

お露が死んだことを知らない新三郎は、喜びのうちにお露を迎え入れたが、
これを見ていた隣の男が、あれは幽霊だと忠告した。そこでお露が死んだ事
を確認した新三郎は怖くなり、寺の和尚からお札をもらって、家中にお札を
貼り、家にこもることにした。しかし、隣の男の裏切りによってお札をはが
され、哀れ新三郎はお露の幽霊に取り殺されてしまった・・・

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と言う話である。さて、果たしてこんなオドロオドロしい怪談話を道劇の
脚本家の方は、どのように料理してくれるものか、とても私は興味があった
しかし実際に出来上がった舞台を見てみると、う〜ん・・・と私はうなって
しまった。前置きはこれくらい意にして、早速話を舞台へと進めてみよう。

暗幕の引かれている舞台上に、スッと亀裂入ったように中央から引き分けら
れ、幕が開いた・・・ 

徐々に開いて行くと舞台上には、カミテ側に「よしず」が開き立てかけてあ
り、シモテの半分位を柱と柱に挟まれた大きな障子(ショウジ)の立つ舞台セ
ットになっている。BGM は丑三つ時を表現し、どんよりとした雰囲気を鼓と
横笛でかもし出している。そして、その中にカラン・・・コロン・・・ と
言う、下駄が石畳の上を歩くが如きSE が流れて来る。

舞台上のセットに目を向けていると、カミテより盆提灯で暗い足元をほのか
に照らすようにして、一人の桃色の着物を着た女が無表情にゆっくりと出て
来る。そしてその女の後ろに続くようにもう一人、白地に赤のラインに黒の
縁取りの着物を着た女がそろりそろりと出て来る。

その女二人は、どうやらお女中とお嬢様と言った二人連れのようである。
そして無言・無表情のままで、徘徊するようにして舞台から花道、花道か
ら盆へと回り、そして同じようにして再び舞台へと戻って行く・・・

SE のカランコロンと言う、下駄の音が耳に不思議とこだまする。
舞台へ戻った二人は、障子のセットへ向かうと、戸当りとなる柱の片方を
盆提灯をかざすようにして、いぶかしげに見上げた。ピンスポットライト
が小さくその柱の上部を照らすと、そこには一枚の紙切れが貼られていた

「南無妙法蓮華経」と勢いのある筆文字でその紙には書かれている。
その紙は魔よけの御札のようである。盆提灯の淡い明かりに浮かび上がっ
たそれを見た二人の女達は、ハッ ! と驚き、顔と顔を見合わせる。

すると、お嬢様・露(花咲実優) は、そっと右手を差し伸べてその御札に触
れようとした。刹那 ! 雷鳴とどろき、稲光が瞬く ! 「きゃぁっ ! 」
お嬢様・露は、悲鳴を上げ跳ね飛ばされ、背中をよじるようにして、後ろ
へと倒れた。舞台上ではフラシュライトが素早くチカチカと点滅した。

その様子を見て、あわててお嬢様へ駆け寄るお女中・お米(琴葉 鈴)。
倒れこんでいるお嬢様を抱きかかえるようにしながら、恨めしそうに
言葉も無くその御札を見上げる二人・・・

そう、御札が貼られた障子の部屋の中には、お嬢様こと露(花咲実優)の
最愛の人、新三郎が居るのだ。しかし、魔よけの御札が露の邪魔をして、
部屋の中へ入って行く事が出来ないのだ。

横笛が悲しげに響く。
よろよろとお嬢様は立ち上がると、盆の方へ向かって歩いて行き、盆の上
でへたり込んだ。心配そうにお嬢様のあとを追う、お女中のお米・・・

露は盆の上で最愛の人の元へ近づくことすら出来ない悲しみを嘆いている
お米(琴葉鈴)は、露(花咲実優)の傍らに立ち、シクシクと泣いている露を
お痛わしや・・・と、露の事を慰めるように、寄り添って露の右手を取り
自分の両手でそっと包み込んだ。

うつむいていた露は、ゆっくりと顔を上げ、二人は見つめ合う。そして
露とお米は抱きしめ合いながら、口づけをかわす。どちらかと言うと、
お米(琴葉鈴)の方が積極的である。

お米は露の背中に回り、首筋に息をかけるようにして、自分の右手を露の
胸元へ滑り込ませ、露のたおやかな胸をまさぐる・・・露の心が揺れ動く
再び柔らかな唇を重ね合う二人。だが、それ以上の事を露は望まなかった
身をひるがえし、お米の愛撫から逃れ、はだけた着物を直し、カミテの袖
へと消えて行った。

一人その場に残されたお米(琴葉鈴)は、盆の上で帯をとき、熱い吐息の
自慰を繰り広げるのだった。琴葉鈴嬢のベットショーには、中々和風の味
わいがあり、一つ一つの動作の何たるかよりも、不思議な雰囲気と言うか
日本古来の伝統的淫靡な、「四畳半襖の下張り」風の色香が漂う所が良い

さて、お米の自慰が終わった所で、盆から脱ぎ散らかした着物を拾い上げ
舞台を振り向くと、一つの展開があった。 どこからとも無く一陣の風が
吹き、お嬢様・露の恋人である新三郎が居る部屋の柱に貼られていた御札
が、ヒラリ ! とその風にあおられ、剥がれて飛んだ。

お米は、ハッ ! とその御札の剥がれた光景を見て、息を呑んだ。お米の
頭の中を、煩悩がよぎる。身動き一つせずに、障子で隔てられた部屋の中
へと桃色に色めき立った想いを駆け巡らせた。

「新三郎殿は、露お嬢様の愛しき人・・・しかし私も女・・・」

お米は体の中に燃え立つ、女としての衝動を抑えきれず、露の居ない事を
良いことに、そっと障子の部屋へと近づき、周囲を見回し誰も居ない事を
確認すると、入口の障子に手を掛け、素早く開けると新三郎の居る部屋の
中へ入って行った。

丁度その頃、御札が貼られている為に、愛しい新三郎殿の元へ行けず落胆
している露がカミテのソデから現れ、トボトボと再びここへ戻って来た。
そして落胆の眼差しで、ふと ! あの忌まわしい御札の貼られている柱を
見上げた。すると・・・無い ! あの魔よけの御札が無い ! 

露(花咲実優) は何度も目をしばたたかせて確認するが、何処にも魔よけの
御札は見当たらなかった。恐る恐る露は部屋の障子の所へ近づいて行く。
すると障子の内側から乱れた姿をして、あえぎ声を上げる女の影が浮か
び上がる。

「何じゃ ! 誰の声じゃ ! 新三郎殿 ? 」

露(花咲実優) は障子を開けようとしたその手を止めた。一瞬、躊躇したが
露は、あえいでいる声の主を確かめようと、思い切って障子を開き、中を
見て我が眼を疑った ! あろう事か、お米(琴葉鈴) が露の最愛の人、
新三郎の上に女上位で・・・

露は息の根が止まりそうにな・・・あぁ、幽霊だからすでに息は止まって
いるのか・・・何て表現すれば良いのやら。

露は思わず生き返ってしまいそうになった。(正しいのか ? これって・・)
あまりにもむごい光景に露は目を固く閉じ、強く障子を閉めると、汚らわ
しき事ぞ ! と部屋に背を向け立ちつくした。

新三郎の上で馬乗りになっていたお米は、霞がかる意識の中で不意に背後
で、障子が開き何者かに見られたような気がした。胸騒ぎがした。
お米は立ち上がり、身をよじると入口の障子の所へ急いで行き、全裸のま
まで障子を開け、外へ出ると後ろ手に障子を閉ざす。

あたりをうかがうと、少しばかり離れた所に薄く人影が見えた。よく目を
凝らして見ると、徐々にその人影の顔が見えて来た。それは若く美しい女
の様である。 はぁっ !

お米の顔から血の気が引い・・・(幽霊だもの、元々血の気は無いか・・)
お米は全身の毛が逆立つような感覚を味わい、狂わんばかりの勢いでその
女の前へ走りより、額を地面にこすりつけるようにして土下座し、悲痛な
声を上げてその女に言うのだった。

「お許し下さいお嬢様 ! どうかご勘弁を ! 」哀れな姿だ。

そこに立っていたのは、紛れも無いお嬢様・露、その人だった。足元に
取りすがるようにして、許しを乞うお米に一瞥もくれず、お米を振り払う
ごとく身をかわす露。そんな仕打ちには、なりふりかまわず全裸のお米は
もう一度「お許し下さい ! もう二度とこの様な真似は致しません ! 」と
悶絶するように許してもらえるよう、露に懇願するのだが・・・

露(花咲実優) は、ぷいっ ! と体をかわし、盆へと走る。お米(琴葉鈴)は
必死で露の後を追い、前へ回り込んでくどい程の土下座をし、お許し下さ
いと食い下がる。だが・・・

露は、足元へ身を縮ませているお米の事を、氷のような視線で上から見下
ろし、刺すようにきつく見据えると、お米が何かに気づいたのか、露の顔
をゆっくりと見上げた。しかし・・・

露の顔を見たお米に戦慄が走った ! 恐れおののき後ろへ身を引いたお米
露はのしかかるようにして、お米の首を両手で締め上げた。苦悶の表情で
あえぐお米に、露の憎悪と嫉妬の念が向けられている。首を絞められて、
殺されそうになっている・・・(幽霊は二度死ぬのか ? ) お米は、露の
わずかな隙を突いて、手を払いのけた。お米は肩で息をしている。

手を払い退けられた露は、再びゆっくりと立ち上がると、帯と着物の間に
挟み込まれている護身用の懐剣を引き抜くと、その袋のヒモをほぐし、中
から短刀を取り出した。

お米(琴葉鈴) は、体を震わせて露の意図をさぐる。自分をあの短剣で刺し
殺すつもりなのか ! (だからもう死んでるってのに・・・)
しかし、短剣を取り出した露(花咲実優) は、くるりときびすを返すと一転
し、思い詰めた表情で盆から舞台の方向へと歩いて行く。一体何をするつ
もりなのか ! 

露の短剣の切っ先から逃れたお米(琴葉鈴) は、呆然と露を見守っている。
露は障子に手を掛けると、中へと入って行った。
すると障子に露のシルエットが浮かび上がる、逆手に持った短剣が露の頭上
高く振り上げられた ! そしてそれはそのまま露の最愛の人、新三郎めがけ
て振り下ろされた ! 障子が真っ赤なライトで染まる ! 盆の上のお米が
悲鳴を上げた ! ぎゃぁ〜っ ! ・・・

思いも寄らない修羅場を迎えたワンシーン。障子のシルエットが消える。
盆の上で倒れこんでいたお米は、その場からカミテのソデへ逃走する・・・
めまいを起こしそうな修羅場が展開された場内の空気の中、新三郎を自らの
手に掛けて刺し殺し、茫然自失となった露(花咲実優) が、ふらふらと部屋
の中から出て来る。

逆上したとは言え愛する人を殺害し、お米(琴葉鈴) にはたった一度の過ち
を許せず、逃走された露 (花咲実優) は、一人ぼっちになった。舞台中央
へ出てきた露は、ハッ ! と我に返り、右手に固く握り締められている短剣
に気がついた。何と言う恐ろしい事をしてしまったのか・・・

露は、良心の呵責に心を痛め、短剣を離そうとするのだが、握りしめた短剣
が離せない、離れない。何度も腕を振りやっとの事でそれを離す事が出来た
舞台の床の上に、音を立てて短剣は落ちた。

露は嫉妬に狂った自責の念と、信じていた二人から裏切られた悲しみの中で
もがいていた。そして舞台の上で帯をとき、着物を脱ぎ、白い襦袢姿になっ
て盆へと進む。

新三郎と過ごした二人の愛の時間を心に思い描いて、狂おしい程の自慰に
ふける露(花咲実優) が盆の上ではべり、BGM が切なく流れ出す・・・

♪乱れて咲いても花は花〜 花にも色々あるけれど〜
 好きだから・・・ あなた一人が好きだから・・・

大月みやこの歌う演歌が切々と胸に染み込んで来る。この世とあの世の狭間
で揺れ動いた儚くも悲しい恋物語。新説「牡丹灯篭」観劇した人の胸に抜け
ないトゲを一本刺したまま、幕が引かれたのだった・・・・

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■ 編集後記

いやぁ〜 これすごく良かったなぁ〜♪ 元々「怪談・牡丹灯篭」の話は
これまでにも映画や講談・落語などで見たり聞いたりしていたけどねぇ。
まさかこう言う話の展開になるとは・・・ すごい ! 感嘆した。

道劇のこの話に出て来る琴葉鈴嬢演じる所の「お米」は、歳若くてお女中
と言う設定になっていて、女のサガからいけない事と思いつつ、お嬢様の
恋人と寝てしまう。しかし、この「お米」と言うのは元々「お嬢様・露」
の乳母と言う設定の話。この「お米」をこのような役に仕立ててしまうと
言う道劇の脚本家の方の発想がフレキシブルと言うか、「ス」の世界と言
ったら良いのか、なるほどねぇ〜 と思っちゃいましたよ。(笑)

いやいや、特筆すべきはそれだけにとどまらず、道劇の踊り子さんの
「露・お嬢様」役を演じた花咲実優さん、笑顔が「ともさかりえ」に似てる
スタイルも良いし、ベットの演技も切なくて良かった♪ 美形ですよね。

また「お米」役の琴葉鈴さん、演技力・感情移入・セリフなど抜群に良かっ
たですよ。以前見た「不夜城」のときも思ったんだけど、道劇の踊り子さん
たちのパフォーマンスのクオリティーの高さ ! 素晴らしいと思います。

で、この「牡丹灯篭」が終わると、オープンショーになるんだけれども、
これがまた、BGMは「恐竜音頭」(爆♪) 今しがたまでシリアスな演技して
いたのに、打って替わってコミカルなダンスと愛嬌たっぷりに、お尻フリ
フリ♪ はぁ〜い♪ ってね。ホント存分に楽しませて頂きました。
道劇のチームショーって、癖になりそうです・・・(爆♪)



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