もずのわくわく劇場日記 No.58


2002年 11月24日 (日) 若松劇場

「 甘い時、はずむ心 編 」


私はじっと見つめていた・・・
ブラウンの延べ棒。それは銀紙に巻かれていて、少女の細い指の森から見え隠れしていた。やがてゆっくりと少女はピンクの唇をあける。銀紙が半分ほどはがされたそれ。
グロスで艶やかに光るピンクの唇は、まるでそれをいとおしく愛撫するかのようにして
少女は口の奥へと滑り込ませる。少女の体温36℃弱・・・
それくらいの温度でもブラウンの延べ棒はとろ〜り♪ と溶解してしまう。

とその瞬間 ! サク ! 

延べ棒の中にひそむウエハースが音を立てた。その音は小さな悲鳴にも似たウエハースのささやかな抵抗だったのかも知れない。サク、サク、サク。少女の口の中でそしゃくされて行くカカオの風味とウエハースの歯ざわりは、少女にしばしの間至福の時を与える。
ん〜 KIT CUT !

中央線のプラットホームに回送電車が滑り込み、背中まで伸びた少女の長い髪が風に遊ぶ。回送電車は何事もなく当然とした様子で停車した。誰も乗っていない回送電車の前で、少女はたたずんだまま二口目の延べ棒を口に運ぼうとして、何気なく停車している
回送電車の窓ガラスを見た。

少女はビクッ ! として肩をすぼめると、やにわに後ろを振り返った ! 
何が起きたのだ ! 少女の身に一体何が起きたと言うのだ !

「おじさん !」

「えっ ? は、はい・・・」

少女の黒い瞳がもずさんのまつ毛の長い、つぶらな少年の輝きを持つ眼をとらえていた。
しまった ! 返事をしてしまった・・・ 反射的に私は返事をしてしまった・・・
なんてこった。自分で自分の事を「おじさん」と認めてしまったではないか。

少女のグロスリップから発せられた「おじさん」の言葉が、とてつもなく大きなうねりと
なって私に押し寄せる。負けるもんか ! そんな言葉に呑まれてどうする ! 
しっかりするんだ「もず !」 日本の夜明けは近い !

少女のまなざしを返り討ちにすべく、私は劇場で鍛え抜かれた鋭敏な視線で少女を見た。
そんな戦いの中にあって、少女は女神の微笑で私に続けるのだった。

「おじさん、甘い物好きなんですか ?」

意表を突いた一言に思わず「はい。」と答えてしまう私・・・

「良かったらこれあげますヨ♪」

そっと差し出された一本の KIT CUT ! 「えぇっ ? いいんですか ?」本能むき出し。
煩悩はないが・・・しかしなぜ ? どうして見ず知らずのしがない観劇人の私に・・・

少女が言うには「回送電車の窓ガラスを見た時、背中越しにひたすら KIT CUT ! を見つ
める「おじさん」の姿が見えて、ちょっと怖かったけど悪い人ではなさそうだしさ、
チョコ食べたいのかなぁ〜 って思ったの。」苦笑するしかないな。

でも、どうして悪い人じゃないって思ったの ? と質問を投げかけると、その子は笑い
ながらこんな風に答えた。

「だってぇ〜 悪い人ならチョコなんて見ないで、きっといやらしい所見てるもん♪」

いやはや、頭の回転の速い子なんだね。それにしても「もずさん」に、危険の「危」の
字も感じないとは・・・ 次の特別快速電車が来るまでのしばしの間、見ず知らずの
二人は KIT CUT ! をサクサク言わせながら、文字通り「甘い時」を楽しんだ。 (爆♪)

つづく・・・




[ 本日の香盤 ]

1.音無りん 2.夏樹るか 3.日野沙織 4.仁科ちあき 5.香取しずか(5周年)
6.小雪 7.相沢かれん 8.フィナーレ



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