もずのわくわく劇場日記 No.70


2003年 3月 16日 (日) 渋谷道頓堀劇場

「夢野ひなた・死んでもらいます ! 編 」


黒板を爪で引っかくような息苦しいBGM が、誰もいない舞台に流れ出す・・・ 鳥肌を立てながら客席で見ていると、シモテの幕から力強く、一歩、一歩と登場する夢野ひなたの姿。重苦しい雰囲気が漂う。黒髪をまとめ上げ、前髪はザンバラに下げている。その奥にはギラギラとした鋭い眼が光る ! 紫の着物には牡丹のあでやかな絵が浮かび上がっていた。乱れた着物のスソから見える足は裸足だ。舞台をゆっくりと中央に進んだ所で懐中から白木のあいくち(ドス) を取り出し、サヤからそれを抜く ! 女の眼に宿る殺気が一段と鋭さを増す。
              
「恨みます ! 死んでもらいます !」
              
あいくちの諸刃をじっとにらみ、そして女は何故か悲しい瞳で心の中に生きている誰かに、切なく肩を寄せ涙した。そんな夢をかき消す如く、再び怨念の炎を燃したあいくちを目の当たりでカシッ ! とサヤに納めると、行動を開始した。ここでよく時代劇や映画の中で流れる定番のSEが曲がれる・・・ 

女はパッ ! と身をひるがえし、カミテへと走り去り、事件発生 ! のようなBGMが流れ、場面は一転して躍動的になる。一度カミテへ走り去った夢野ひなたは、すぐにシモテから走り出て来る。辺りをうかがい、闇にひそみ、身を隠すようにしながら誰かを捜し、とある組織の事務所に上手く潜入したようだ。
               
「極道の妻」を連想させる。このドアの向こうにあいつがいる ! 愛しいあの人を、卑劣な手段で闇討ちにした、憎むべきカタキがいるんだ ! 激しい憎悪の念が、女の胸に充満する・・・

「腐れ外道 ! 死ねーっ ! 」

女・夢野ひなたは、サヤからあいくちを抜き、それを帯の脇に構え、ドアを蹴破り、 一直線に憎むべきカタキに走り込んで行く突然の出来事に「なんじゃぁ〜 っ !」 と、ソファーから立ち上がった男 ! その男に脇目も振らず突進する女 !

男は間一髪、身をひるがえし、女の諸刃をかわす。立場は一転した ! 男は女の腕をつかみ、女の背中越しにねじあげた。女は歯ぎしりしながらも、あいくちをその手から落とし、落とされたあいくちは、チャリン ! と音を立てて床に転がる。

絶対絶命 ! 女は男から腕をきつく引き絞られたまま、蹴破ったドアの方へ押され、一歩、また一歩と歩かされて行く。このままではきっと、なぶり殺しにされてしまうに違いない・・・女・夢野ひなたは、ねじられた腕の痛みの中、この大ピンチを一体どう切り抜けるのか ! かたずを呑み鼻息を荒くして見つめる観客の目が、女・夢野ひなたを凝視するどーするんだ ! ひなたーっ !
              
バキューン ! 突如一発の銃声が響く ! なんだ、なにが起きたんだ !

オラオラ〜 はっはっはっ と逆転した立場に、わずかなスキを与えた男の一瞬を、女・夢野ひなたは見逃さなかった。男の腕を振り払い、向き直った女は隠し持っていた短銃を、ふところから電光石火で抜き、その冷たい銃口はわずかな狂いも無く、男の心臓に向けられ、女の恨みの力がその引き金を引いたのだった。

薄紫の煙を立ち上らせ、女・夢野ひなたはそのままブロンズ像のように体を硬直させたまま動かない。「うぅ・・・」男のうめき声がすると男は血ヘドを吐き、ガラガラと石垣を崩すように床に倒れこんだ・・・

胸の前に構えたままの短銃をゆっくりとゆっくりと下ろすと、女・夢野ひなたはそれを床に落とした。全身からじっとりと噴出した汗が、着ていた着物を濡らしている。

洋画のサントラみたいな曲が流れ出す。女の命がけの復讐劇は終わった。しかし一度失った愛しいあの人はもう帰って来ないのだ。床に転がっていたあいくちをそっと拾い上げると、切ない瞳で両手に包み込むようにして頬ずりをし、そのあいくちにすがる。きっとそれは愛しいあの人の形見の品であったのだろう。

そう、女・夢野ひなたは一人で敵討ちをしたのではない。彼女の胸の中にいる、愛しいあの人と恨みを晴らしたと言う事だったのだ。きっと腕をねじ上げられ、絶対絶命の危機に陥った時、隠し持っていた短銃を引き抜かせ、引き金を引いたのは、女・夢野ひなたの体を借りたあの人の魂ではなかったのか・・・

オーケストラの悲しいワルツが、壮大なスケールで響いてる・・・ 思わず涙を誘う。「あんたぁーっ ! 」セリフは無かったが、そんな絶叫の聞こえそうな場面だ。

そして椎名林檎のサビついた悲しい歌声が、幸せだった頃の思い出を懐古させ、夢野ひなたは盆にはべり、蜃気楼の中にあの人の感触を蘇らせるのだった。うたかたの夢はまばゆい光の中に消え、ラストソング。和田アキ子のバラードが流れ出す。恨みを晴らした女・夢野ひなたは生きている。むしろ、愛しいあの人の分まで生きていくのだと、強く心に決意する。けなげとも言える程、前向きな夢野ひなたの姿に感動を覚え、熱い涙が込み上げて来る。

 心の虹を 見たのはいつか あなたに抱かれた時か
 命と愛が 重なりあって 同じ涙を流す時・・・

 たった一度の夢でもいい 私 生きてた
 思い違いであってもいい 虹を見た・・・

 この世の神の いたずらなのか
 男と女 女と男 これも一つの組み合わせ

 たとえはかない愛でもいい 私 燃えてた
 風の吹きようで 変わっていい 愛を見た

 夢現のあとの 心細さと戦いながら
 でも私は 私だと また体を熱くして
 あなたの胸の中・・・

手拍子が客席から起こっている・・・ ラストソングの歌詞をたどり夢野ひなたが当て振りのように美しく踊る。ジ〜ンとした。たった16分足らずのモノローグなのに、90分くらいの東映映画を見終わったかのような気分に浸ってしまった。映画を見終わった後の妙な余韻って言うのがあるが、まさにこの舞台はそう言う感じだった。ほんと、道劇の踊り子さんはこう言う事をやらせたら、抜群に上手い ! 感動した。

オープンショーのBGMがこれまた笑えるんだよね。「リキ、リキ、竹内力 ! ミナミの帝王〜♪ショウ、ショウ、哀川翔 ! リョウ、リョウ、石橋凌 ! 」 みんな Vシネマのスターじゃん。 こんな歌あるんだね〜。誰がうたってるんだぁ ?(爆)

そして3回目のフィナーレでは、応援隊の人達も異常に盛り上がり、道劇の踊り子さん達と同じ振付で、立ち見席で踊り出す。さすがの踊り子さん達もぶっ飛んで、ワッショイ ! ワッショイ ! まじでお祭り騒ぎだった。こんなににぎやかな道劇のフィナーレって、初めて見た。

と言うわけで、私はホント夢野ひなたさんのステージに感動したので、フィナーレで客席に降りて来た、夢野ひなたさんに「ステージ、すごく良かったです♪ とても楽しめました。」と言うと、ひなたさんは、「ホントですか ! ありがとうございます♪ そう言ってもらえると、 すごく励みになります。これからも良いステージを見て頂けるよう、頑張りますので、応援お願いします♪」と、顔中で笑って言った。

今回はレポート書けませんでしたが、他にも知奈樹さんもストーリー物の、娼婦の出し物、とても良く出来ていましたし、泉希さんの元気一杯の少女の出し物も楽しかったです。 今週は、道劇の踊り子さんがパワフルで非常に強くて、並大抵の事では完全に食われてしまいます。やっぱり自分の小屋って言うのは、強いですね。

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 渋谷道頓堀劇場 [今週の出演]  3月11日〜20日

 1.夏樹るか 2.星野さやか 3.知奈樹
 4.AGEHA 5.水森さやか 6.響 7.泉希
 8.夢野ひなた 9.フィナーレ
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