もずのわくわく劇場日記 No.82


2003年 11月 3日(月) 新宿ニューアート

実力派踊り子シリーズ 第一弾! 若林美保さん 登場 ! 序章


若林美保は自分で自分の顔を、直接見た事が無い。

いや、若林美保に限らず誰でも自分で自分の顔を、直接見ることなど出来ない。
人は誰しも自分の顔を見る時、「鏡」と言うフィルターを透かし、その「鏡」の異次元空間の中にある「自分」とよく似た幻影を見て、それを「自分」と思い込むだけの事だ。
今日の若林美保は、どう言う「顔」を鏡の中に浮かび上がらせていたのだろうか。

踊り子にとって自分の「顔」を映し出す真実の「鏡」と言うのは他でもない、客席に座り、あるいは立ち、ステージで踊る自分を見つめるその人達の数々の瞳こそ、自分の「顔」を映し出す真実の「鏡」なのだ。

若林美保は、ふわりと肩に乗せるように白いワイシャツだけを着て、楽屋から新宿ニューアートのもう一つの花道、カーテン通路を「ごめんよ! ごめんよ〜!」と言って衣装を胸にかかえ、スリッパをペタペタと鳴らしながら、早めなタイミングでステージ裏の衣裳部屋へと向かって行った。

私はそんな若林美保の背中をロビーで見送りながら、ニヒルにほくそえみ「ふっ♪」と小さく息を吐いた。「こいつ、やる気充分と見たぜ...」暗黒街のレポーターは今日もさりげなくSNAのロビーにひそんでいた。シュボッ! zippo の含みのある点火音を手のひらに包み込み、ななめにくわえたファッショナブルな LARK MILDS メンソールに zippo の揺らめく炎を吸い込むと、ジジジジ... と言うかすかな音を立てて着火した。

「あぁ、なんて居心地の良い劇場なんだろうか。」そんな気持ちで妙に落ち着いた時、不覚にも私はとんでもないミスを犯したのだった。それは暗黒街のレポーターとしては、その資質をも問われかねない危険な状況にまったく気がついていない愚かと言うべき、何気ない行動だった。クルリと体を回してドアを背にして立たずみ、吸い込んだ毒の煙を、タバコのヤニで黄ばんだ天上へ向かって吹き出している時、思わぬ伏兵=抵抗勢力が、背にしたドアをめがけて突撃して来たのだ。

無防備にたたずむ暗黒街のレポーターの背にしたドアが、なんの前ぶれもなく、勢いよく開き、そのドアは私の背中及び、後頭部を直撃した。「あぅ!」前のめりに一歩踏み出す私に、背後から女の声が叩きつけられた。「ギャッ! ご、ごめんなさい!」誰だーっ! とフトコロから銃を抜き... 抜き... な、無い! オレの拳銃が! そうか、オレの拳銃はルビートリガーに貸し出ししたまま、まだ返却されてなかった。延滞金請求しなくては... そんなギャグを言ってる場合ではなかった。

誰だーっ! と振り返って見るとドアを開けてそこに立っていたのは楽屋着で武装した「夕樹舞子」だった。「大丈夫ですか?」暗黒街のレポーターは目じりをツリ上げてにらみつけようとしたが、思わぬ言葉が口を突いて出た。「全然大丈夫よ、ちょっとかすっただけかな♪」おいおい、かすっただけで一歩前へ踏み出すのかい? と自分に突っ込みを入れているすきに、「夕樹舞子」は楽屋へと消えていた。

ふっふっふっ♪ 暗黒街のレポーターは優しい.。

つづく・・・



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