もずのわくわく劇場日記 No.92


2004年 1月8日(木) 初春・道後シリーズ 第六章

2004年 渡辺理緒 最新作品

化身 〜 KESHIN 〜


■ ライナーノーツ

渡辺理緒が2004年、正月の道後ミュージックにて新作を発表した。
今回の最新作「化身 〜 KESHIN 〜」もとても意欲的な作品であり、走り出したら止まらない! 渡辺理緒のキャッチフレーズの通り、壮大なものとなった。

「元旦は 冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」と言う歌を読んで、世間の批判を買ったのは、とんち小坊主で有名な一休さんである。「お正月」と言う言葉に浮き足立つ民衆に、あえて一石を投じ、「正月」の持つ意味や意義を改めて考えよ! と言う事である。

「正月」とは、「正しい月」と書く。つまり正月とは、単に浮かれ騒ぐ時ではなく、去年一年間に犯した「罪」、「とが」、「行い」を反省し、改めて自分を、人間を、世間を見つめ直して、今年の自分は果たしてどうあるべきかと、深く考える時期であると一休禅師は歌ったのである。人生は想いのほか短いものなだ。漫然と時流にされて生きて行くべきものではない。

なぜこのような事を書いているのかと言えば、今回の渡辺理緒の最新作「化身 〜KESHIN〜 」は、この一休禅師の読んだ歌と同様に、渡辺理緒から観劇する民衆に、強烈なメッセージが発せられているからなのだ。

渡辺理緒は、オープニングで妖怪もどきの、おどろおどろしい「獅子」として登場する。誰の眼にも悪魔の使者として映る事と思うが、実はそうではない。これには深い意味があるのだ。

仏教の頂点に立つ仏は「大日如来(だいにちにょらい)」である。そしてその他の仏はこの「大日如来」の分身であり、「大日如来」が悪魔と戦う時に、「不動明王」に変化して戦いの神となる。仏が神に変化する事を「権化(ごんげ)」と言う。つまり、「不動明王」は「大日如来」が権化した形であり、「大日如来」の化身である。

日本の神様の最高位「大神」と言えば、「天照皇大神(アマテラスオオミカミ)」であり、よろずの根本と言われ、多数いる他の神々は、このアマテラスの分身であり、化身なのである。仏教の「大日如来」、神道の「アマテラス」、どちらも太陽を見立てて最高位の神・仏としている太陽信仰であり、宇宙信仰であるとも言える。いにしえの昔より、人間は人知の及ばぬ事に神や仏を思い、そのようなものに「恐れ」を抱いて、崇め奉って来たのだ。科学的見地に立っても、我々の住む地球があるのは「太陽系」と呼ばれる宇宙の一部であり、太陽をものの中心にすえて何もかもが始まる。

宗教と言う言葉でくくると、反発を買うかもしれないが、「科学」と言う言葉を持ち合わせなかった昔の人類は、人知の及ばなかった宇宙を、宗教と言うもので表現し、理解していたのではないだろうか。少し話がわき道へそれたようだ。

話を戻すと、渡辺理緒の最新作「化身」は、このような壮大なスケールで創作されているのだ。渡辺理緒が獅子としてステージに登場したのは、アマテラスが獅子として権化、化身した姿である。なにゆえ「獅子」に化身したのかと言えば、多分「正月」だからであろう。お正月に獅子はつき物である。伝説には「獅子に頭を噛まれると、一年間よろずの不幸から開放され、幸せになれる。」と伝えられている。この分野は「民族史」の風習・風俗文化になるので、ここでの説明は割愛するが、おそらく渡辺理緒がこの作品で、「獅子」の扮装をしたのは、厄除け・災難除けと言う部分で、悪魔降伏・怨敵退散の意味。つまり、悪魔と戦うアマテラスの化身と言う事で「獅子」を選んだのだろう。

さて、獅子としてステージに登場し、第2景では太刀を振り回して戦いのシーンとなる。それは良いがアマテラスの化身の「獅子」は、一体誰と何のために戦っているのか? ここが今回の作品の要、ミソと言う事になる。

アマテラスの化身、戦う「獅子」は、みずからの分身である「人間」達が住む地球が、見ておられぬ程に荒廃している。宇宙のオアシスと言うべき美しき地球は、環境破壊が進み、人の心は荒み、いつ世界大戦が勃発しても不思議は無い。もしそのような事になって核戦争が始まり、このままでは間違いなくカタストロフィー (破滅)の時を向かえ、地球は不毛の地と化してしまう。

こうなった原因はどこにあるのか、何にあるのか? それは人間そのものにあるのではなく、日本で言うところの、「荒ふる神」つまりは黄泉の国から現われて、邪悪な魔力を使って闇の世界から人間を操り、カタストロフィーへの道へといざなう「悪魔」の仕業である。

高天原(タカマガハラ) と言う平けく、安らかな神の国から見下ろした地球の危機を見て取り、アマテラスの心はひどく痛み、そして憤激したのだ。アマテラスは決心を固め、「獅子」に化身し、本来善良である人間たちを悪魔の手から救うべく、地上に降りたのだった。

悪魔との戦いは、壮絶なものとなる。もしも「獅子」が悪魔との戦いに敗れれば、暗黒の闇が地球を支配する事になる。アマテラスの生命を掛けた戦いは、今まさに始まろうとしていた。果たしてアマテラスの化身「獅子」は、悪魔に勝つ事が出来るのか! 人間を、地球を悪魔の手から救い出す事が出来るのか!その結末は、道後ミュージックのステージの上、渡辺理緒のショータイムで今あきらかとなる!

つづく・・・



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