もずのわくわく劇場日記 No.98


2004年 2月 1日(日) リクエストシリーズ 最終回

 冴嶋みどり嬢・愛のマーメイド 編


フェスタ! アミ〜ゴ♪ お祭り騒ぎに華やいだ街のにぎわい。

街とは言ってもここは人間の住む街ではない。
今日の祭りの主人公は、たった一人。
それは他の誰でもない。

人魚の街にひそやかに咲いた一輪の花。
「ミドリーヌ・サエジマーニ」
彼女の幼い頃の事は、誰も知らない。

けれど、いつの間にかこの街で彼女の事を知らない者はいなかった。
「リトルマーメイド」いつしか彼女の事をみんながそう呼んだ。
それは、ミドリーヌ・サエジマーニは、無償の愛を持って貧しき者には自らの物を分け与え、牙をむきいがみ合う者にはその手を握り、涙を流しながら同じ温かな血の通う者同士、心のささくれはひと時のわだかまり、天使のいたずらに過ぎないのよと説いた。

この街に住む誰もが、心に痛みを感じる時、いつしかミドリーヌ・サエジマーニはそばにいて、みんなの心の支えとなり、その優しさに癒され、誰もが彼女の事を「リトルマーメイド」と呼ぶようになったのだ。

祭りはすでに絶頂に登り詰めている。
街の広場は群集が繰り出し、太鼓は打ち鳴らされ、ラッパは甲高く吹かれ、熱気と沸き立つ嵐のような歓声の渦の真ん中で、白いフリルのスカートのスソを揺らし、一人踊っているのがリトルマーメイド「ミドリーヌ・サエジマーニ」だ。

スパンコールが水玉模様に散りばめられた祭りの衣装は、その身を清らかなものと禊ぐ者のみが許される、人魚の世界では最高とされる、女人魚なら誰もがあこがれる衣装なのである。しかしその衣装を着られるのは、たった一人。それも百年に一人、いや、千年に一人いるかどうか。それはこの街の住人が、満場一致で選んだ清らかな心の持ち主でなければ着られない、感謝の糸でつむがれた「衣」だから。

ミドリーヌ・サエジマーニが髪に飾っている白い花の髪飾りは、自分を想ってくれるみんなへの感謝のしるし、そしてそれにはもうひとつの意味があった。今夜の祭りが終わり、みんなが寝静まる頃、彼女はこの街を一人静かに出て、月の輝く浜に登る。

それはミドリーヌ・サエジマーニが新しく生まれ変わるため、生きて行く世界を別の場所に移すのだ。ミドリーヌ・サエジマーニにとって、今までのフェスタは前夜祭にしか過ぎない。浜に登り、月の明かりに優しく包まれて、その時を待つ。そこからがリトルマーメイド「ミドリーヌ・サエジマーニ」にとっての、本当のフェスタなのである。

------そしてその時がやって来た。

岩(イス)の上にじっと座り、月を隠している雲が過ぎ去るのを待っている。
(スーさんは月のスイッチをカチッ!と入れる。)

厚く黒い雲を押し去るような晴れやかなミュージック。
差し込む月明かりが目にまぶしい。
リトルマーメイドはじっとしていた岩(イス)からゆっくりと立ち上がり、体を伸ばし始めた。その時希望に光る瞳の輝きは、幾千の闇に包まれた夜を照らす、物語のプロローグを予感させる。

腰のところからヒザの上までタイトにキュッ!と絞られたクロームメタルのうろこのスパンコールが、月明かりに反射してキラキラと紫に光る。そのヒザ下からは、やわらかく広がる尾ひれのフレアーが長く足元を隠す。

リトルマーメイドは浜辺を渡り、そして少し小高くなった所でそこへゆったりとうつ伏せにはべり、徐々に尾ひれを押し下げるようにして行くと、美しき二本の足が現れた。そうだ、リトルマーメイドは陸の上の世界へ生まれ変わるのだ。

うっとりとした微笑を浮かべて体を動かし、尾ひれを捨てた実感を確かめながらベットへと入って行く。
女性ボーカルの喜びを表す歌声が、リトルマーメイドのビジュアルを浮き立たせる。この場面からがとても綺麗で感動的なのだ。

リトルマーメイドは横たえた体を折り曲げ、深く背中をそらせ、ぐっと観客の視線を集めておいて、そして左腕をロールさせ、グーンと天高く捧げる。拍手!

じっくりと体を戻しつつ、右手・右ひざを床に着き側面に体を起こして左足を水平に伸ばし、胸の前でコブシを握り締め、思い切り良く伸ばす。拍手!

さらに体をかえして、ドッグスタイルで足を蹴り上げてポーズ。拍手!
体を戻して立ち上がり、満面の笑顔でそれに答えながらステージへと戻って振り返り、右足を斜めに伸ばし、右腕は肩の高さで水平に、左腕は頭上へまっすぐ上げてポーズを決め、月明かりは消えた。

リトルマーメイドは人として生まれ変わり、また心痛む人のために惜しみなく深い「愛」を注ぎ、誰からも愛される一人の女性として生きて行く事だろう・・・



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