もずのわくわく劇場日記No.109


2004年 5月 20日(木)

五月遠征道後シリーズ 2 

「神崎雪乃・影炎  - かげろう - 」



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ミュートギターの短いリフレインが暗闇のステージにエコーする。
神崎雪乃隊のソロタンバリンが、チッ!チッ!とカウントを刻む。
場内に立ち込めるミステリアスな NIGHT FOGGY

妙な静けさに言い知れぬ胸騒ぎ。
その時!無造作に黒鞘の日本刀を左手に持った神崎雪乃が、心ここにあらずと言ったようすで登場する。ステージの中央に向かって、とつとつと歩く。そのうつろな目には一体何が映っているのか。

神崎雪乃はきつく髪をポニーテールに結い上げ、真っ白な着物に身を包む。この夜更けにいかなる仕儀であろうか。しばらく様子を見る事にしよう。

ステージの上を徘徊しながら、ふと足を止め、遥か彼方を仰ぎ見る。月光に照らされた荒野に誰と言う人影も見えない。神崎雪乃は左手の中にある刀を、思い出したように視線を向けると、静かにゆっくりとそれを胸の前へと持ち上げた。

手につかんだ刀の感触を実感しながら、眉と眉の間に小さなシワを寄せ、両まぶたをじっと閉じる。神崎雪乃の胸にいづこともなく一陣の風が吹き、込み上げて来る憤激の情、蒼い炎が音を立て揺れながら燃え盛る。

コンセントレーション。

五体の気を刀に集中させて、鞘から刀をじっくりと引き抜く。刀の刃は滑らかに鞘(さや)をすべり、月光の元にさらされた。神崎雪乃は突き上げるかのようなBGMに背中を押されるようにして、刀の諸刃を垂直に立てる。荒野を這い回る冷気が、まるで神崎雪乃の持つ刀にまとわりつくように集まる。

その刀の切れ味を探るかのように、客席から息を殺して見つめる者共。邪剣か? それとも正剣なのか? 神崎雪乃が着ている着物は、純粋無垢の白だ。嘘偽りの無き証とも見てとれる。武士にとって純白の着物を着る時は、最後の死を覚悟する死に装束である。

かつて、伊達政宗はこのような純白の死に装束を着て、金の十字架を背負い、京の都を行列した。それは時の権力者、太閤秀吉に逆らい、上洛せよと言う命令を軽んじ、一度は上洛を引き伸ばしたが、時流の大きな流れには逆らえず、自らの延命のために、奇抜なアイディアを用いて太閤秀吉のご機嫌取りをし、かろうじて首をつないだ。

しかし、どうやら神崎雪乃は謀反を起こしたと言う事でもなさそうだ。
月光の明かりの中、周囲を見回し、一息ついたと言うところから見ると、どうやら神崎雪乃は追っ手に負われる身なのかも知れない。

神崎雪乃は引き抜いた刀を垂直に立てたまま、右手を広げてその刀の刃にあてた。すると、刃の上端から下へ向けてその手をすべらせる。あぁ! そんな事をすると!

ん〜・・・ 切れてなぁ〜い♪

おや、どこかのコマーシャルで見た事があるようなシーン・・・

それは置いといて。

「分った!」神崎雪乃はどうやら何かの濡れ衣を着せられて、自らの「潔白」を釈明に及ぶも、取り合ってもらえずに逃げたに相違ない。いや、悪党のワナにはまり、そのような仕儀に至ったと言う事か。いづれにしろ、疑念をいだかれて逃走したと言う事なのだろう。だからこそ、月夜の晩に純白の死に装束などを着て、荒野に一人立っているに違いない。

そして、無念の思いから刀を引き抜き、諸刃に手をあてて自分が「潔白」である証拠に、正しき者に刃(やいば)は立たず! とそのような行為に及んだのだろう。

日本古来より、「くがだち」と言うものがある。これはウソをついているかどうか、試すためのいわば「ウソ発見器」のような方法である。どうするのかと言うと、鍋でお湯をグラグラと煮立たせ、その中に手を突っ込むと言うものだ。ウソをついていなければ、神様のご加護があり、決してやけどをする事はなく、ウソをついている者は、神様のご加護が得られないのでやけどをする。まるでバカバカしい話であるが、これは実際に源平の時代に行われていた。ようするにそのように言い伝えられているので、本当にウソをついている者は、鍋に手を入れるまでの間に、恐ろしさのあまり、ねを上げて白状したと言う事だろう。

さて、刀の刃に手を当ててすべらせても切れていないと言う事で、神崎雪乃の潔白は分った所で先へ進めよう。神崎雪乃は刀を光らせながら、それをもてあそぶようにしてステージ上を歩きながら踊り、ステージ中央で刀を床にそっと置き、そこに座る。すると今度はその刀の真ん中辺りを手で握り、一文字に持ち上げながら立ち上がり、そのままの状態で垂直に立てた。

それは神崎雪乃を追ってやって来た「追っ手・右狂」に、潔白の証を示し、「我心に一点の曇りも無し!」と宣言する。刀の刃の真ん中を握ったまま、右狂を威圧する時の、緊張感あふれる神崎雪乃の顔に注目すると、それはそれは今までに見せた事のない、凛々しい神崎雪乃を新たに発見出来る場面だ。

しかし右狂は、「その方に私恨あらねども、殿の命によりお命ちょうだいつかまつる!」と
神崎雪乃に斬りつけて来た。

刀の刃を握っていた神崎雪乃は、すばやく刀の柄を握り直し、「ここまでしても、まだうぬらには分らぬのか!さればいたし方なく候。」と身をひるがえし、刀を振り上げて右上手から袈裟懸けに振り下ろし、すぐさま、左上手から再び振り上げた切っ先を振り下ろす。

さらに斬り込んで来る右狂の一刀を振り払うように、今度は右下手から左上手へと切上げ、それが右狂のわき腹をとらへ、切り裂かれた腹から血潮を吹き上げて、右狂は「うぉっ!」とうめき声を上げ、力なくその場に倒れ込んだ。神崎雪乃は左肩に刀を立てて構えたまま、しばらくじっとしていたが、刀を一振りすると言った。

「わが身、これカゲロウの如きなり。ただ一日の命を炎の如く燃やし、人知れず、いつ果てようとも悔いはあらず・・・」



さてさて♪ シリアスな話はここまでにして。
と言うのは、オープニングの曲から2曲目までが、上記のような神崎雪乃ちゃんの始めての試みで、刀をつかった作品は中々良かった。刀を振り回す場面で、腕だけで刀を振っていた所はちょいとばっかし研究の余地があるなと思ったんだけれども、新しい事にチャレンジしようと言う気持ちは高く評価したい。

ここから三曲目になり、一旦引っ込んだ雪乃ちゃんは、突如! ショーガールになってしまう。ありゃぁ〜? と言う感じだが、この景は切り取ってこの場面だけで鑑賞すると、これはこれで良く踊れているので中々楽しい。

チ!チ!チ!チ! と時計の秒針がまるで時を刻んでいるようなマラカスの音が続き、それに上乗せされるベースのフレーズ。コンガやブラスセッションが音に厚みを加えて行く。雪乃ちゃんはリズミックに踊りながら、正面を向いたままカニ歩きのステップ。足元のリズムの乗せ方、間合いの取り方。あら? なんかまるでリオさんが踊っているようだ。こう言う踊り方って言うのは、今までの雪乃ちゃんには無かった。へぇ〜♪ 知らないところで雪乃ちゃん、かなり練習してるんやなぁ〜

元々雪乃ちゃんはリオさんと顔似てるから、見てる雰囲気は、標準体型になったリオさんが踊ってるって感じがする。(失礼!)

ふぅ〜ん♪ 雪乃ちゃんのステージ、変わったなぁ〜と言うのが私の印象。この雰囲気で行くと「二代目・渡辺理緒」を襲名する日も近いかも知れない。(爆♪)

ステージがかなりリオさんっぽくなって、見栄えが出て来たんだけども、その分、「神崎雪乃らしさ」みたいなものが減った気がする。その辺はうれしいような、悲しいような? ど〜なんでしょ? リオさんの良いところは取り入れつつ、「神崎雪乃のオリジナリティー」みたいなものを出して行けたら、そりゃ〜すごい事になるな♪ と個人的にこれからも楽しみは尽きない。でも雪乃ちゃんの苦悩は日々増して行く (爆♪)

そしてベットショーへとステージは進む。
衣装変えのために一度引っ込んだ神崎雪乃は、ラストソングのバラードが流れる中、金ラメのナイトドレスを両肩にそっと乗せたと言う着こなしで、ステージへ向かう。物思いにふけるオンナの慕情を表しながら、盆にはべる。うん、ここのベットシーンはいかにも神崎雪乃そのものだ。

神崎雪乃はこの盆に出てくる時の照明に注文をつけている。正面からまともにノンカラーのスポット浴びてやりたいと言う事のようである。実はその意見に私も賛成である。道後の照明はいつもベット入りの時に、正面から照明を当てないので暗いんだよね。踊り子さんの顔とか影になって良く見えない。その辺り雪乃ちゃんが注文付けたのは、お客の自分から見ても良くぞ言ってくれたって思う。

神崎雪乃はルーズに長い髪をかきあげながら、背中を反らせ優雅に踊っている。毎度の如くカブリツキに座って間近に神崎雪乃を感じている。緩やかに回るターンテーブルが、目を閉じて身もだえする神崎雪乃を私の目の前へと運んで来る。ベット演技に引き込まれ、ジワァ〜っとした気分で、神崎雪乃を見つめている。神崎雪乃は目を閉じているので、向うからは見られないナ♪ と安心しきって、ここぞとばかりに私の目の前を通過して行く神崎雪乃をじぃ〜っと見ていたら、体をひるがえした神崎雪乃が目を開け、げっ!目が合っちゃった。

やべぇ! と思った瞬間、神崎雪乃はいきなり「プッ♪」と吹き出し、その後も笑いをこらえながらベットを続けているが、お腹がヒクヒクしてる・・・ 私の顔がなにか?(爆♪)

そんな事でちょっと緊張の糸が切れてたのだが、うおっ? め、珍しい体制に入った。神崎雪乃は仰向けに寝そべった。おいおい、それってブリッジへのカウントダウンのポーズだぞ、まさか、やるんか? 神崎雪乃は何の躊躇もなく、背中を反らせ始めた。やめとき、失敗したら笑われるぜよ! やめときて。

私のそんな心配をよそに、神崎雪乃はグッ!と背中を反らす。太ももの筋肉がピン!と張る。BGMは今まさに盛り上がり、立ち上がるタイミングはここしかない! ここだ! 神崎雪乃の長い髪が盆の床からスッ! と吸い上げられる! しなやかに背中を反り返らせ、見事に神崎雪乃はブリッジから立ち上がり、両手を広げてニコッ♪ と微笑む。完璧や、完璧やで雪乃ちゃん!

突然の出来事にドギモを抜かれ、私は心から神崎雪乃に賞賛の拍手を贈る。
しばらく見ない間に神崎雪乃は成長していた。と言うか、自分ですごくおかしかったんだけど、私はいつから高橋尚子選手についている小出監督のようになったんだ? (爆♪)
と、カブリツキで顔を伏せながら笑っていた。そや、これから雪乃ちゃんには「監督」と呼んでもらおうか。(爆♪)

それにしても、右狂さん勝手に切り殺してしまって、自分は監督と呼ばれようだなんて、こりゃ大ヒンシュクもんだね(爆♪) 右狂さんゴメン!

そんな事を私が客席で、一人考えていたなんて事は知る由も無く、神崎雪乃はステージへと戻り、ラストポーズを決めて照明が落とされたのだった。



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