もずのわくわく劇場日記No.111


2004年 5月 20日(木)

五月遠征道後シリーズ 4-1

「渡辺理緒・GAMBLER ! 」


もしもアカデミー賞に「ストリップ部門」があったなら・・・

NOW ! Ladies & Gentlemen !
今宵、ここに栄えあるアカデミー賞・ストリップ部門賞を発表いたします。

プレゼンターは、遠い東の国よりはるばる海を渡ってやって来た、スペシャルゲストです。ではご紹介いたしましょう。Wellcome ! Mr.Seinosuke Nakajima !

ヒュー ヒュー♪ と、歓声と拍手に出迎えられた「中島誠之助」は日本の文化「わび・さび」を誇示する着物にゾウリ姿で現れた。華やかな会場の照明が彼を照らし、発表席へたどり着くと、右手を軽く差し上げて観衆に手を振る。盛大な拍手の中、発表席から会場を見渡す中島誠之助。

「それでは発表します。」と、ふところから受賞者の名前を書いた紙を取り出そうとして、誤ってフクサに包まれた「いまり焼き」の茶碗を取り出してしまった。中島誠之助のトレードマークの眼がねがキラリ!と光り、口ひげが逆立つ!「おぉ、これは・・」思わず中島誠之助はフクサを開いて茶碗を出す。

「・・・ んーっ! い〜仕事してますねぇ〜!」

そんなプレゼンターの不可解な行動を見てあせった司会の人気コメディ俳優、スティーヴ・マーティンは、思わず発表席へ駆け寄り、プレゼンター・中島誠之助の耳元で小さく言った。

「何をしているんですか!早く受賞者の発表を・・・」
「お黙りなさい! ただ今鑑定中です!」
「オマイゴット・・・」

両手を広げて肩をすくめる司会のスティーブ・マーティン。

「見えた!」
「What ? 何が見えたって?」

中島誠之助は茶碗をジッと見つめたまま静かな口調で言った。

「茶碗の中に、宇宙が見える。」

司会のスティーブ・マーティンは意味が分らず「なんだって?」

「茶碗の中に、宇宙が見える! 」

中島誠之助は自分の世界に、どっぷりとひたりながら続ける。

「茶碗を見て、これが茶碗にしか見えないと言う人は、心貧しき人だ。このたった一つの茶碗を作るために、職人がどれほどの失敗を繰り返し、どれほど多くの時間を費やし、どれほどの魂を込め、それをどうこの茶碗と言う作品の中に表現したのか! それを以って宇宙と呼び、たった一つの茶碗と言う作品の中に秘められた宇宙を旅して楽しみ、感じ、思い、愛おしく手にとって初めてこの茶碗の持つ意味、価値が分ると言うものだ。だから私は今、単にこの茶碗を見ているのではない! この茶碗を通して、この茶碗に秘められた、宇宙を見ているのだ!」

それを聞いた司会のスティーブ・マーティンは、黙ったまま首を小さく左右に振った。そして、中島誠之助の肩に、右腕を回して言った。

「OK ! あなたの気持ちは良くわかった。分ったところで、そろそろアカデミー賞・ストリップ部門の受賞者の名前を発表してくれないかい。みんながお待ちかねなんでね。」

司会のスティーブ・マーティンをハタ!と振り返り、中島誠之助は「おぉ!これはご無礼した。」と我に返って、今度こそフトコロから受賞者の名前を書いた紙を取り出した。

場内が暗くなり、ピンライトがランダムにクロスする。ドラムロールが、ダララララララ〜♪ と緊張感を高める。場内がシーン!として皆、息をひそめる。中島誠之助がおもむろに、もったいぶって場内の様子をうかがいながら言う。

「第75回、栄えあるアカデミー賞・ストリップ部門受賞作品名・ギャンブラー、受賞者は・・・ 渡辺・・・渡辺理緒!」

ワァーッ! と言うどよめきと歓声が沸き、ピンスポットライトの一本が客席にいるであろう、渡辺理緒の姿を探す。いた! 場内の中ほどの席に着席していた渡辺理緒が「えぇっ? ウソ〜♪ あたし?」と言う驚きに満ちた顔で、その場に立ち上がった。渡辺理緒を探していたピンスポットライトが、渡辺理緒を見つけ、輝かしい一筋の光を浴びせかける。

ステージの上で中島誠之助も拍手を贈り、司会のスティーブ・マーティンがコングラディエーション♪ と、渡辺理緒に投げ掛けるように言った。ビッグバンドのBGMに導かれるようにして、渡辺理緒は会場内の通路をステージに向かって進む。途中、周囲の席に着席しているお客から「おめでとう」と声が掛けられる。拍手が鳴り響いている。

渡辺理緒は真っ赤なドレスのスソを手で持ち、足元を確かめながらステージに吸い寄せられるようにして、階段をあがる。中島誠之助とスティーブ・マーティンが渡辺理緒を出迎える。渡辺理緒は髪を気にしながらステージへ登り詰めた。さらに拍手が沸き起こる。

プレゼンターの中島誠之助から、記念のブロンズ像が手渡される。うやうやしくそれを受け取る渡辺理緒は、かつて見せた事のないほどの笑顔で微笑む。司会のスティーブ・マーティンが、渡辺理緒にインタビューする。

「おめでとう♪ Miss,渡辺理緒。早速だが今の気分はどうだい?」

客席を向いていた渡辺理緒は、中島誠之助に肩を叩かれて、スティーブ・マーティンを仰ぎ見て言った。

「こんな素晴らしい賞を頂けたなんて、夢を見ているみたいですわ♪ 」

はははっ♪ と笑いながらスティーブ・マーティンは渡辺理緒に言った。

「ずいぶんと奥ゆかしいね、これは夢なんかじゃない、キミの実力なんだ。みんなが認めた事なんだよ。キミが見せてくれた作品・ギャンブラーでの、ダンス、パフォーマンスはとても素晴らしいものだ。当然の結果さぁ♪」

腰を引いて「とんでもない!」とブロンズ像を左手にかかえながら、右手を小刻みに振って応える渡辺理緒。会場内から笑いが起こった。「では、受賞のスピーチを・・・」と司会のスティーブ・マーティンから言われ、「げっ!」とビビる渡辺理緒。さぁさぁ、と促されてマイクの前に渡辺理緒は立った。

「えぇ〜、皆様。本日はこんなに素敵な賞を頂けて、もうこれ以上の喜びはありません。ギャンブラーと言う作品は、去年くらいからずっと私の中で、ずっとああしよう、こうしたらいいかなぁと、温めていた作品でした。それがこんなに良い評価を頂けた事、本当にうれしいです。

先程、プレゼンターの中島先生もおっしゃっていましたが、ステージでのダンスショーをご覧頂き、人それぞれのイメージした宇宙ですか。そう言うものって誰にでも必ずあると思います。そしてそれは、見てくれた人の数だけ、その宇宙はあり、無限の可能性を秘め、そして果てしなく広がって行くものだと思います。

これからもそんな宇宙が見えるようなショー、作品を踊っていけたらいいなと思います。本日は本当にありがとうございます。」

司会のスティーブ・マーティンが、Miss,渡辺理緒にもう一度大きな拍手をと言い、晴れやかなアカデミー賞の授賞式はフィニッシュとなった。

なぁ〜んて、そんな事になったらうれしいがなぁ〜♪

次回に続く・・・



[ INDEX ] [ 観劇日記 ]