もずのわくわく劇場日記 No.132


2005年 1月 5日 (水) ニュー道後ミュージック

「渡辺理緒の新作・薔薇の封印 〜運命のリフレイン〜 第二章」



第二章 マルレーン家の館

フランチェスコを館に連れて戻ったリニアは、これまでの事の次第をこれこれ、こう言う訳だと父上と母上に話して聞かせた。リニアの両親は、フランチェスコを温かく迎え入れた。そしてフランチェスコは、館の一室を与えられた。

その一部始終を、こっそりと見ていた者がいた。

「では、マルレーン様、今日のお祈りは終わりましたので、私はこれにて失礼を。」

ドン! と音を立ててドアを閉めると、その男はリニアの父、マルレーン伯爵にそう告げた。

「あぁ、そうだった。今こちらの話で君の事を忘れていた。ご苦労だったな。」

「ははは、いえ、お気遣い無く。」

この男は修道僧をしており、名前をミカエスと言う。主人公・フランチェスコの運命に、これから暗い影を落とす、運命の男となる。

ミカエスは帰り際に、「あぁ、ちょっとお嬢様。」そうリニアの事を呼び止めて、リニアに
コソコソと耳打ちをした。

「お嬢様、今しがたあなた様がお連れになった男ですが・・・」

「フランチェスコの事かしら?」

「えぇ、その男ですが、神からのお告げで、あの男は悪魔の化身なり、この家から一刻も早く
 遠ざけるべしとの神言がありました。あの男はマルレーン家に災いを持ち込む、呪われた
 男でございます。早くこの館から追い出してしまいなさい。」

リニアはこの、ミカエスの言葉に気分を悪くした。

「ミカエス、フランチェスコは聖地エルサレムの開放のため、ジ・ハード(聖戦)に参加し、
 神のために戦っておられた方です。呪われた男などと言う事は、絶対にありません!
 二度とそのような誹謗を言ってはなりません!」

「あぁ、いや。お気を静めて下さいませ。分かりました、お嬢様の仰せのままに。」

ミカエスは危機感を募らせた。どこから拾って来たのかは知らないが、薄汚いドブネズミの
ようなヤツの、面倒を見ると言うのか? お嬢様も物好きな事だ。私が修道僧でさえなけれ
ば、この胸の内に秘めた燃える想いを告白するのだが・・・ いつかあのフランケンとか
何とか言うヤツを、必ずこの家から追い出してやるぞ!

フランチェスコがマルレーン家に逗留してから、もう三日が過ぎた。リニアはいつでもフランチェスコのそばを離れず、傷の手当やら、身の回りの世話をしていた。こうなると自然と情が恋に変わって行くものだ。リニアの両親も、正義感あふれる騎士・フランチェスコの事がとても気に入ったようで、一人娘のリニアにも、そろそろムコをもらわねばなるまい。フランチェスコは、このマルレーン家の跡継ぎにするのにちょうど良いのではないかと思い始めていた。

しかし、マルレーン家には決して公に出来ない秘密があったのだ。

ある晩の事、夜中にトイレに行きたくなったフランチェスコは、寝ぼけまなこで廊下を歩いていると、何やら人の話す声が聞こえて来たので、こんな夜更けに一体どうしたのだろうと、声の聞こえる部屋の方へ歩いて行った。

すると、とある小部屋の中からその声は聞こえた。入口のドアがわずかに開いていたので、そのドアの所へ歩み寄り、聞き耳を立てた。どうやら声の主は、リニア、そしてリニアの両親であった。

「リニアはどうなんだ? それで良いとしても、フランチェスコは果たして受け入れてくれる
 だろうか。我々バンパイア一族の秘密を。もし我々の秘密を知って、それを拒絶し、誰か
 に暴露されたなら、バラの谷の秘密を外部に漏らしてしまったとしたら・・・」

「父上様、フランチェスコの気性はもう、ご存知のはずではないですか。」

「あぁ、それは良く分かっているつもりだが・・・」

「だったら心配する事はないでしょう? フランチェスコと結婚させて下さい!」

「うむぅ・・・」

リニアの父は、深く考え込みながら、マルレーン家に代々伝わる故事を、自分で確認するため独り言のように語り始めた。

そもそもわがバンパイア一族は、人間の世をはばかり、この地へと移住して来た。それはすべてのバンパイアを、人間達が吸血鬼・ドラキュラと勘違いし、人間を襲い、人間に災いを及ぼす者として誤解したためだ。バンパイア一族は、確かに生き物の血を吸う事により、良質のたんぱく質・ミネラル・鉄分を摂取するものだが、そのために人間を襲う、ましてや災いを及ぼすと言う事は無い。

それは人間の生き血は最高に美味いがな。しかし、バンパイヤ一族は元々穏やかな一族であり、ドラキュラ一族のようなワルサはしないのだ。彼らは荒降る魂を、その身に宿した凶悪な吸血鬼だ。古来、我々バンパイア一族は、人間達との共存を願い、凶悪なドラキュラ一族と戦い、彼らに宿る荒降る魂を抜き取り、凶悪な魂をバラの花の持つ美のチカラによって封印し、それをあの谷に埋め、さらにあの谷にバラの花を栽培をして育て、花の市場に出荷してバンパイア一族は、みな生計を立てて人間と共存する事に成功したのだ。

もし、もしもだ。心悪しき者によって、バラの封印を解かれ、吸血鬼の荒降る魂がまた再びこの世に蘇ったとしたら、災いは人間たちに及び、これまでバンパイア一族が苦労して、人間と共存して来た努力が、まったくの水泡に帰してしまうのだ。

我々バンパイアには不老不死の種族だ。我々バンパイアが人間にかぶりつき、その生き血を吸えば、その人間はバンパイアとなり、不老不死の命を手に入れる事が出来る。これは寿命の短い人間達にとっては、夢のような話であり、その事を知った人間は良からぬ事を考えるようになる。

不老不死とは言っても、まったく死なないと言う訳ではない。人間に比べて寿命が数百倍も長いだけで、やがては衰えていくのだ。デーモン小暮閣下は今、10万41才だ。彼ら悪魔だっていづれは衰え、衰弱死するのだ。

何事も人間と言う生き物は、誤解しやすい。ただし、パンパイア一族は、バンパイヤ一族同士でなければ、決して殺す事は出来ない。これは何を意味するのかと言えば、一族の中に悪しき心を持った者が出れば、同種同族で合い争わねばならない。一族同士で殺し合わねばならないと言う事だ。だからこそ、心の正直でまっすぐな者が、バラの封印を守っていかなければならいのだ。

そこまで語るとリニアの父は、ノドが渇いたのか、テーブルの上にあるマグカップを手に取り、注がれているトマトジュースを一口飲んだ。

「はい、父上様のお話は幼き頃より良く、良く、聞かされて来ましたわ。ですからフランチェ
 スコこそ、われわれバンパイア一族の長として、またバラの谷と、薔薇の封印を守って行く
 人物としてふさわしい人物と思うのです。」

まぁまぁ、と言うように右手を上下に振ってリニアの父は言った。

「だから、その事は充分に承知しておると、申したではないか。フランチェスコを置いて、
 他にふさわしい人物を余は知らん。フランチェスコならば、必ずやパンパイヤ一族の秘密、
 バラの谷、薔薇の封印を守ってくれる事だろう。だが、そのためにはフランチェスコが、
 われわれバンパイヤ一族の、一員となってもらわねばならないのだ。要は、それをフラン
 チェスコは、承知してくれるかと言う話だ。」

その時だった。部屋の入口のドアが、バタン! と激しく開いた。
驚いてリニアや、リニアの両親がドアの方を振り返る。

「フランチェスコ!」

リニアが叫んだ。リニアの父は入り口のドアの前に、立っているフランチェスコの姿を見て、NON ! と首をゆっくり左右に振った。

「フランチェスコ、もう聞いてしまったのね。」

「あぁ。行儀が悪いとは思ったんだが、すべてみなさんの話を聞いてしまいました。」

リニアの父は額に手をやり、つぶやく。

「なんてこった、フランチェスコよ・・・ これで君の運命の選択肢は二通りしか無くなって
 しまったではないか。」

その言葉を聞いて、怪訝(けげん) に思ったのは、むしろフランチェスコではなく、リニアの
方だった。

「父上様? 運命の選択肢が二つしか無くなったって、どう言う事ですの?」

リニアの父はゆっくりとソファーから立ち上がり、腰に下げていたサーベルを抜いた。

「お父上様! 何をなさるおつもり?」

リニアの父は、リニアにはかまわず、フランチェスコの透き通ったブルーの瞳を、じっと見つめながら、フランチェスコに言う。

「フランチェスコ、君はすべて聞いたと言ったな。余がこのサーベルを引き抜いた意味が、
 君には分かるはずだ。」

フランチェスコは引き抜かれたサーベルを、マジマジと見据えて、まったく動じる事無く、
短く答えた。

「えぇ。」

リニアの父は、床の上に視線を落とし、ゆっくりとリニアの顔をみた。そして改めてフランチェスコに向き直り、低い声で言う。

「フランチェスコ、それならまた君に告白する手間が省けた。われわれバンパイア一族の、
 秘密を知ってしまった以上、いまここで君は Oui ou non! の二つの選択肢のどちらかし
 かないのだ。もちろんどちらを選ぶのも、君の自由だ。ただし! 君の答えによっては、
 このサーベルが、君の心臓をブスリ! と体の奥深くまで突き刺さる事になる。よくよく、
 考えてから答えるが良い。」

リニアは思いがけない父の言葉に、反射的に立ち上がり、父上様の背中に飛び掛り、父上様をはがいじめにして叫んだ。

「フランチェスコ! 逃げて! 早くこの館から逃げて!」

この娘の取った行動にあせったのは、他ならぬリニアの父上である。

「こら、リニア! 何をする! 放せ! お前はいつからこんなバカじからが出るようになっ
 たんだ! 苦しいではないか、おい! 放せ! 放しなさい! まだフランチェスコは何も
 言っていないぞ! 」

もがく父上、興奮してありったけの力をこめて押さえ込む娘! それを見て、あわてて止めに入るフランチェスコ!

「リニア! リニア! 落ち着け! 落ち着くんだ! 何も心配は入らないから!」

必死で父親をはがいじめにしているリニアを説得して、やっとの事で、リニアの腕を引き剥がしたフランチェスコ。

父上の体を離れたリニアは、ヘタヘタと床の上に座り込んだ。目じりを下げて泣きべそをかいているリニア。フランチェスコは微笑みながら、そんなリニアの事を見て息を整えた。騒ぎが収まり、静けさが戻ったが、リニアだけはヒックヒックと、しゃくり上げる息づかいで、肩を上下に震わせている。

「リニア、気持ちを落ち着けて、良く聞いてくれ。」とフランチェスコが切り出した。

「Votre chose est a aime. Si vous pouvez vous marier avec vous est,
 quant a moi il est avec n'importe quelle chose et n'interroge pas!
 Nous voulons le mariage avec moi!」

リニアが「はっ!」としてフランチェスコの事を見上げた。リニアはじっとフランチェスコの、透き通るようなブルーの瞳を見つめたまま、金縛りのように体を動かせない。
リニアは驚きを隠さず、フランチェスコに言う。

「C'est vrai ? Le fait qui, vous obtenez s'est marie avec moi, vous
 devenant le vampire, doit accepter tout. Vous ne regrettez pas ?」

フランチェスコの顔の表情は、少し険しくなったが、リニアへこう答えた。

「Il est, a compris entierement. Mariez-vous svp avec moi !」

リニアは歓喜して叫ぶように即答した。

「Il est delicieux ! Vous etes cru !」

そんな二人の事を傍観していたリニアの父は、サーベルを持つ手にギュ!っと力を込めて、
フランチェスコに語りかける。

「フランチェスコ、よくぞ言ってくれた。君のような、心の広い若者にめぐり合えた事は、
 余のみならず、我らバンパイア一族の喜びである。感動した!」

リニアの父上様は、たいそうお喜びになり、リニアに祝福の言葉を述べ、フランチェスコ
の気が変わらぬうちに、バンパイア一族の一員となる儀式を、この場で行えと言った。

「えぇっ! この場でと言われても・・・ 恥ずかしいし、そう言う事は、フランチェスコと
 二人きりで、しないと・・・」

リニアは顔を赤らめた。

「リニアよ、何か心得違いをしてはおらんか? フランチェスコを、バンパイア一族の仲間
 として迎え入れなさいと言っているのだ。」

はっ! と気が付いたリニアは、「そ、そうか。」とフランチェスコを見る。

フランチェスコはマルレーン親子の視線を一身に受けて足がすくんだ。
要するに、今ここで自分はリニアから血を吸われ、人間じゃなくなると言う事なんだな。
自分もバンパイアとして生まれ変わると言う事なんだな。

と分かってはいるが、いざ本当にそうなると思うと、田舎に残して来たお母ちゃんの、優しい面影が脳裏をかすめる。自分が愛した女が、まさかバンパイアだったなんて、誰が考えるだろうか。魔が差したとは言え、勢いでカッコのいい事を言ってしまったが、ど〜しよう!
逃げるなら今のうちだ! ちょっと急用を思い出したとか何とか言って、トンズラしようか。しかしなぁ〜、あれだけ大ミエ切って偉そうな事、言っちゃったしなぁ〜。

血を吸われるのって、やっぱ痛いんだろうなぁ・・・ ちゃんと血を吸う前に消毒してくれるのかなぁ、出来れば全身麻酔を・・・ それが無理なら、局部麻酔だけでも・・・

「フランチェスコ? 何を一人でブツブツ言ってるのですか? 」

「あぁ、いや、べ、別に。」

リニアが立ち尽くしているフランチェスコの背後に回り込む。そしてフランチェスコの体を、両手で包み込むようにしてから、フランチェスコの耳元で小さくささやく。

「フランチェスコ、あなたは勇ましい騎士。勇敢な男。バンパイア一族の首領となって、未来
 永劫、薔薇の谷と、その封印を守り、一族の平和と安泰のために、永遠に生き続け、戦い
 続けるの。」

うわぁ・・・ 勇敢とか、騎士だとかおだててるけど、何だか怖い!
薔薇の谷や封印を守るのはいいけど、未来永劫ってのはどうなのかなぁ。

それに、永遠に生き続ける・・・ そうか、死ねないって言うのは、決して幸せな事じゃなくって、むしろつらい事なんだぁ。そりゃそうだよな、自分の行き方を失敗したとしても、人生のリセットが出来ないと言う事だもんな。パソコンだって定期的に初期化しないと、壊れちゃうじゃん。

「フランチェスコ、心の準備はよろしいかしら? 今までの男達は、みんなここで逃げ出した
 のよ。急用を思い出したとか言ってね。あなたは本当に強い、男の中のオトコよ。
 惚れ惚れするわ・・・ 動かないで! さぁ、痛くないからねぇ・・・ 少しの間、おとなし
 くしているのよ。すぐに終わるからねぇ〜」

フランチェスコは、リニアのささやきに自分の耳を疑った。

なに? 今までの男達って? どう言う事? 先客がいたって事? 自分は何番目な訳け?
マジ? リニアってあんな可愛い顔してるけど、本当はそう言う女なのかしら?
えぇ〜? だとすると、もしかして、最初からこう言うシナリオが出来ていて、オレは飛んで火に入る夏の虫って事? マルレーン親子はグル? 仕組まれたワナ?

「フランチェスコ? 今何を考えているの? 急用を思い出したりしてないよね?」

「今、急用が無いかと思って探してるんだけど、見つからない・・・」

「素晴らしいわ。これでバンパイア一族の悲願が叶うんだわ。フランチェスコ、
 愛してる・・・ とっても。」

リニアの真っ赤なくちびるが、薔薇の谷でフランチェスコが倒れてるのを見つけた時のように、フランチェスコの首筋に触れる。リニアは治りかけていたフランチェスコの傷の上を、ペロリと柔らかい舌で、一度舐めた。フランチェスコはあの時と同じように、後ろを振り返ろうとするが、やはりリニアの両腕がフランチェスコの頭を押さえていて、振り返る事は出来なかった。

リニアは、一度フランチェスコの首筋から、くちびるをわずかに放し、今度は、今舐めたフランチェスコの首筋に隠していた牙を立てて、フランチェスコの体の奥深く、それを突き刺して行ったのだった。

リニアの白いつややかな肌をしたのど元が、ドク、ドクと脈を打つように盛り上がったり、引いたりしている。フランチェスコは、リニアに抱きかかえられ、指先や足のつま先がしびれて来るのを感じながら、少しづつ意識の遠のいて行く中で、幻覚を見ていた。

それはフランチェスコが幼い頃、いつも優しかった母親に抱かれ、「ボク、大きくなったら、十字軍の騎士になるんだ。十字軍の騎士になれば、たくさんの財宝がもらえるから、それでお母ちゃんに楽をさせてあげられるもん。貧乏は嫌だ! ボクを育てるのに、いつもお母ちゃんは働き詰め。それなのにほんのちょっとしか、お金はもらえないでしょ。ボクねぇ、早く大きくなって、十字軍の騎士になって、お母ちゃんが働かなくてすむように、「楽」をしていられるようにするの。」

フランチェスコはくちびるをわずかにゆがませて、口元だけで笑ったのち、意識を失った。

一方、フランチェスコの血を吸い、代わりにバンパイアの魂を吹き込んだリニアは、床の上に倒れこんでいるフランチェスコのとなりに、寄り添うように座り、眠っているフランチェスコの寝顔を見ている。

リニアの父は、儀式の一部始終をイスに腰掛けて見ていたが、飲み残してあるマグカップのトマトジュースを飲み干して、リニアに語りかける。

「リニア、フランチェスコは良い男だな。彼の事を心から信頼し、お前の一生を彼に捧げるが
 良い。彼は自分の命を我々バンパイア一族のために、捧げてくれたのだ。フランチェスコの
 事を裏切る事は、我々バンパイア一族すべてを裏切る事に他ならない。明日からフランチェ
 スコとお前の婚礼の準備をせねばな。まずは一族の皆を集め、記者会見をしよう。幸せは皆
 で分かち合うものなのだ。まずはめでたい!」

リニアはまだ眠っているフランチェスコの手を取り、喜びに涙を流しながら、フランチェスコのくちびるに、そっと優しく口付けをした。するとフランチェスコが、ピクピクと痙攣をし、それが収まると閉じていたまぶたをゆっくりと開けた。

焦点の定まらない目を開けたフランチェスコは、ぼやけた視界の中に、自分の事を覗き込むようにして見ているリニアの顔が、徐々にハッキリ見えて来た。「泣いている・・・ リニアが涙を流している。」フランチェスコは、誰がリニアの事を悲しませたんだと、体を起こそうとしたが、まだぐったりとした体は、思うように動かず、再び倒れこむ。

リニアはとっさにフランチェスコの体を支えた。

「フランチェスコ、目が覚めた? 気分はいかがかしら? まだすぐには起きられないから、
 しばらくそのままでいいのよ。ゆっくりね。」

「リニア・・・ ボクは? ボクは君と同じ、バンパイアになれたのか? うぅ、やけに体が
 重いし、熱い・・・ 」

リニアはフランチェスコの頬に手のひらを当てながら言う。

「フランチェスコ、大丈夫よ。体の中の反応が納まれば、今まで通りのように動く事が出来
 るわ。それよりも、本当に後悔していない? 」

「何を言うんだ! ボクはすべてを承知した上で、君と君の一族の宿命を背負った。迷いや
 後悔などあるはずがないじゃないか。ボクはボクの命を賭けて未来永劫、君を守る!
 薔薇の谷を、薔薇の封印を、守り抜く! 愛してるよ、リニア・・・」

「うっ・・・」リニアは言葉にならない感情が込み上げ、まだ思うように体の動かない、
 フランチェスコの事をきつく抱きしめたのだった。


第三章 「ミカエスの謀略」へ続く

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[フランス語の部分の訳]

「君の事を愛しているよ。君と結婚出来るのなら、僕はどんな事でもいとわない!
 僕と結婚して欲しい!」

「本当ですか? 私と結婚すると言う事は、あなたもバンパイアとして、すべてを受け入れる
 と言う事なんですよ。後悔しませんか?」

「はい、何もかも理解しています。僕と結婚して下さい!」

「うれしい! あなたの事を信じます!」



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