もずのわくわく劇場日記 No.133


2005年 1月 9日 (日) 川崎ロック座

新庄 愛 編「 女がペルソナ(仮面)をはずすとき 」



私がしばらく行かないうちに、すっかり広々とキレイになった川崎駅前広場。
ガヤガヤとした人の雑踏の中に私は埋もれていた。
通いなれた道も、今ではだいぶその趣を変化させ、いつの間にか音も無く時は流れていた。

私がまだストリップについて何も知らないまま、竜宮城のような川崎ロックに夢中で通っていた頃、何人も入れ替わり立ち代りステージに登場する華やかな踊り子達の中で、ひときわ大きく輝いて、そして何か胸騒ぎを覚えるデンジャラスな踊り子がいた。

私の目に彼女は特別な人として映った。それが今にして思えば「新庄 愛」だった。
もっとも、その頃は違う名前だったが・・・

渡辺理緒嬢の応援をするようになり、ある時渡辺理緒嬢と新庄愛が実の姉妹のように仲良しで、しかもチームを組むと言う事を聞いた時は、さすがにあわてた。あのすごい二人がチームを組む? 一体どんな事になるんだ!と。

今日は「新庄 愛」を見るために、私は川崎ロック座に来た。「新庄 愛」のステージが、めちゃくちゃ見たくてたまらなかったんだ。「新庄 愛」のダイナミックで切れのあるダンス!
あれは何にも例えようのないくらいスリリングで、ミステリアスでドラマチックだ。

先日の道後遠征の時、私には何かモヤモヤとしたものが気持ちの中にあったのだ。
それはあの時出演していた、それぞれの踊り子さんが良くなかったと言う事ではなく、香盤をトータルして全体の流れを振り返ると、圧倒的に考えながら、考えながら、じっくり、見なくてはならない出し物が続きすぎた。

決してそれが悪いと言うのではない。がしかし、正直に言って疲れる。私個人的にはもっと、シンプルで爆発するような、エネルギッシュな理屈抜きに興奮出来るような、ロックコンサートのようなダンスが見たいと思った。

そんな私の欲求不満を満たしてくれる踊り子・・・
ロックコンサートのように、心のおもむくままにトランスさせてくれる、魂で踊れる踊り子。

それはとてつもなく、ハイレベルなダンススピリットを持っている人でなくてはならない。
今のこのモヤモヤとした私の心を、完全に満たしてくれる踊り子は誰だ!
それは「新庄 愛」の置いて他にはいないのだ!

人知れず、そんな想いを胸に抱いて「新庄 愛」の出ている川崎ロック座に私は向かった。

それはもう、並たいていな踊り子では満足できないと言う、ものすごい期待を抱き、爆発寸前の強烈な想いなのだ。

新庄愛さんは、まさか私がこんな事を思いながら、今日会場内にひそんでいるなんて事は、
まったく知るよしも無く、いつもの通りステージに立つ事だろう。それでいいのだ。

私には「新庄 愛」がきっとこんな欲求不満でいる私を、必ず開放し、熱く燃焼させてくれると確信しているからだ。

----- いよいよ新庄愛がステージに立つ!

客席の一般客にまぎれて、私は暗闇で息をひそめている。心臓がバクバクしてパンクしそうだ。早く出て来い、新庄愛! 狂おしいこの気持ちを、お前のアグレッシヴなダンスでどこかへ吹っ飛ばしてくれ!

新庄愛は嵐の集中豪雨で持ち応えられなくなったダムが決壊するがごとく、いきなりハジけ跳んだ! 激しいドラムビート! 光る稲妻の閃光! ステージの床にブチ当てるステップ!
風を切る両腕の動き! 私が求めていたのはこれだ!
こんなダンスが踊れるハードダンサー 新庄愛!

ショッキングピンクのジャケットにアンダーウェアは黒のレザーのつなぎスタイル、黒いダンスブーツ。そしてジャケットと同じショッキングピンクの細いベルト、パンツの部分はワイヤーメッシュになっている衣装を振り乱して攻めのダンス!

激しいスピンターンを繰り返しながら、ステップ&ジャンプ! インクリネーション! 体を傾けてシェイク! 体を振ってサイドスライド! Movin' on ! まさに神がかりなダンスシーン! 床を踏み鳴らしながら花道を進み、盆にいでると間髪を入れずに振り返り、ショッキングピンクのジャケットをスパッ!と背中に Take off! 絶妙なタイミングでそれを羽織り直す!

も〜ぅ、たまらん! Go! Go! 新庄愛!
あまりのカッコ良さに私は失神寸前! トランス状態だ!

すっかり新庄愛のダンスに魅了されている私のとなりの席に座っていた、初めてストリップを見に来たと思われる若いお兄さんが二人いた。

その若い衆が座席から身を乗り出すようにして、二人で何か言っている。
それはお互いに興奮した声で、相手に言っているようでもあり、また一人で叫んでいるようでもあり、どちらとも、ちゃんとした会話になっていない。

「すげぇ〜! めっちゃカッコイイーッ!」
「今まで出て来た人とは全然ちがう!」
「ウォー!」
「な、なんて言う人だ?」
「イェーィ! わ、わっからん! わからんが、すげぇ〜!」
「どッかに名前書いてねぇのか?」
「ストリップってこんなにすごいもんなのか?!」

私はそんな彼らの言葉を聞いていて、もうおかしくって思わず笑ってしまった。
そして、おぅ!江戸っ子だってねぇ〜 まぁスシくいねぇ、酒のみねぇ〜
誰がカッコイイって? はっはっはっ♪

なんだか自分がほめられたような気分になって、すっごくうれしかった。
そうさ、あれが「新庄 愛」さ。すごいだろう♪
彼女のステージは理屈抜き!ストレートに魂に切り込んで来る。
でもそれだけじゃないのさ。まぁ見てなって♪

ステージに勢い良く戻った新庄愛は、着ていたショッキングピンクのジャケットを完全に脱ぎ、それを手に持って、振り回しながらのダンシング。胸元のネックレスがまばゆく光る。

新庄愛のハードダンスは収まる所を知らない。これでもか! と言うほどに攻め立てる。
手拍子を叩く手のひらが真っ赤に染まり、かゆくなって来たと感じた頃、曲はエンディングへと流れ、それとシンクロして新庄愛はぴたっ!とフィックス、フィニッシュとなった。

拍手喝采!

やや間が開き、暗転して静かに流れ出す二曲目。

新庄愛が消えたステージを淡く照明が遊ぶ。

一曲目とは打って変わってピアノのソロフレーズに、ストリングスが寄り添い合うように奏でるアンサンブル。するとシモテの幕より新庄愛がゆっくりと現れる。とても切ないしんみりとした場面だ。

新庄愛は淡いブルーのショールをマチコ巻きにし、顔の上半分を隠す白いペルソナ(仮面)をつけている。それはアンサンブルローズの第三作品目での一場面でつけていた仮面と同じ質感のものだ。ただ形は違い、額から鼻までを隠し、右の反面は長く逆三角形に頬まで覆いかぶさっている。そしてその白い仮面のない新庄愛の口元には、鮮やかな真紅のくちびるがまぶしくその存在を際立たせていた。

そして腰の所にも四角い布を対角線に折り、スカートのようにして巻いている。
新庄愛の素足が、物悲しげに一歩一歩ゆっくりとステージの中央に向けて歩みだす。
BGMはしっとりと男の甘く切ない歌声で、語りかけるように歌い上げるバラード。
ピアノは一小節に四分音符四つのパターン。

------- Sing a Song

  最後の言葉を 探していたのはあなた
  私は震え 心抑えて 想い出話 くり返す
  いつもと同じね 透き通るあなたの声は
  空っぽの私の胸の中に 溶け込んで行きます

ほんの少し歩いてはふと立ち止まり、顔をふせてはまた歩き出す。いつかはこんな日が来るかも知れないと思いつつ、心のどこかで怯えながら、彼の背中をじっと見つめる。
そんな繊細な女心をいじらしく表しながら、新庄愛はBGMの歌詞を人差し指でなぞるように、マチコ巻きの結び目を力なく握る。

  ありきたりの別れはしたくなかったの
  涙で幕を降ろすような
  紅い口紅で 鏡に書くけど
  文字にならない エピローグ・・・

花道を歩きながら、歌詞の「紅い口紅で」のところで、自分の真っ赤なくちびるを、左から右へと人差し指でゆっくりと口紅を塗るしぐさで触れる。そこがたまらなく切なくて、胸がちぢむ想いだ。

なぜこんな事になってしまうのか、お互いに必要とし、愛し合っているのに。
彼はなぜこんなに必要とされているのに、別れようと切り出してしまうのか。
そして彼女はどうしてそんなに簡単に、彼の言葉を受け入れてしまうのか・・・
おっと! 思わず新庄愛の演技に引き込まれ、まじめに考え込んでしまった。

そんな時、新庄愛は頭のマチコ巻きを取り去る。そして今まで付けていたペルソナ(仮面)を、そっと両手で押さえて外した。何か気持ちに変化があったのだろうか。さらに、腰に巻いていた布を外し、両手で広げて高くかざした!

どうやら彼女の心の中で波打っていた気持ちが静まり、何かが芽生え始めたようだ。

それは、かねてよりいつの日かやって来るであろう物語のエピローグ(終章)。
恐れていたことが現実の形となり、いかんとも動かし難い現実となって目の前にそびえ立っている。彼女はそれを見上げながら、ポジティヴな気持ちでその事実を認めたのだ。

BGMの歌詞にあったように、「ありきたりの別れにしたくはなかったの」
そう、すでに心の準備は出来ていたから。気持ちの整理が着いていたから。
物語の幕切れにふさわしい形を求めていただけ。

オンナは強し! しかし、こうなると彼女に別れ話を切り出すにつけ、彼女を極力傷つけないようにと、デリケートに哀愁をさそって演じた彼の立場は・・・ ははは♪ ご苦労様としかいいようがないな。(笑)

曲が変わり、無限の宇宙空間にふわりと浮かぶようなスケール感のある場面になる。

新庄愛はステージの中央、バックスクリーンの下で客席に背を向け、うずくまって衣装を代える。ここからベットが始まる。

白く透けた着物の大振袖を、ハラリ! とはおり、銀の飾りのついた幅の狭い帯を腹に巻きつける。曲の盛り上がりに合わせて立ち上がると、ペルソナ(仮面)を付けていた顔の右半分、
手のひらをすぼめてそっと押さえる。

その仕草は、すでに終った物語を確かめるようでもあり、また、しばしの感傷にひたるようでもあった。

このシーンは何かこう・・・ 男としてはちょっと救われたような気分になった。
だって気を使って一生懸命哀愁を演じたと言うのに「はいそうですか、ではさようなら。あなたの事は振り返りません、何も無かった事にします。じゃぁ元気でね!」
それじゃぁねぇ〜 いたたまれない。そうでしょ?(笑)

新庄愛は花道へと向かう。そしてその途中、歩きながら大振袖の袖を内側からクルリ! と返して一度手首に巻きつけ、さらに歩きながら足元のスソを広げるようにして、両手で持つ。
そのまま盆へとたどり着くと、盆にはべる。

やわらかく倒れこんだ新庄愛は、帯を解き、体をくねらせながらベットを踊り、解いた帯を両手につかんだまま、縛られたように手首に巻いた。それらの仕草は、これまでに起きた出来事で乱れた心のほころびを、一つ一つ、丁寧に錦の糸でつむぎ直しているように見えた。

そして曲が進み、徐々に盛り上がり、宇宙空間にフローティングマウントされていた着物姿の新庄愛が、次第に地上に舞い降りて来るように、次々と得意のポーズを放つ。

突然、曲がサビの部分でラジオトーンに切り替わり、ブリッジから片足を上げた新庄愛が、
すくっ!と立ち上がり、大ミエ切って場内大拍手!

かくして新庄愛は、生まれ変わって新しい明日に向かって一歩づつ着実に歩いて行く。
客席の熱い感動の涙を誘いながら、ステージへと戻って行った。

・・・ベットなのに、どうしてこんなにもカッコいいんだろう。
甘ったるく漠然としたイメージ、そしてポーズを切るだけの、ヤワなベットなんかじゃない。美しいとか、きれいだとか、そんな事はもはや問題にしない、キリッ! と一本筋の通った
しっかりとしたベット演出だと思った。

ベット演技を見て美しいとか思う事はよくあるが、カッコイイ! って感じたことは今までほとんどないんじゃないかな。改めて新庄愛のすごさには脱帽だ。

暗転の後、オープンショーへと続く。

耳をつんざくオーヴァードライヴ・ギターが、ワイルドなフレーズをかき鳴らす!
満を持してステージに飛び出したのは 新庄愛!
まぶしい裸身に白いハッピだけを一枚はおり、ジャンプ!
客席のお兄さんも、オッサンも、世代を超えて叩く手拍子・足拍子!

キリリ! と結んだ新庄愛の口元も思わずほころび、さらに気合を入れて踊る、走り回る。
ヒザで、腰で、カウントとリズムを取りながら、鬼神、雷神、ヤマタノオロチ。
神がかりなダンスパフォーマンスを惜しげなく披露してさらにポーズを切る。
そこへシモテから、カミテから津波のように投げ込まれるリボンの数々。

とてもじゃないが、これはオープンショーなんかじゃない!

そうなんだ! これはまさしく「アンコール!」だ! みんな新庄愛の過激なハードダンスが
見たいのさ。新庄愛は、それを判っているからこんな風になる。

稲葉浩志のヒステリックな高音が、スリガラスに爪を立てるようにシャウトする。
鳥肌が立つ! 新庄愛がヒザ立ちになって両手を叩く。

タッ、タッ、タタタン! タタタ、ン・レッツゴー!

おうそうか、とみんな感じ取って、同じように手を叩く。

タッ、タッ、タタタン! タタタ、ン・レッツゴー!

新庄愛は勢い良く立ち上がり、Y字バランスのポーズの後、ステージに戻って フニッシュ!

「ありがと〜 ございましたぁ〜! ゼイゼイ・・・」

そう言ってペコリ! と一礼した新庄愛だが、ゼイゼイ・・・ かなり息を乱して、大きく肩を上下させている。それくらい激しいアンコールだったのだ。それなのに、いつの間にか客席にひそんでいる私を見つけていた新庄愛は、ステージからこう叫ぶ。

「もず、ゼイゼイ・・・ さん、ゼイゼイ・・・・ 来月は、ゼイゼイ・・・ また頼むよ!」

「はぁ〜い!」

そう言って私は新庄愛に応えたが、なんだか感無量だった。新庄愛の言う「来月」とは、2月頭のDX東寺での、「TEAM アンサンブルローズ」の事にほかならない。この時点で私の京都遠征は、必須のスケジュールとなった。

こんなにまで私の当初の期待を、はるかに超えたハイレベルな所でフラストレーションを払拭してくれた新庄愛。それだけでも充分過ぎると言うのに、息を切らして「もずさん来月もまた頼むよ」と・・・

もう言葉が出やしない。必ずや「TEAM アンサンブル・ローズ」のレポート、書かさしていただきます! ホント、本日はお世話になりました。

もう一度、素晴らしきハードダンサー 新庄愛さんに大きな拍手を〜!



[ INDEX ] [ 観劇日記 ]