もずのわくわく劇場日記 No.140-2


2005年 6月 10日 川崎ロック座

新庄愛&渡辺理緒 TEAM SHOW!
アンサンブル・ローズ レパートリー Vol.5

「運命の二重奏(デュエット) 」



第一章 第二景 「勇ましき若侍」


「お〜い! 皆の衆ぅ〜! また誰か魔物に喰われてるぞ〜!」

なんだなんだと村人達が、その声の聞こえる鎮守の森に集まって来た。
あっという間に人垣が出来、村人達は口々に哀れな姿になった仏に、南無阿弥陀仏と念仏を唱えていた。すると、その村人達をかきわけて、庄屋様が仏の前に出る。

「おぉ、こ、これは・・・何と言う哀れな事になってしまったんだ、この足の甲にある大きなホクロは、間違いなくゆうべウチに来ていたタツではないか・・・ 何と言う無残な姿になってしまったのだ。ワシの話がすっかり長引いてしまったために、タツは魔物の餌食になってしまったのか。す、すまん・・・ すまん事をした。タツよぉ、タツー!」

庄屋様は頭も体も魔物に喰われて無くなり、バラバラに散らばっている、タツの両手両足をかき集めて号泣した。村人達は口々に「恐ろしい事だ、哀れな話だ。」と言いながら、いつ自分も魔物に襲われ、タツのように喰われてしまうのではないかと言う恐怖に体を震わせた。

田んぼのあぜ道を、一人の若侍が気ままに歩いている。この辺りでは見かけない顔だ。
猫じゃらしを一本道端で引き抜き、それをもて遊びながら気分良さそうにしている。
その若侍がそうして歩いていると、何やら大勢の村人達が、この村の村社と思われる神社の境内に集い、ガヤガヤとしているのが見えた。若侍は「おっ? 祭りか♪ 楽しそうだな。どれ、どうせヒマな身の上だし、一丁オレも仲間に入れてもらうとするかな♪」と、スタスタと足取り軽く、小走りに歩いて行った。

タツの思わぬ死に、庄屋様をはじめ村人達が何か相談事をしている。

「庄屋様ぁ、このままでいいんですかい、もう何人もの村人が魔物に喰われて死んだんだ。
これじゃオラ達もいつタツみてぇに魔物に喰われるか、とてもじゃねぇが怖くていられねぇですよ!」

んだ、んだ! と村人達は口々に叫ぶ。庄屋様は顔をゆがませて、村人達に言う。

「私だってそれは皆の衆と同じ気持ちだ。しかしなぁ、魔物は姿を現さない。第一、魔物が
何者なのかさえ分らないんだ。どうすればいい! 魔物を成敗し、討ち取れるような屈強な者がこの村にいないのか。」

庄屋様の言葉に、村人達は口を閉ざし、みなうつむいた。

「弥助、お前、魔物を退治してくれるか? 五平、お前はどうだ? 茂平、お前は? そうだろう、私だってこの村の長(おさ)をお上から任されている身。この村のみなを、むざむざ魔物の餌食にさせるような危険にさらしたくない。」

と、そこへ一人の若侍がやって来た。

「おい、祭りならオレも仲間に入れてくれないか♪ にぎやかな事は大好きなもんでな。」

突然の声に、庄屋様も村人もその声の主の方を振り返る。

「ん? どうした、みんな元気ないな? 祭りだろ? 葬式でもあるまいに、シケた顔しているじゃないか? ほれほれ♪ にぎやかにパァ〜! とやろうぜ♪」

この村では見た事のない若侍の突然の乱入に、庄屋様も村人もあっけに取られている。若侍はどうも様子がおかしいと気がついた。もしかしたら場違いな所へ参上してしまったかと、まわりを見回した。

「あれ?、祭りじゃなかったみたいだな。そうか、それなら拙者は退散するとしよう。
一同の者! ご無礼つかまつった! ではこれにてごめん!」

そう言って若侍は、くるりと村人達に背を向けると、元来た方へ歩いて行く。
立ち去って行く若侍の背中を見ていた庄屋様は、はれぼったいまぶたの奥で目を光らせた。
これは良い考えだ♪ あの若侍はこの村の者ではない。仮に魔物と戦って、首尾よく魔物を退治出来ればこれ幸い。だが万が一、魔物に破れ餌食となって喰われたとしても、この村には何の問題も起こらない。うむ、我ながら妙案だな。

庄屋様は去って行く若侍の後を、あわてて追いかけた。

「もし! もし! お侍様! 少々お持ちくだされ!」

若侍は不意に呼び止められ、足を止め振り返った。

「なんじゃ? 祭りではなかったのだろう、訳もわからず出しゃばってすまなかった。とんだ無礼をした、さらばじゃ。」

「あぁ!」と庄屋様は、あわてて若侍の着ている着物にしがみつき、力ずくで待ってくれと頼み込む。いきなり自分の着ている着物を引っ張られた若侍は、狼狽して庄屋様を振り払おうとするが、必死に食い下がる庄屋様にブチ切れて、腰のものを抜き払い、殺気だって言い放った。

「こーらっ! 寄るな! 触るな! 命欲しくばさがりおれ! 命いらねばそこへ直れぃ!
そっ首打ち落としカラスのエサにしてくれる! えぇ〜い! 頭が高い、この紋所をなんと心得る! 甲斐源氏・武田氏の祖・源義光、またの名を新羅三郎義光公から数えて十五代、その家臣から数えて三代目、新庄愛之介と知っての狼藉か!」

庄屋様は意外な展開に恐れ入り、やっと手を放して道端にひれ伏した。

「へへぇ〜い! これはこれはご無礼の段、平に! 平にお許し下されませ!」

若侍は大ミエ切って、振り上げた刀をサヤに納め、落ち着き払った声で重々しく言った。

「一同の者、面をあげぃ。その方の狼藉、神妙にいたすなら事をあらだてまい。この度のみ許してつかわす。さらに、拙者に申し開きしたき事あれば、聞いてとらそうぞよ。なんだ?」

一代目が新羅三郎・・・二代目・・・三代目が・・・十五代目? その家臣から三代目?
はて? とどのつまり、誰なんだ?

「これ! 深く詮索するべからず! 侍とはそう言うものなのだ。で、なんだ?」

庄屋はこの村に起きている魔物の事をカクカク、シカジカと詳細に説明した。すると若侍、新庄愛之介はそれは実に困った話であるなと言い、「ではさらばじゃ!」と立ち去ろうとするので、庄屋は「お待ち下さい!」と若侍の着物にしがみついた。

「こーらっ! 寄るな! 触るな! この紋所をなんと心得る! 甲斐源氏・武田氏の祖・源義光、またの名を新羅三郎義光公から数えて・・・」

と言ったところで、庄屋がさえぎる。
「十五代目の家臣のその三代目でございましょ? 」
若侍は、「わかれば良い♪」と笑い、それに続く庄屋の話を聞く事になった。

庄屋は話の続きを始める。

「お侍様、いや、新庄愛之介様、どうかお願いでございます! あなた様の事を男と見込んで、お頼み申します! なにとぞこの村に住み着く、ふらちな魔物を成敗して欲しいのでございます。今のままでは村人達は安心してこの村で暮らしていけません。どうかあなた様のおチカラで、村人のために魔物を退治して下さいませ。見事魔物を討ち取っていただいたあかつきには、村をあげて盛大な祭りをやりましょう。」

じっと目を閉じて聞いていた若侍・新庄愛之介は、祭りと聞いて目を開けた。

「魔物を討ち取れば、村人は安寧な暮らしを取り戻し、祭りをやると言うのだな。
祭りは楽しいぞ♪ よし、委細承知した! すべて拙者が引き受ける、皆の者! よっく聞け! 魔物などこの新庄愛之介が来たからには、もはや討ち取ったも同然、今夜のうちに魔物を成敗するので、皆は祭りの用意をいたしておれ。」

その言葉に庄屋をはじめ、村人達は歓喜の声を上げた。

「庄屋様、なんだか怪しい侍ですが大丈夫なんですかいねぇ?」

「茂平、心配する事はない。あの怪しい若侍が首尾よく魔物を討ち取れればそれでよし。
万が一、食い殺されたとて、村には何の関係もないどこかの馬の骨だ。首尾よく魔物を討ち取ってくれればそれでいい。」

果たして庄屋の思惑通り、新庄愛之介は魔物を討ち取れるのであろうや・・・


次回 第二章・第一景へ続く



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