もずのわくわく劇場日記 No.146-1


2005年 9月21日〜30日 若松劇場

渡辺理緒・薔薇の封印 秘話 編


私にとっての初日、23日のお話。

リオさんの二回目のショーが始まる。今回のリオさんはトップ、出し物はご存知
「薔薇の封印」である。今週は、1・3回目が「ギャンブラー」、そして2・4回目
が「薔薇の封印」と言う二つの作品を上演している。

休憩時間が明け、場内アナウンスが流れたあと、暗幕が左右に分かれてリオさん
が登場する。・・・はずだった。


ところが、いつものようにリオさんが薔薇の封印の衣装を着て、カミテにスタン
バイしようと、シモテからステージの上を歩いていたら、突然幕が開いた。

ひゃぁ〜!まだ、まだだよ! と、リオさんがあわてる。
もう一度幕が閉まる。(爆♪)

カミテにスタンバイするために、ステージの上をツカツカと歩いているリオさん
は、その時すでに、キッチリ! マントを体に巻いて歩いている。

多分この時に、気持ちを高めて雰囲気作りに入ってるんだろうね。

ここはバラの谷、ミハエルが薔薇の封印の十字架を引っこ抜いて、事件が始まる。
・・・そうだ、あたしは紫吹淳、フランシスよ! みたいなね。

私はカミテのクーラー前、応援席にスタンバイ。
幕が開くのをタンバリンを握り締めて待つ。

前方にはTちゃんがリボンをセッティングし、やはりタンバリンを握り締める。

二人リオ隊。


そして、ピアノのイントロが静かに流れ始め、幕が左右に分かれた!

リオさんが青い薔薇の花を一輪、前方に突き出して登場する!

ピアノのイントロからヅガーン! と言う雷鳴がとどろき、英語のヴォーカル
バージョンの曲につながる。

チャ〜ラ、チャ、チャッ、チャ、チャ、チャ〜ラ、チャ〜、チャッチャ、チャン♪
激しく踊り出す渡辺理緒! 一斉に浴びせかけられる照明! 嵐を呼ぶタンバリン!

いいなぁ〜 この曲♪

この曲のCDはアマゾンで売っているが、同じバージョンのものは、アマゾンでは
売ってないそうで、リオさん自身もこのバージョンのCDは持っていないらしい。


ではなぜ? この曲を渡辺理緒さんが使えるのか。

それには愛と、感動の秘話があったのだ。

私も今回、この話をリオさんから初めて聞いたんだけど、せっかくだからちょっと
お話しようか。


踊り子にとって曲と言うのはとても大切な物である。
ステージで自分の魅力を最大限に表現出来る曲を探すのはとても大変なもの。
ある意味、曲と言うのは踊り子の命とも言える。

できるだけ他人が使ってない曲、みんなが知らないようなものを地道に探し、
色々なCDを聞き重ね、その膨大な数の曲の中から、自分のステージに使える曲を
選曲し、いつかこの曲を使おう、この曲が使える作品を作ろう。

と、ストックしたり、大切に温めておいたりするものなのである。


ストリップの踊り子でないが、リオさんの一番弟子になった女の子がいる。

その女の子は先に述べたように、自分が使うために、ある一曲を大切にストックし
温めていた。


それはその子にとって、とても大切な一曲である事は間違いないのだ。

誰にもこの曲だけは、使わせたくない!
いつか私はこの曲で、最高のステージを演じてみたい!

お客さん達から鳴り止まない大きな賞賛。
そして賛美の拍手を、私だけのものにするんだ!

その踊り子である女の子は、果てしない踊り子としての野望を胸に忍ばせていた。


そんなある時、たまたま渡辺理緒が踊るステージに出会う。

渡辺理緒はステージの上を、そこはまるで別世界であるかのように、空気を変えて
しまうオーラを発散しながら、鮮やかで優雅な身のこなしをもって、演じる踊りの
深さを、惜しげもなく表現しながら踊っていた。


その女の子は、そんな渡辺理緒のダンスを目の当たりにし、体中に衝撃が走った!
言葉を失い、食い入るように、渡辺理緒の演じるダンスに見入る。
渡辺理緒の何もかもが、自分とは全然別の次元のように思えたのだ。

こんなに感情移入のすごいダンスを踊り終え、渡辺理緒と言う人はステージを終え
ると、あっけらかんとした、気さくな感じで「お疲れさま♪」とサラリと声を
かけて来る。

女の子は口には出さないが、この人は本物の踊り子なんだと思った。
踊る才能のある人だと思った。

この時からこの女の子の、渡辺理緒を見る眼が変った。
それは踊り子・渡辺理緒への憧れであり、尊敬である。


その子はどうしても、この人について行こうと強く思うようになり、やがて渡辺理緒
の一番弟子として、弟子入りする事となった。


師匠の渡辺理緒のダンス指導は、いつも最後までじっと黙ったまま見ていて、じっくり
考え込んでから、「あそこはこうしよう、ここの所はこう踊ろうか。」と静かに冷静に
助言するもので、その人の持っているオリジナリティーと、潜在能力を最大限に発揮さ
せる的確な指導だった。


そんなある時、渡辺理緒の弟子となったこの女の子が、一枚のMDを持って来て、師匠
の渡辺理緒を見つめながらこう言った。


「ママ・・・」

「ん? 何かしら?」

「このMDの曲、ずっと前からいつか自分のステージで使おうと思っていたの。」

「ふぅ〜ん。じゃぁ、レッスンしっかりして、早く使えるようになろうね。」

「でも・・・ この曲は、どうしてもママに使って欲しいと思って・・・」


「あなたが大切にしている曲なんでしょ?
 自分で踊れるって思うまで、大事にとっておきなさい。」


そう言われて、その子は首を大きく横に振る。
渡辺理緒は、その様子を見て何かあったのかな? と思い聞いてみた。


「どうしたの? 大丈夫よ、あせらない♪
 じっくりと自分のペースで練習すれば、あなたならちゃんと踊れるから。」


女の子はしっかりとした視線で、渡辺理緒の顔を見つめながらもう一度言った。


「この曲はどうしても、ママに使って欲しいんです。
 この曲でママに踊って欲しいんです!」


渡辺理緒は、その言葉に並々ならぬ「強い想い」を感じて、しばらく女の子を
見つめていたが、女の子から差し出されたMDをそっと受け取った。
渡辺理緒の手の中でMDがカタカタ音を立てる。


「重いなぁ・・・ このMDは・・・」


なぜ渡辺理緒が、そのMDの事を「重いなぁ・・・」と思ったのかと言えば、
それは、踊り子が自分の夢のたくさんつまったMDを、他人に託す気持ちが、
どれほどのものなのか、何を意味するのか、同じ踊り子として身を持って知っ
ているからなのだ。

だから「私がこの曲を使ってステージで踊る時、私は一人で踊るんじゃない。
あの子の夢も一緒に背負って踊る事になるのね。」とその責任の重さに、身が
震えたのだ。


そう言う事があって、渡辺理緒自身もすぐにこの曲を使えずに、いつしか時は
流れてしまった。


だがしかし、その渡辺理緒と言えども、現役の踊り子としての生活が、いつま
でも無限に続く訳ではなく、そろそろ自分としても先が見えて来ている。

それは自分を取り巻く環境、体力的なものなど、自分がこれまで歩んで来た
踊り子としての道に、ゴールの白線を引く時が迫っていると言う事である。


渡辺理緒は、2004年5月。
自分の踊り子としての情熱を、すべて注ぎ込んだ作品「ギャンブラー」を最後
の新作として創作し、発表した。

本当にこれが自分の最後の新作として、渡辺理緒は力の限りステージで踊る。

この作品に評価を下すとすれば、それは「完璧」の一言に尽きる。
これを見たお客や劇場関係者からも、絶賛された秀作になった。


ところが、その事が逆に渡辺理緒に対する期待となり、もっと! もっと!
と言う声援が高まる事になり、次の新作を要望する声が、日増しに大きくなっ
て行ったのだった。


これで終わりと思っていたのに、またさらに新たな新作を、創作する必要が
出て来た渡辺理緒は、本当にこれで最後にしようと思い、オリジナル作品
「薔薇の封印」を考え始めたのだった。

そしてこの時、作品に使う曲を選曲しながらも、どうしてもピッタリとハマる
曲が、一曲足りない。

メインテーマとなるような、インパクトのある、スパイスの効いた一曲・・・


渡辺理緒は、毎日CDを何枚も聞きながら苦悩する事になる。

「あれもダメ! これも中途半端! も〜ぅ! どうしよう!」

そんな時ふと、あの日の出来事が思い浮かんだ。

「この曲はどうしてもママに使って欲しいんです。
 この曲で、ママに踊って欲しいんです!」

渡辺理緒は何気なく、あの女の子にもらったMDをライブラリーの中から手に
取った。そして、コンポに挿入してプレイボタンを押してみる。

スピーカーから流れ出して来た曲に、じっと眼を閉じ、耳を傾ける・・・

すると、全身の毛穴が開き、背中に戦慄が走る!

「 これよ! この曲だわ! 私が探し求めていたイメージの曲!」


渡辺理緒は興奮して、何度も繰り返しMDをプレイバックさせながら、自分が
ステージで踊っているイメージを、思い描いてみる。

振り付けは完璧、曲の流れも胸に響く。
こうなると創作作業はどんどん加速し、衣装のイメージまで一気に完成した。

渡辺理緒は自分の弟子である女の子に、心から感謝した。

素敵な曲をありがとう・・・


あの時のあなたの「想い」、「夢」・・・

今こそ私がステージで実現させる!
いぇ! あなたの想いと夢をこの曲に乗せて、二人三脚で踊るのよ!

絶対良い作品になる! そうしてみせるわ。
お客さん達からも、きっと大きな拍手が贈られるに違いないわ。

そう、あなたと私のために!


こうして渡辺理緒の最新作「薔薇の封印」は 、2005年1月、道後ミュージックの
ステージにおいてリリースされ、大好評をはくし、ステージを見たお客達は、
いつまでも鳴り止まない、盛大な拍手を渡辺理緒に贈ったのだった。


しかし、渡辺理緒はステージの上で、そんな拍手を聞きながら、心の中でつぶや
いている。


「この大きな拍手が聞こえるかしら。あなたの曲、そしてあなたと一緒に私は踊
 ったの。あなたがいたらからこそ、この作品が出来たのよ。ありがとう♪ 」
 

渡辺理緒がステージで微笑むその裏側には、こんな話があったのだ。

渡辺理緒ダンシングチーム、師弟の心温まる話を、頭の片隅にでもそっと置いて
渡辺理緒のステージをお楽しみいただけたなら、私もうれしいです♪



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