もずのわくわく劇場日記 No.146-2


2005年 9月21日〜30日 若松劇場

渡辺理緒・薔薇の封印レポート完結編


ステージに登場した渡辺理緒さんは、ピアノのイントロにのせて青い薔薇の花を一輪手に持ち、それを前方に突き出しながら、ステージの中央へ向かってゆっくりと歩いて行く。

 眼になじみのある登場風景だ。
 紫のスパンコールの衣装を覆う黒いマントに身を包み、ミステリアスな
 雰囲気をかもし出している。

 おや? なんかパッ! としない感じがする。なぜだ?

 私はタンバリンをにぎりしめたまま、あれぇ〜? とカミテのクーラー
 の脇で考え込む。

道後で見た時は、もっとインパクトのある感じがしたのに、妙に地味と言うのだろうか。しかし、その理由は程なく理解する事が出来た。

それは若松劇場の舞台照明に、原因がある事が分かったのだ。

この上の写真のシーンのあと、マントをひるがえし、紫の衣装をあらわにして、テンポアップしたダンスが展開されるのだが、非常に残念な事に若松の舞台照明は、バックスクリーンに強い光を放つライトがないのだ。

背景を縁取るようなレフランプが数多くあるのだが、光量が少なく、しかもオープニングの場面では赤を基調としたライティングであった。

 そしてステージで踊る渡辺理緒を、浮かび上がらせるはずのピンスポ
 ットが、これもまたピンクの色調である。

 場内が割りと広めな良い劇場であるのだが、その場内の広さと比較し
 て、全体としての光量が少なめであると言う感じがする。

 渡辺理緒のこの作品「薔薇の封印」では、前半の衣装が濃いめの紫色
 と言う事もあり、照明の色使いが非常に難しいのかもしれない。

やはり全体的な光量不足を補うためにも、ピンは無色の素のスポットが欲しかったなぁと言う気がする。

赤やピンクのライトの中に紫の衣装だから、どうしても踊り手が照明の色彩の中に埋没してしまい、視覚的なコントラストが弱く、インパクトのあるロケーションの「薔薇の封印」には、惜しくもなっていなかったようだ。


少しばかり話がそれてしまうのだが・・・

神崎雪乃さんの「花嫁」や「影炎」と言う作品を、大和Mや上野などで見る機会が多かった。同じ作品を道後で踊っている時の、ビデオを見せていただく機会があった。そして見て、いきなりビックリ! した事がある。

同じ作品を踊っているのに、視覚的なインパクトがまったく違い、まるで別の作品を見ているかのようだった。神崎雪乃さんのステージがすごくきれいで、ダンスが上手くなったんじゃないかと言う錯覚? いや、失礼!(苦笑)

照明が変わるだけで、それほどまでに作品が活き活きとしたり、ピントがボケてしまったりするものなのだ。

つまり、踊り子を生かすも殺すも、照明の設備と投光のセンス一つと言っても過言ではない。それほど照明はステージにおいて、重要なファクターである。かと言って、若松の投光さんの事をどうのこうのと言っている訳ではなく、投光さんがどんなに歯ぎしりして頑張っても、設備がそれまでではどうにもならないと言う話。


 さて、渡辺理緒のステージは進み、マントと帽子を払いのけるように
 脱ぎ捨て、さらにダンスは白熱して行く。

 ステージに登場した時の「何者かが、眠りから目覚めた」と言う顔の
 表情から、徐々に感情が高ぶり、さらにドラマはより深く展開して
 行くと言うその様が、渡辺理緒の表情から見て取れる。

 一見、淡々と冷静に、そして冷酷に踊っているように見える渡辺理緒の
 体から発せられるエナジーを、眼ではなく五感で感じていると、これまでにない想いや、気迫が感じられる。


渡辺理緒に、一体何が起きているのだろうか? 長い事渡辺理緒のステージを見て来ている私にも良く分からないが、これほど踊りに集中して「踊れてる」渡辺理緒を見られるのは初めての事ではないだろうか。

「ノッテル♪」一言で言うと、そう言う事である。
若松で渡辺理のステージを観劇出来た人は、幸運だと言っても良いかも
知れない。

夜の闇の中で目覚めた「バンパイア」渡辺理緒は、活動を始めたが掟破り
のタブーを犯し、とある人間の女に心引かれ、自分が持っている宿命、
永遠の命と、やがて歳を取り、老いて死んで行く人間の女との愛、お互い
住む世界の違う事に苦悩する。

彼女の血を吸い、自分と同じバンパイアとし、永遠に二人生きて行くべきか
それとも愛をあきらめ、彼女を人間としてその命をまっとうさせるべきか。

パンパイア・渡辺理緒は、永遠に生きて行く事の辛さを知っている。
この苦しさを「愛」する人にまで背負わせて、それでも自分の愛を貫き通すのか。

愛すればこそ、彼女を残して身を引く道を選択した。
そしてバンパイア・渡辺理緒は姿を消したのだった。


そしてステージは暗転する。

赤い照明だけがクルクルとステージを映し、時の経過を表現する。
シモテから真っ赤な薔薇の花を一輪、大切そうに持った女がソロリソロりと登場する。

 女役を演じるのも当然、渡辺理緒である。
 渡辺理緒は一途な思いを胸に秘め、憂いのさなかと言う役作り。

 一歩、一歩と言うように足を進め、ステージ中央へと向かう。
 そして花道へ行こうとすると、そこには青い薔薇の花がぽつりと
 落ちているではなか。

 そう、バンパイアの彼の姿はそこにはなく、彼の象徴、青い薔薇の花
 だけが残されていた。渡辺理緒はその青い薔薇の花に目をやり、自分だけがここへ取り残された事を知る。


その悲しみは、想像して余りある深いものだ。
渡辺理緒は絶望する。そして花道を渡り、盆へと進み出る。ピンクの照明が渡辺理緒を浮かび
上がらせると、呆然とした深い演技に沈んで行く。

手に持っていた真っ赤な薔薇の花を落とし、その悲しみをあからさまに隠す事無くむせび泣き、見ていても胸が苦しくなるほどの情景に、こちらの方が思わず唇をかみ締めてしまう。

悲しみに耐える女・・・

人は本当に悲しい時、泣く事はない。
人は本当に悲しい時、手を差し伸べてやる事も出来ない。

黙ったままやさしく見守ってあげる事が精一杯である・・・




渡辺理緒は薔薇の花びらをむしり、その中の一枚を唇に押し当ててかみしめる。
悲しくバラードの歌声が叫ぶ・・・

Want You Say Me ! My Cross To You Come Back〜!


  悲しみに打ちひしがれた渡辺理緒は、ようやく立ち上がり、
  よろよろとステージへと戻って行く。

  息のつまるような渡辺理緒の、深いベット演技が涙を誘い、
  身を固くして引き込まれてしまう。そしてステージの上では
  クライマックスを迎えるのである。

  ステージに戻った渡辺理緒は、これまでの事を振り返るかの
  ように向き直り、一度遠くを見渡す。

  手を差し伸べて何をつかもうと言うのか。
  断ち切れぬ愛の絆をたぐり寄せようとでも言うのか。

  あまりにも悲しすぎる結末・・・

  黙って見ていられなくなった応援隊から、行く筋ものリボン
  が渡辺理緒の肩に、腕に投げ込まれる。が、しかし・・・


渡辺理緒はその身を揺さぶり、差し伸べられたリボンを振り払ってしまう。


何も聞こえない! 何も見えない! 私にはあなた・・・ あなたしか見えないの!















はい! と言う事で、渡辺理緒「薔薇の封印」レポート完結編をお届けいたしました。
ホント、「リオさん? 何かあったんですか?」って聞きたくなるくらい、濃厚なステージでありましたが、リオさん演じるところの「耐える女」、圧巻でございます!

もう! この「耐える女」を演じさせたら、渡辺理緒の右に出る者はいない! ってくらいのもんで、何でなのかと言うと、渡辺理緒さんこう見えても? 案外古風な所がある人でして、何事があってもじっと一人耐え忍ぶ・・・ みたいなね。(笑)

いや、リオさんの大親友である「ゆきみ愛」ちゃんといつも言ってるんですよ。
もっとはっきり自己主張して、言いたい事がある時は思い切って言った方がいい、殴られたら殴り返せ! 蹴られたら倍にして蹴り返せ! ってね。(爆♪)

渡辺理緒さんは優しいから、優しすぎるから損しちゃうって言うか、もう周りの人が守ってあげないとって気持ちになっちゃう。でも渡辺理緒さんてそう言う人なんですよね。だから、いつまでも見守っていてあげたいって思う。

渡辺理緒さんて人は、うれしい事、悲しい事、楽しい事、そう言う事を言葉ではなく、踊る事で何倍にも増幅させて、みなさんに伝える人なんですよ。だからそのステージでの感情移入がものすごい。他の者の追従を許さない。

この「薔薇の封印」って作品は、渡辺理緒さんの心の中に手を突っ込んで、やわらかなその心のヒダにそっと手を触れるような、すごく情熱的でありながら、デリケートな作品なのだと私は思ってます。

いや、そのくらい深い作品だってね。(^o^)

ベットに入ってからの演技がすご過ぎて、申し訳けありませんが、とても私のチカラでは文章に起こせないし、渡辺理緒さんの才能に着いて行けないので、その部分は写真を見て、渡辺理緒さんの生のステージの迫力、雰囲気を、感じ取っていただきたいと思います。

ハッキリ! 言って私はギブアップでございます。(爆♪)


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