もずのわくわく劇場日記 No.154


2006年 3月 25日(土) もずコラム

「渡辺理緒とエリザベート」


オンリー・ワン!

これまで渡辺理緒さんが踊り子となって以来、ずっと胸に秘めていた「理想」と「目標」。今までに誰もやった事のない作品。そして前代未聞の大河ストリップのステージ。それこそが渡辺理緒さんが理想とする「オンリー・ワン」と言うもの。そして、渡辺理緒さんは人知れず、じっくりと創作を練っていたのである。

去年のとある夜のこと。

渡辺理緒さんからメールが私の元へ届いた。「薔薇の封印」をやろうと思ってるのと。そしてさらに「エリザベート」も今考えてるんだけど、これは中々大掛かりと言うか、大変だ! でももうイメージは出来てるの。

私はそれを聞いてぶっ飛んだ! 薔薇の封印? エリザベート? マジでかい!
それもそのはず、そのどちらの作品も宝塚の名作ミュージカルなのだ。上演時間2時間以上もある「薔薇の封印」と「エリザベート」である。そんな超大作を、ストリップ劇場の持ち時間20数分で、渡辺理緒さん1人で一体どうやって演じると言うのか!

しかし、矢継ぎ早に届く渡辺理緒さんからのメールは、自信に満ち溢れ、携帯に文字を打ち込みながら、頭の中では薔薇の封印や、エリザベートをステージで踊っているようだった。

薔薇の封印とエリザベート、どっちを先に出そうか? エリザベートはね、私にとっても超大作よ♪ 一回目から四回目までで完結。一回目が第一景、二回目が第二景、三回目が第三景、そして四回目でクライマックスって感じになる。だから、一日中見てないとストーリーが完結しないって事よ。

渡辺理緒、恐るべし! そんな事したら衣装を何着新調すれば? 遠征のお客さんは? ギャラとのキャッシュフローは完全に赤字! 渡辺理緒さんどうするつもりなの?

私はとりあえず薔薇の封印をまず先にステージに掛ける事を勧めた。そして、エリザベートはチームショー「アンサンブルローズ」でやってはいかがだろうかと提案したのだが、渡辺理緒さんは聞く耳を持たない。

エリザベートは私の踊り子生命を賭けた作品なの。どうしても私一人でやる!

エリザベートは重要な登場人物の人数が多いのである。一人で演じ分けるとは言っても、ストーリーを知らない人がどう理解するのか、成功と失敗の確立は紙一重だと言える。あまりにもリスキーな賭けだ。

その後も作品「エリザベート」について、渡辺理緒さんとはやり取りを繰り返し、四回目のアンサンブルローズが公演している時に、新庄愛さんにも聞いてみたところ、「エリザベート? やる♪ バッチリ踊るよ。」と言う答えが返って来た。

何を隠そう、新庄愛さんは宝塚の大空祐飛さんのファンなのである。宝塚好きの二人だからきっと素敵なステージを演じてくれると私は思ったのだ。もちろん渡辺理緒さんの踊り子としての夢、エリザベートを一人で踊ると言う熱い想いはすごく良く分かるのだが、渡辺理緒公式ホームページで発表された、渡辺理緒引退発表、そしてその「Xデー」までにはもう時間が無かった。

今年、新作「アイリッシュ・フェアリー」をデビューさせた渡辺理緒さんの、今後のスケジュールを考えてみると、とても一人でエリザベートをステージに上げるには、時間がないと私には思えたのだ。

実際、引退発表をしてしまうともう数えるくらいしか、渡辺理緒さんがステージに立てる機会はない。それでも渡辺理緒さんはラストの道後でならやれるかも知れないと、エリザベートのステージ構成を考えているようだったが、果たしてどうなんだろ?

衣装を作るのにとてもお金がかかる。華々しく引退興行でエリザベートを演じ、素晴らしい! と賞賛を浴び、拍手喝采! と言うのは踊り子としての花道ではあるが、良く考えてみて? 渡辺理緒さんは引退したらとりあえず失業するわけである。翌日から無収入な訳だ。ショーパブとかでアルバイトして収入がなくなる事は無いと思うが、渡辺理緒さんは人生のセカンドステージとも言うべき、次なる大いなる夢を持っている。資金が必要だ。

引退したらドラマのように「完!」ではすまない訳で、渡辺理緒さんは現実の世間を生きていかなければならない。冷静な視点が必要なのだ。終わる事が決まっている仕事のために、大金を出費する事は、私としてはお勧め出来ないと思った。踊り子引退後の渡辺理緒さんを守るものは、ただ1つ、貯金なのである。渡辺理緒さんももう自分自身の事だけでなく、娘さんのために生きる道を選択しても良い時期に来ていると思うのだ。

踊り子としての夢「エリザベート」

渡辺理緒さんはそれを一人で演じる事にずっとこだわっていた。踊らせてあげたい・・・ しかし、今のままではヘタをすると、そのための時間も機会も失い、引退のその日を迎えかねない。

ちょうどそんな頃、渡辺理緒さんのスケジュールに関東・川崎ロック座出演の話が来た。と言うか、色々あったみたいだが。(笑) 関東・川崎ロック座と言えば、新庄愛さんのホームの劇場である。そうなると必然的に「チーム・アンサンブルローズ」と言う話になる。

渡辺理緒さんからメールが来た。

アンサンブルローズ・・・見たい? 関東・・・ 今の私にとってはツライ。
周囲の状況が・・・ どうしよう? 

娘さんの事ね。それについては渡辺理緒さんの同期の親友・ゆきみ愛さんとも話をしてたんだけど、ゆきみちゃんの家は関東だし、ゆきみちゃんは渡辺が川崎に出ている間、預かっても良いと言っていた。私はそれは良いアイディアだと思ったのだが、今の渡辺理緒さんを支えているのは、目の中に入れても痛くないと言うほどかわいがっている娘さんと、離れ離れになる訳であり、それは渡辺理緒さんにとってみれば、良い話だが、とてもツライ事なのだ。

親子が離れ離れでいるのは良くないし、その状況で渡辺理緒さんが落ち着いてステージに立てるとも思えない。娘の小さな体を抱きしめて、そのぬくもりが渡辺理緒さんの両腕に伝わって来る。そのかけがえの無い天使を抱きしめる事で、渡辺理緒さんはどんな苦労も乗り越えて頑張れる。

私は渡辺理緒さんに言った。

「トート閣下とルドルフ皇太子のマジで踊る所をみたい。」

すると渡辺理緒さんは、クドクドと言う。

エリザベート? 新庄にエリザベートの苦悩が演じられるだろうか、、、 孤独と束縛、自立と自由を追い続けたエリザベートの生涯、そんなエリザベートを黄泉の国へと誘うトート閣下。母に愛されたいと願うルドルフ皇太子の孤独と死・・・ やっぱり私一人でやりたい。

渡辺理緒さんの気持ちは痛いほど良く分かる。しかし、渡辺理緒さんにとっては、引退が「THE END」ではない。これからずっと生きて行く渡辺理緒と言う人の事を思うと、私は新庄愛さんに夢の実現の半分を、お手伝いしてもらった方が良いと考えた。

「トート閣下とルドルフ皇太子のマジで踊る所をみたい。」

私はもう一度、渡辺理緒さんにそう言った。渡辺理緒さんから返信は来なかった。
しばらくして渡辺理緒公式ホームページで、3月結・川崎ロック座「アンサンブルローズ・エリザベート」と、発表があった。私はうれしいような、ホントにこれで良かったのだろうかと、少々心が揺れ動いた。でも、きっと新庄愛さんならうまくやれるはずだし、この役目は新庄愛さんにしか出来ないと確信している。

そして2月結の若松で、新庄愛さんに資料として「宝塚月組公演・エリザベート」のDVDを手渡した。新庄愛さんは、それをしっかりと受け取って私に言った。

毎日このDVDを見て勉強するよ。エリザベートの苦悩、私なりに頑張って踊るから、大丈夫! 心配しないで、ありがとうね♪

次回観劇レポートへ続く・・・?


[ INDEX ] [ 観劇日記 ]