もずのわくわく劇場日記 No.151-3


2006年 1月 9日 道後ミュージック

渡辺理緒・新作「アイリッシュ・フェアリー」ステージレポ・中編




ステージの中央へと進んで来た渡辺理緒は、そこで客席正面へと向き直り、左手を腰に当てたまま右足を前に、左足を後ろへとクロスさせて、アイリッシュ・ダンスの基本スタイルをとる。両足ともつま先を大きく外側へと向けた、そのスタイルは、バレエダンサーのようなポーズとなるのだが、右足で床を踏んでリズムを刻んでいるので、バレエとはまた少し違う様子。

さぁ〜! いよいよここから渡辺理緒のアイリッシュ・ダンスが始まる!

渡辺理緒は神経を研ぎ澄ませ、眉間に集中させる。左腕を腰に当てたまま、視線を水平に!
白いショートドレスから伸びる、黒いストッキングの脚がクロスする脚線美!
その先には、黒いアイリッシュ・シューズがピッタリとフィットしている。

まずはアイリッシュ・ダンス・カテゴリーの中から足だけを使って踊る「ステップ・ダンス」から始まる。ずっと足をクロスさせたまま、足を 1 1 と踏み鳴らすようにして、ステージを中央へと進み、到着するとその場所でタイミングを図って、ゆっくりと時計回りに半回転、背中を向けたところでピョコン! と飛び上がって足を左右入れ替え、同じスタイルでまた 1 1 とステップを踏む。

すると今度はそこからシモテへと足を踏み鳴らしながら平行移動。
しまった! 紅茶を机にこぼした! あぁ、こっちの話・・・

シモテへと足を踏み鳴らしながら平行移動。けたたましく奏でるバイオリンの演奏。
端までたどり着くと、折り返しもう一度飛び上がって足を入れ替え、音楽が変わって踊りも変わる。
ジャ〜ン! ジャ〜ン! とBGM が鳴り、渡辺理緒は右腕を振り上げて、アイリッシュ・ダンス・カテゴリーの「ハードシューズ・スタイル」と「シャンノース・スタイル」をミックスしたダンスへと突入した!

これは、右腕を横に肩の高さまで持ち上げ、そのままのポーズで下半身だけを右に、左にと交互にひねるようにして、片足ずつ大きくステップを踏む。その際、靴底で強く床を鳴らし、音を出す。そしてそれを何度か繰り返す。この時の客席の様子が実に面白い。

渡辺理緒がカーン! カーン! と靴を床にたたきつける時、お客達の手拍子にきちんとアクセントがついているのだ。ジャン! チッ、チッ、チッ。ジャン! チッ、チッ、チッ・・・ ワン! ツー、スリー、フォー、ワン! ツー、スリー


 フォ〜!















と、お客達は渡辺理緒の足のステップに合わせ、アクセントをつけながら手拍子を打っている。それは場内の一人残らず、浴衣の温泉客もである。

なんて素晴らしいんだ! すべてがシンクロして一体化している!

すると渡辺理緒は、客席に背中を向けたかと思うと、両腕を広げながらその腕を頭上に運ぶ! そして正面に向き直ると、次にその腕を背中の後ろ、腰の辺りへ回した。ハイテンポなリズムの新たな展開だ!

上半身はビシッときれいに固定して、足の動きだけで観せる高度な技、アイリッシュ・ダンス・カテゴリー「モダンスタイル」でのステージとなる。これはこの作品での一番の見どころだ。やはりこの「モダンスタイル」と言うダンススタイルが、これぞ「アイリッシュ・ダンス!」と言うイメージを、ビシビシ! と伝えて来る。

渡辺理緒の見事な足さばきに興奮したお客は、これまでにも増して力強く手拍子を打っている。
この「モダンスタイル」の基本的な動きは、やはりバレエに近いものがあるが、ヒザを曲げて振り上げる動き、足のつま先とカカトをうまく使い分けて、タップダンスのように靴音を立てて踊る動き、そしてそんなステップ踏みながら、クルクルと回りながら踊る動き、水平移動する動きを組み合わせて、かなり激しい足元のダンスとなるのだ。

しかしそれに反して、上半身は腕を背中に組んだまま、ピクリ! とも動かさない。これが「アイリッシュ・ダンス」なのかーっ! 見ていてもものすごい緊張と興奮、これぞダンスだと叫びたくなる程の素晴らしさだ。

マジでこれはみんなにも見てもらいたい! こんな私の書くレポなんて読んでいる場合じゃないぞ!
渡辺理緒の緊張した顔の表情、時折足元に落とす視線、揺れるポニーテールに結んだ髪、ダンスだけでなくどれ一つとっても、見逃せない、これまでに見られない渡辺理緒のステージを、ぜひ! ご自分のその眼でご覧いただきたい!

BGM に急き立てられるようにステージの上で、花道で、そして盆の上で踊り続ける渡辺理緒は、何者かに憑かれたようにステップを踏み続け、盆からステージ中央へと帰って来た。

曲がエンディングを向かえ、渡辺理緒のアイリッシュダンスもラストシーン。
歯切れ良くビシ! としたエンディングでフィニッシュ!

アイリッシュの森の奥深くから、渡辺理緒に呼びかけるような笛の音。その歌うような笛の音にはっ! とアイリッシュの森を振り返る渡辺理緒。アイリッシュ・ダンスの余韻を残すような足取りで、カミテへとゆっくり進んで行く。そして背中を向けると、白いショートドレスの背中のジッパーを半分ほど引き降ろし、幕の中に消えた。

誰も居なくなったステージに照明と、狼の遠吠えのような笛の音がこだまする。
しばらくそのままの状況が続く・・・ ここはかなり長い間合いが入る。ちょっと退屈だ。トイレに行こうと思っていた人は、ここで行くと良い。混み合ってなければ、十分用を足す時間がある。(笑)

さぁ、遠吠えの曲が終わると、場面転換の第二景とでも言うのだろうか、渡辺理緒が踊っている間に、日はとっぷりと暮れ、アイリッシュの森に夜のとばりが降りていた。うむ、やはりあの遠吠えの声は、日が暮れるから早く帰っておいで〜♪と言う、渡辺理緒を呼ぶ声に違いない。

ステージはそんな夜のとばりが降りて、真っ暗になったアイリッシュの森。
これから妖精たちの夜のミサが始まる・・・ のかも知れない。

カシオペア座を模した照明の配置が変化し、うす赤い4点照明の光がじっと動かずに灯っている。
場内に聞こえてくるウィーン少年合唱団のような歌声。映画「戦場のメリークリスマス」に登場するデヴィット・ボウイのいじめられっ子の弟が、回想録の中で歌うその歌に似た感じがする。映画見た人じゃないと判らないか(笑)

聖なる歌声、妖精たちの賛美歌の合唱と言う方が、的を得ているかもしれない。
心静かに聖なる夜を向かえ、妖精たちは何に祈りを捧げるのか・・・



おごそかな雰囲気の広がるステージに、渡辺理緒がカップキャンドルを両手に持って出て来た。
やはりこれから妖精たちのミサが行われるようである。

次回へと続く→


[ INDEX ] [ 観劇日記 ]