もずのわくわく劇場日記 No.155-4 エリザベート


[皇太子・ルドルフ]

エリザベートは見失っていた「本当の自分」と言うものを見出し、黄泉の国の帝王・トート閣下は、一度奪ったエリザベートの命を返したのが運のつき。「お前に命、許したために生きる意味を見つけてしまった。」と頭をかかえた。

エリザベートは自立し、宮殿を飛び出した。家出ではない。自分がやるべき事はしっかりとこなし、その上で自由を見つけるための旅に出たのだ。そしてその旅は、何度も繰り返される。

しかし、エリザベートの息子・ルドルフはある意味、母・エリザベートの自由の犠牲者と言えた。
それは一体どう言う意味なのか?

幼い息子・ルドルフは、父・フランツ・ヨーゼフ皇帝の後継者となるべき立場であるために、父の期待も大きく、陸軍式のスパルタ教育で厳しくしつけられた。

そのため小さな体を、ムチで打たれる事もしばしばあったが、それでもルドルフは子供ながらに「自分は皇太子! いづれハプスブルグ家、そして立派に父の後を継いで、オーストリア皇帝になるのだ!」と、自分の運命を受け入れ耐えていた。

とは言うものの、まだ母親の恋しい年頃である。
幼いルドルフは皇帝教育の講義が終わると、ムチで打たれた体をさすりながら、広い宮殿の中で母をさがす。けれどもやっと母を見つけ、その胸に飛び込んで思い切り甘えようとすると、侍女からさえぎられるか、母のエリザベートは旅支度で忙しく、話をしても上の空「今忙しいから他へ行って遊びなさい。」と相手にしてくれなかった。

ルドルフはそれでも母の事が大好きだ。
遠くから母の姿を見ているだけでもうれしかった。

でも、エリザベートが旅に出て留守になると、ルドルフは大空を遊びながら飛ぶ鳥をながめては(なに?大空、遊ぶ、飛ぶ?ムフ♪) いつもひとり、歌うのだった。




 ママ、どこなの聞こえてるの?
 寒いんだ抱き締めてよ
 皆が言うんだママの邪魔だって
 そばに居てはいけないの?

 ママ、お部屋は真っ暗なんだ
 眼がさめると怖いんだ
 泣いても誰もこない・・・
 僕はひとりぼっち

 僕はなるんだ強い英雄
 昨日もネコを殺した!
                                                       勇気試したんだよ
でもちょっと可哀想

ママ、どうして旅に出るの?
僕も連れてって!
お城にいる時だけでも
僕をひとりにしないで・・・

うん・・・ 子供だからなぁ、時々音が外れるのは仕方ないか。(笑)
しかし、たまらなく胸が痛むな。ルドルフはそんな幼少期を過ごしていたのだ。
エリザベートが求める「自由」はつまり、誰かの犠牲の上に成り立っている事を、私は早くエリザベートに気がついて欲しいんだけどね。いつまでも子供じゃないんだし、自由奔放なのは結構だけれども、子供を犠牲にして親がやりたい放題、好き勝手なんてのはど〜よ? 子供を一人前に自立させる、親としてのミッションに、自分の生きる意味を見出せないもんかねぇ・・・

今日もルドルフは厳しい皇帝教育が終わった後、ひとりであの歌を歌っていた。

・・・泣いても誰もこない 僕はひとりぼっち。

するとどこからか声が聞こえ、ルドルフは振り返る。

「ママには聞こえない・・・」

柱の影から青白い顔をした、髪の長い男が現れた。

「誰?」

「友達さ、呼んでくれれば来てあげる。」



黄泉の国の帝王・トート閣下だった。しかし、ルドルフはトート閣下が何者なのかを知らない。

「本当?」

「必ず・・・」

ルドルフは喜んだ。

「ねぇ! このおじさんが、ボクが寂しい時には呼んだら必ず来てくれるんだって!」

母にそう言いたかったが、エリザベートは今日もまた旅に出ていて不在だった・・・


[闇が広がる] へ続く・・・


[ INDEX ] [ 観劇日記 ]