もずのわくわく劇場日記 No.158-1


2006年 8月 6日 道後ミュージック

道後遠征日記・その1「タップ&アイリッシュ」
オリジナルパフォーマンス・セッション!
その考察と可能性をさぐる!


  

アイリッシュ・渡辺理緒さん       タップ・きらら☆さん

                                        写真:Rio Blog より


二大アーチストによる画期的なセッションが、道後ミュージックにて行われた。
実に斬新で画期的なセッションパフォーマンスなので、何はともあれ真っ先に書いておきたいと思うので、遠征日記は後回しにする。

さて、今回のこのセッションは初めての試みと言う事で、おおやけには実験劇場、「公開練習」と言う事になっているのだが、中々手ごたえのある企画であり、評判も上々。

簡単にこの企画にいたるあらましをご紹介しておくと、それぞれの作品としてたまたま同じ劇場で競演した渡辺理緒さんときらら☆さんは、お互いの作品のテーマに興味をいだき、意気投合。二人で何か面白い事は出来ないだろうかと、企画を立て、忙しい合間をぬって企画を煮詰め、レッスンをし、道後ミュージックの協力を得て、今回のセッション・ライブが実現される運びとなった。

渡辺理緒さんはアイリッシュ・ダンス、きらら☆さんはタップダンスと、お互いの得意技を駆使してのセッション・ライブである。どのようなセッション・ライブが行われたかをレポートする前に、アイリッシュダンスとタップダンスについて、解説しておく必要があると思うので、まずはそれを述べよう。

アリリッシュ・ダンスについては、以前勉強会レポートにて、詳しく書いてあるので、こちらを読んで欲しい。アイリッシュ・ダンスを起源として、そこから様々な形のダンススタイルが派生して行ったのである。

「タップ・ダンス」は靴底に金属板を付けた靴の爪先(ボウル)と、踵(ヒール)で床を踏み鳴らしながら踊る。ものであり、現在ではタップダンスも多様化し、リズムタップやミュージカルタップなどのスタイルがある。

リズムタップはビートを重視し、ステップによって音楽を作りだしていくスタイル。
ミュージカル・タップは、ブロードウェイミュージカルに見られるようにタップだけではなく、体全体の動きも重視し、曲に合わせて踊っていくスタイルである。

きらら☆さんの場合、ストリップの中のステージであり、どちらかと言うとミュージカル・タップと言うカテゴリーに属すると思う。

そしてタップ・ダンスのステップには、ブラッシュ、フラップ、スラップ、スタンプ、ストンプ、ウィング、ジャンプ、アイリッシュ、プルバックなどの手法で、ステップは構成されている。

ブラッシュ・・つま先で床をけって音を出す、カカトで床をけって音を出す。基本。

フラップ・・・体の体重移動を行い、つま先やカカトで床を叩いてステップする。

スラップ・・・体の体重移動をせずに、つま先やカカトで床を叩いてステップする。

スタンプ・・・足の裏全体で床を踏み、音を出すが、足は踏んだままで残し、体重移動を行う。

ストンプ・・・体重移動は行わず、足の裏全体で床を踏み、すぐに足を上げる。

ウィング・・・サイドにこするようにして足を持ち上げ、ブラッシュする事。

アイリッシュ・右足シャッフル、左足ホップ、右足ステップなどの組み合わせで、左右交互に行なう
       複合ステップであり、その総称。アイリッシュダンスの流れでそう呼ばれるようにな
       った。

細かく分類するとキリがないので、ここまでにする。

タップ・ダンスとアイリッシュ・ダンスの大きな違いについて、ここで触れておかなくてはならないだろう。一番大きな違いは、靴。ダンスに用いるシューズの形状が大きく違う。


 

上の写真はタップ・シューズ。
一見普通の革靴にしか見えないが、靴底のつま先とカカトに鉄のプレートが取り付けられているのが分かる。足にフィットして軽快なステップ・ワークを再現する事が出来る。




上の写真がアイリッシュ・シューズ。
見た目からしてかなりタップ・シューズとは違い、つま先の部分が厚底になっており、やはりプレートが装着されているが、材質はグラスファイバーやプラスティックが主流らしい。また、カカトの部分にプレートは無い。やや重量も重いのか、脱げないようにベルトが付いているのも特徴。


そして次に、ステップの違いについても書いておこう。

軽快で、スピード感のあるステップを生み出すのがタップダンス。また、しっかりとした力強いステップを生み出すのがアイリッシュダンスである。

もう少し詳しく解説すると、タップ・ダンスでは足首のスナップを使い、ステップをする。床をけって音を出す時に「点」を使ったステップであると言える。それゆえ、素早く軽快で繊細なステップを再現できるが、音量は小さい。

一方、アイリッシュ・ダンスの場合は、足そのものの動きを使ってステップを踏むので、「面」で音を出すのもである。タップ・ダンスとは違い、足の動きが大きくなるので、素早く軽快なステップは向いていないが、音の音量は力強く大きい。アイリッシュの場合、床をける時には床面に対して、垂直方向の角度でシューズを当てるのが特筆すべき特徴である。

おおよその事はご理解いただけたと思うので、これよりステージレポートに入る。


■実験的ライブ・セッション作品名「サバト!(魔女達の夜宴)」

暗転している舞台の中央で、渡辺理緒はカミテに頭を向けてうつぶせに倒れこんでいる。
ほの暗い照明が灯され、静かにBGMが流れ出す・・・

渡辺理緒は夜の闇の中、魔女の森に一人迷い込み気を失って倒れてしまったようだ。
すると、どこからとも無く生ぬるい風が吹きぬけ、闇の中から黒いマントで身を包んだ影が、渡辺理緒の事を上から見下ろしながら徐々に迫って行く。

あたまから黒いフードを冠っているために、顔は見えない。だが、一歩、一歩とその影は渡辺理緒の元へ近づいて行く。渡辺理緒はまだ気を失ったままだ。張り詰める緊張感、渡辺理緒危うし! と叫びたい衝動! だがすでに客席の誰もが金縛り状態で、身動きできず、声すら発せない。

その時! 黒いマントの主はマントをひるがえし、両腕を広げて天を仰ぐ。改めて渡辺理緒の事を見下ろし、呪文を唱えると、渡辺理緒は意識を取り戻したのか、ピクリ! ピクリ! と体を痙攣させるようにして動き出した。

エロエム・エッサイム、エロエロ・エッサイム・・・

ゆっくりと立ち上がった渡辺理緒の背後に、黒いマントの怪しい影が立つ。射し込む灯りの中、わずかに黒いフードを冠った顔が見えた! 魔女だ! 12世紀、魔女は悪魔の力を借りて人畜に被害を与え、弾圧を受け火あぶりの刑に処せられた。13人いた魔女はすべてこの時、処刑されたはずだ。
なのになぜ今頃ここに魔女があらわれたのか!

物語は12世紀までさかのぼる事になる。

12世紀・中世ヨーロッパ。遠征先から帰還した十字軍の兵士によって、魔女についての悪しき話が民衆に伝えられ、人々は恐怖におののいた。

そもそも魔女とは、女が悪魔と関係を結ぶ事により、魔女となりて「子供を捕まえて食べる、かぎ鼻の人物。人畜にワルサや被害をもたらす者。」と言われ、当時迫害を受けていたテンプル騎士団への迫害問題と供に、ローマ教皇庁の主導によって騒ぎの収束のため、魔女狩りが行われた。

魔女は13人いると言われ、疑わしき者といわれるだけで、何の罪もない女達が次々と捕らえられ、処刑されたのだ。その数およそ4万人と言うから驚きである。

魔女として訴えられた者には、町や村、もしくはその近郊に住む女性で、貧しく教養がない、あるいは友人が少ないといった特徴を持つものが多かったようである。そして魔女には体のどこかに「契約の印」と呼ばれる、痛みを感じない「魔女の紋章」が体にあるのだと言う。それこそが魔女の急所なのかも知れない。

しかし、ある意味これは集団ヒステリーではないかとも言える。不安と恐怖のあまり、人間は妄想をいだき、誰かが「この女は魔女だ!」と叫んだだけで、事実の裏づけもないまま魔女として処刑される。実に怖い話であり、私は魔女よりも集団催眠にかかってしまう人間の心と行動の方が、よっぽど怖いと思うが・・・

さて! 魔女と言えば「ほうきにまたがって空を飛ぶ」と言うのがこの手の話の定説であるが、これは魔女達が「サバト」と言われる魔女達の集会、夜の宴に向かう時だけだそうな。

ではステージの話に戻る。

渡辺理緒の背後に立ち、両腕を大きく広げた魔女のきらら☆にあやつられて、渡辺理緒ときらら☆の「サバト」は始まる。夜の闇の中で含み笑いをしながら、魔女・きらら☆は、渡辺理緒を操り人形のように操り、ダンスを踊らせる。魔女・きらら☆が腕を上げると渡辺理緒も腕を上げて踊る。魔女・きらら☆が足を上げれば、渡辺理緒も足を上げて踊る・・・

魔女・きらら☆は長いマントをひるがえしながら、軽快なタップダンスのステップをシモテ寄りで踏みむ。カチカチと音を立てながら床が鳴る。

すると、自分の意思を魔女によって封印された渡辺理緒が、カミテ寄りでアイリッシュ・ダンスのステップを踏みながら踊る。それを交互に繰り返し、魔女の夜宴・サバトは盛り上がって行くのだった。

だが、魔女・きらら☆がもくろむ本当の目的は、魔女の森に迷い込んだこの女、渡辺理緒をあやつって自由自在に踊らせる事などではない。そして、魔女の夜宴・サバトのクライマックスは、渡辺理緒にとって、もっと恐ろしい事が待ち受けているのだ。

魔女狩りで処刑された13人の魔女たち。

魔女・きらら☆の母は、実はその処刑された魔女の一人であったのだ。
しかし、その時きらら☆はまだ幼く、誰の目にも魔女とは思われずに、難を逃れたのだったが、幼いきらら☆の腕には、まぎれも無い「魔女としての紋章・悪魔との契約の印」がくっきりと浮かび上がっていた。

刑場に連行され、次々と火あぶりとなって処刑されて行く魔女たち。
聖なる炎に身を焼かれ、泣き叫び、絶叫しながら断末魔の声をあげ、きらら☆の母もきらら☆が見ている目の前で焼き殺されたのだ。きららの母は燃え盛る炎の中で、きらら☆の事を見すえながら、必死になって何かを伝えようとしていた。

幼いきらら☆は、「ママーッ!」と叫びたい気持ちを必死で押さえた。叫んではいけないと思ったからだ。真っ赤に燃えるさかる炎の中で、黒焦げになりながらも母は、自分の身を案じ、焼けただれた手をきらら☆に差し伸べていた。きらら☆も懸命に短い腕を差し伸べ、母のその手をつかもうとしていたが、無論届く分けもなく、魔女と言うだけで親子の絆は無常にも断ち切られたのだった。

メリメリと言う音を立てて13人の魔女たちは灰となり、人々は歓喜の声を上げ、肩を叩き合って喜んでいた。これでこの世から邪悪な魔女たちは根絶された、また平和な日々が戻って来るのだと。

幼いきらら☆の左腕に、くっきりと浮かび上がる「魔女の紋章」がズキズキ! と痛み出し、熱を発した。「うぅ・・・」突然襲ったその痛みに、きらら☆は思わず声を上げ、右手で腕を押える。その時、どこからともなく誰かの声が自分の名前を呼んだ。

「きらら☆・・・ 14人目の魔女、きらら☆よ! この屈辱を晴らすのだ!
 お前の大切な母親は、人間たちの手によって無残にも焼き殺された。見ていただろう・・・
 お前に強大な魔力を授けよう。
 良いか、お前の力で魔女一族の恨みを晴らし、ここに魔女一族の復活を誓うのだ!」

低く太い地を這うような声は、幼いきらら☆に有無を言わさぬものとして、きらら☆の胸の奥にずっしりとした重さで宿っていた。

きらら☆は一人夜の闇の中へと姿を消した。その日からきらら☆の姿を見た者は誰もいない・・・


魔女・きらら☆と、それにあやつられる美女・渡辺理緒の「サバト・魔女の夜宴」は今まさにクライマックスを迎えようとしている。魔女・きらら☆はダンスを踊り終え、渡辺理緒の体を抱きかかえ、渡辺理緒の体を優しくまさぐりながら、渡辺理緒の服を徐々に脱がせて行く。

渡辺理緒は自分の意思を封印されたままの状態で、黙ってなすがまま、されるまま。魔女・きらら☆の本当の目的、魔女一族の復活。美女・渡辺理緒は、魔女・きらら☆の魔力によって、魔女の洗礼を受けてしまうのか! それとも封印された自己意識を解き放ち、この危機を逃れる事ができるのか! さぁ! どうする、どうなる! 渡辺理緒!


と、言う所でこのライブ・セッションは終わっている。
つまりストーリーはさらに飛躍し、続いて行くのである。続きが気になるところではあるが、渡辺理緒は間もなく引退を迎えてしまうのである。このまま終わらせていいのか! どーなんだ渡辺理緒!(笑)

機会があったらこのストーリーの続きは、やる! と言う渡辺理緒嬢の言葉を最後に書き残しておく。
乞うご期待!!

■ライブ・セッションを見て感じた事

すごいインパクトあるね。単にタップ・ダンスとアイリッシュ・ダンスの激突! 夢のライブセッションと言う話だったのに、まさかストーリー物とは思わなかった。生みたての新鮮な玉子としては、相当良いものだったと思う。

なんだよぅ、その言い方は? と思うかも知れないが、つまりこれから玉子の殻を突き破って、ヒヨコが生まれて来ると言った状態の作品なんですよ。

ものすごい可能性を秘めているセッションだったと言う事なんです。でも、現状ではとても才能のあるきらら☆さんと、渡辺理緒さんの持っているそれぞれの歯車がまだキチンと動き出してない。この二つの歯車が正確に噛み合って回り出したらそれはすごい事になるよ。

今回見ててね、タップとアイリシュのそれぞれの持つ、性質や特性が打ち消しあってしまって、それぞれの良い所がまだ出てないのね。どう言う事かと言うと、小回りが利いて繊細なスピード感のあるタップダンスに対して、パワフルで骨太なアイリッシュ・ダンスの力強さが、死んでしまってるの。

これは何かと言うと、タップとアイリッシュが同じようなステップをやろうとしているんですよ。客席で靴音を聞いていると、タップのきらら☆さんが軽快に、カチャカチャと言うステップをやっているのに、タップの性質上靴音が小さい。一方、アイリッシュの渡辺理緒さんはドカン! ドカン! って言う音しか聞こえてこない。

それは渡辺理緒さんが悪いんじゃなくて、シューズやアイリッシュのステップの特性で、床のけり方が違うからそうなるのね。私はそれを見ていて、あぁ〜なるほどなぁ〜! って思って、どう言う風にやったらそれぞれの特性を生かしたステージになるかって考えてみた。

タップとアイリッシュで、靴音の音量が違いすぎる、ステップの速さが違いすぎる、曲的にこの二つのダンスをクロスオーバーさせてやるには、メロディアスな曲過ぎるって感じたの。やってる事に間違いはないんだけど、表現のやり方と言うか、方向性が違うのかもしれないと思ったの。

じゃぁどうすればいい? って話だけど、多分ねぇ、音量が大きいけど素早くて繊細なステップを出来ない性質のアイリッシュ側が、ベーシックなリズムを刻んで、その反対の性質を持つタップ側が、細かいリズムを刻んで二人で一つのアンサンブルみたいな感じでやると、もっと面白いかもしれない。

曲もメロディーがあるようなないような、ヒップホップの曲とかを使って、全体的にすべてリズムを意識した感じで構成してみると言うのはどうだろう? アイリッシュが、ドン・タ! ド、ドド、タ! とアカペラみたいにベーシックなリズムをたたき出して、そのリズムに乗っかるようにタップの方が、カチャカチャ、カチャカチャ! とタップするの。どう?

それか、交互にステップを踏むなら、曲そのものを編集してタップの曲と、アイリッシュの曲とをつなぎ合わせて、それぞれの得意なステップが生かせるようにして、交互に踊ってしまうと言うのも考えられるね。

とにかくタップダンスとアイリッシュ・ダンスのセッションと言う興味深く、非常に拡張するような可能性を秘めているステージであるから、出来る事なら一回きりで終わらせずに、掘り下げて行くときっとすごいパフォーマンスになる事は間違いない。

ダンスのストーリーパートも、中々面白いテーマであり、渡辺理緒さんもきらら☆さんも、踊りでストーリーを表現・演技するチカラがすごく優れているので、ちゃんとした持ち時間が取れて、チームショーとして上演できたら、さらにすごいものが出来上がると思うし、非常に楽しみなお二方のセッションだったと思った。

道後遠征日記つづく・・・


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