もずのわくわく劇場日記 No.165-2


2007年 7月 13日(金) 新宿ニューアート

若林美保「踊り子やってます」
浴衣イメージストーリー2



「おい、どうしたんだ? 元気ねぇじゃん。」
「う、うん。そっかな・・・ 元気・・・あるよ・・・」
「夏風邪でも引いたのか? 調子が悪いなら無理しなくていいよ? 帰る?」
「そ、そじゃないけどさ・・・」
「そう、ならいいけど。でもあれだね、その浴衣・・・」

いきなり浴衣の話題に話を振って来たその言葉に、美保はぎくりっ! として肩をすぼめた。
「ゆ、浴衣? じ、地味だよね。わかってるんだ、でもこれしかなかったの、ごめん。」
「はぁ? 大人っぽくっていい感じだよね。なんかさ年上の人と付き合ってるみたいで、ちょいやばっ! って感じだね。ドキドキしちゃうよ。あはははっ♪」

「そ、そっかな? こんな地味な浴衣着てる女なんて、一緒に歩くの嫌だよね・・・」
「どうしてさ? 」
「だって・・・ この浴衣、私のおばあちゃんが着ていたものなの。それを母が仕立て直して
 自分が着てたんだけど、あたしが持っていた自分の浴衣は、背が伸びて着られなくなっちゃ
 って、今日着て行くのがないって母に言ったら、これを着て行きなさいって・・・ 地味な
 上に古着よぉ? 最低ね・・・」

美保はうなだれて言った。

「へぇ〜、おばぁちゃんの・・・ 女三代・・・かぁ。」
「あのね、自分が持っていたのがまだ着られると思ってたんだよ? だから新しいの買おうと
 思ったんだけど、すぐには間に合わなくて・・・」

ドーン! 腹に響く打ち上げ花火の音がした。

「花火始まったみたいだね♪ 」
「うん、綺麗だね。」
「でも美保の方が少し綺麗かもよ?」
「私は花火みたいに華やかじゃない。」
「たしかに? 浴衣は地味かもしれないけど、女三代受け継いで袖を通している浴衣だなんて、
 素敵な話じゃないか。そんな浴衣、どこの店に行っても売ってない貴重なものでしょ? 胸を
 張って堂々としなよ。自慢したっていい。違う?」
「そっかなぁ・・・」
「そうだよ。花火のような華やかさは無くても、美保がそれを着る事で歴史が生まれるわけさ。
 それに、美保だってその浴衣が地味でなくなる時が、いずれ来るんだしさ。」
「えっ? それってあたしが、おばあちゃんになるって事?」
「だろ?」
「いや! そんなの。あたしはずっと美少女よ?」
「ずっと? 」
「そう、ずっとよ。」
「人間さぁ、歳相応ってのがある。60歳の美少女・・・それって、キモイよ?」
「だったらあなただって、おじいちゃんになるのよ?」
「あはは、おじいちゃんか。もしそうなっても今日みたいに美保と一緒に花火みたいよな。」

美保は思わず顔を赤らめた。

「そうなったら・・・ いいな♪」
「なるんじゃない?」
「なるかな?」
「なるだろ?」
「なる?」
「なろう。」

恋人達の会話に無駄なものは、何もない。


若林美保は濡れた牡丹柄の浴衣をカミテ寄りで、ハラリ! と肩からすべらせ、床に落とした。すると一瞬で百年、目に焼きつくような裸身が露出される。やけにまぶしい、ふくよかなおしりが素敵である。

そして背中を向けたまましゃがみ込むと、先ほど床の上に用意していた別の浴衣を広げ、肩から羽織り、身にまとう。曲が変わる・・・

ヒノキの桶と手ぬぐいを持ってシモテ方向へ、静々としなを作って歩いて行く。その姿の日本的な美しさはまさに日本画の世界である。GET ALONE TOGETHER・・・私のピアノの練習曲だったが結局、弾けるようにならないままだ。(笑)

風呂の中でコン、コンと桶の当たる音がする中で、背中をこちらに向けながらしゃがみつつ、着ている浴衣のフトコロをゆるめ、両肩を出し、すっかりしゃがみきってから、左脇に置いた手桶に手ぬぐいを浸し、体を少し傾け、手ぬぐいをじわぁ〜っとしぼるのだが、この時、しぼった手ぬぐいを、シャッ、シャッ! と軽く上下させて湯を切るのである。

若林美保の芸の細やかな演出である。
浴衣をはだけさせて肩を出し、そっとしぼった手ぬぐいで首、肩、胸元をトントンと押さえるように体を拭くと言う一連の所作の中に、若林美保は日本女性の動きの「美の世界」を再現させるのである。これは実に圧巻と言わざるおえまい!

日本画の淡い絵の具で表現される独特な美術、芸術の世界である。

このシーンは機会があったら絶対に見て欲しい! 私はこんなにゆったりとした淡い美しいシーンはこれまでに見たことが無い! 絶品なのだ。手ぬぐいをしぼって、シャッ! シャッ! なんて湯を切るシーン、なぜこんな所を細やかに表現するのか、それはこのさりげない一つの動作で、どれくらい力を入れて手ぬぐいをしぼっているのかと言う、そんな力加減が見事に伝わって来るからだ。

これを「芸」と呼ばずに何と言うのか。
やはり日本人の持つ美しさとは一体何かと考えると、所作、身のこなしの美しさではないだろうか。若林美保のステージを見ていてそんな事ばっかし考えていた。いやぁ〜! ホント、絶品ですって、マジで!

続く・・・!


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